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□ 涼宮ハルヒの憂鬱VSドクター・フー □

コショウ瓶とペンライト

第1章「ドクター登場(What's Your Name, Doctor?)」




 学校のパソコン室。
 俺はまさしく絶体絶命のピンチに陥っていた。
 目の前には極悪エイリアン。
 見た目も凶悪だ。
 金属で出来た袴の上に、これまた金属のボウルが逆さまにくっついており、ランプ二つとよく動くカメラがそこから生えている。袴とボウルの間の胴体部分からは恐ろしい殺人光線を放つ金属管と、そして用途不明のラバーカップが飛び出ている始末。そう、トイレがつまったときに使うアレだ。
「抹殺セヨ! 抹殺セヨ!」
 ランプを光らせ、奴が叫ぶ。なんという禍々しい声なんだ。セリフもオリジナリティにあふれてるだろう? たぶんこれまで生きてきた中で、たった百万回くらいしか聞いたことが無いに違いない。
 
 ああ待った閉じないでくれ。
 
 確かにこいつの見た目がバカバカしいのは認めよう、あとこの状況も。
 なにしろ殺人エイリアンを目の前にして、俺の持ってる武器はペンライト一つ。
 しかも白衣を着てお医者さんゴッコ中とくればな。
 でも、それにはちゃんとした理由がある。
 横で床に倒れている長門をちらっと見やる。ぴくりとも動かない。
 長門はこのエイリアンと闘い、そして敗れた。
 俺もまな板の上のコイみたいに、これからこいつに料理される運命だ。
 ああくそっ。
 ハルヒがレンタルビデオ屋で、ヘンテコな海外ドラマを見つけたりしなければ。
 
 
「ちょっとキョン!」
「へいへいなんでございましょう団長どの?」
 ひとときはオハイオ州の冬だった……とか詩的な始め方を一度はしてみたいもんだが、あいにくと季節は夏で、しかも日本の夏ってのはジメジメと不快で、その上この近所でロケットの打ち上げなんてやろうもんなら普段和をもって尊しとなす民衆がここぞとばかり怒り狂って野獣の本性をむき出しにするに違いないってくらい暑かった。
「ビデオ借りに行きましょう! ビーデーオ!」
 ヒマワリみたいな笑顔で、後ろの席から俺をどやしつけるハルヒ。
 あのな、今英語の授業中なの。わかる? Are you OK?
「それじゃ『あなた大丈夫?』って心配してる感じじゃない。単に『OK?』とか『Get it?』とかにしたほうがいいと思うわ」
 いや、多少はお前の言った意味も含ませてあるんだがな。
「とにかく、今日の活動はビデオ屋探索! 決まりね!」
 言うなり、満足げに後ろの席でふんぞり返る。
 俺たちをじーっと見ていた奴らも、また自分の作業に戻った。
「No way...」
 俺は小声でかぶりを振りながら言った。
 やれやれ、で合ってるよな?
 
 
「なるほど、面白そうですね」
「ビデオ借りてみたいですー」
 部室のドアを開くなり、高らかにハルヒが今日の活動内容を宣言すると、古泉と朝比奈さんはいつも通り柔軟に従った。
 団長の絶対王政が布かれているのもそうだが、まあ最近活動内容に何度目かわからないマンネリ感を覚えていたことも事実だ。ちょうどいい気分転換だな。
 と、我が団長様が部室の隅で座ったまんまの長門に気づいた。
「有希は行かないの?」
「いい」
「どうしたんだ長門?」
「カードを持っていない」
 俺とハルヒは一瞬顔を見合わせたが、どうやらビデオ屋の貸し出しカードのことを言っているらしい。
「大丈夫だ、長門。行けばすぐ作れる」
 だが、長門は動こうとしない。
 ああ、そうか。カード作ってもこれから借りないだろうしな。
「それに、いざとなれば俺のカードで借りればいい」
 さりげなく付け足すと、表情にミクロン単位の動きが見られた。いや見えた気がした。もう一押し。
「SFもあるし」
「行く」
 俺が言い終わるよりも早く、正確そのものの動作で本を畳み、バッグを持ってドアに近づいてきた。
 決断が早いな、長門。
 
 
 てくてく歩くこと十数分、学校から一番近いレンタルビデオ屋に一行は到着した。
 ちなみに、俺のいきつけの店でもある。いやまあ、色々借りるんだ男子高校生は。
「もー! 無いじゃない新しいやつ! 気が利かない店ね!」
 大声でわめき散らす団長。おい、到着から十五秒しか経ってないぞ。お前は俺とこの店の関係を未来永劫絶ちたいのか。
「しかたありませんね。公開が終わったばかりの映画ですし、まだ店頭に並んでいないのでしょう」
 にこやかに団長を諭す古泉。どうでもいいが、店員の視線がチクチク痛い。
「ああもう、しかたないわね! 知ってる映画を探すわ! 行くわよみくるちゃん!」
「ふえ? あっ、はい」
 どすどすと足音を立ててハルヒは旧作コーナーに消えていった。朝比奈さんも物珍しげにきょろきょろしながらついていく。やれやれ。
 にしても、ハルヒと朝比奈さんの映画の趣味って、合うのか?
「よかったですね」
「うお!? って近い!」
 物思いにふけっている隙を突いて、古泉が隣に立っていた。
「涼宮さんに、安全な娯楽を提供できそうです」
 それはあれか、こうやって一軒一軒、俺の行けるビデオ屋をつぶしていく遊びか。
「いえ、もちろん違います。文句は言っていますが、彼女なりに映画選びを楽しんでいるのでしょう」
 古泉に誘導されて棚の陰から向こう側を覗くと、ホラー映画のコーナーで座り込みおびえている朝比奈さんと、彼女にあの手この手で映画を薦めまくるハルヒの姿があった。
「ほらー、『死霊の盆踊り』ですって! あと『アタック・オブ・ザ・キラートマト』!」
「ひぃぃぃ」
 ハルヒ、言っとくがそれはホラーじゃないぞ。まあ違うスリルはあると思うがな。
「ここは映画の種類も豊富ですし、まあしばらくは飽きないでしょう」
 そうだな、とつぶやいて俺は気づいた。まさか、レンタル代全部俺持ちってことは無いよな?
「では、僕も失礼して、観たかった映画があるかどうか探してきます」
 言うなり、古泉も消えた。あいつもたぶん、カードなんか持ってないだろう。どうやら予感は当たりそうだ。
 ため息ひとつ、俺も旧作のアクション映画を探そうと歩き始めた。
 移動中、熱心に二つのDVDパッケージを見比べる長門の後ろ姿が目に入る。
 そんなに穴が開くほど見つめたところで、誰かの挑戦状みたく新たな情報が浮かび上がるとは思えないんだが。
「なに悩んでるんだ?」
 声をかけると、ややあって反応があった。
「これ」
 二つのパッケージを俺に見せてくる。「惑星ソラリス」と「ソラリス」。
「この二つの違いを説明してほしい」
 て言われても、俺もそっちはさっぱりだ。
「たぶん、リメイクだろ。こっちをリメイクしたのがこっち」
「リメイク?」
「作り直すことだ。同じ筋で」
「そう」
 わかったのかわかってないのか、長門はまた思案しはじめた。
 まあ、好きに悩んでくれ。どうせどっちを借りても同じ代金だしな。
 しばらくアクションコーナーやらヒューマンドラマコーナーをうろうろするも、どうもピンとくる作品が見つからなかった。どうしてこう、借りようと思ったやつに限って貸し出されてるんだろうね。
 SFコーナーに戻ってみると、長門はまだ悩んでいた。
 やがて、うん、とうなづく。
 そして静かな決意を秘めた顔で、両方のパッケージを持ってレジに向かっていった。
 ちょ、ちょっと待て、長門。どっちか一つにしてくれ。あと、パッケージからDVDを抜いて持っていくんだ。わかった?
「内容を見ない限り、どちらが良いか決めるのは非常に困難」
 確かに、気持ちはわからないでもない。まあ人それぞれだ。
「これ! これ借りましょうみくるちゃん!」
 ああやってすぐ決められるヤツも居るしな。
 
 
 しくじった。
 俺たちはなんとその日の夜、全員で長門の部屋に上がりこみ、借りたビデオの鑑賞会としゃれこむことになってしまったのだ。
 しかも、明日が祝日だということをすっかり失念していた俺は、下校後即着替え持参のお泊り会突入というサプライズに見舞われることとあいなった。
 マジで面倒くさい。
 テレビの前でがっくり肩を落とす俺とは対照的に、ハルヒの奴は喜色満面、バッグからDVDをぽんぽん取り出し始めている。
 そう、ハルヒの借りた作品は一本では無かった。
 それどころかこいつは、目をつけた海外ドラマシリーズのシーズンⅠ全部、DVD十二枚を全部両腕に抱えてレジに向かうという暴挙に出ようとしていたのだ。
 ただちに呼び止め、叱りつけ、なだめた。
 勘弁してくれ、この歳で自己破産申告なんてさせないでくれという俺の懇願が効いたか、しまいにはあたしも鬼ではない、別のドラマにしましょう、と譲歩していただいた。
 それでも四話入りDVD四枚分である。
 値段のことはさておいても、とても一夜で見れる量とは思えない。
 どう頑張っても半日かかる計算だ。しかもその間一切休憩も入れず、ましてや寝ることなど許されない過酷な条件下で、だ。
 しばらく飲み食いし、やむを得ない睡魔による脱落に備え、総員パジャマを着用する。
 いよいよ鑑賞開始。
 地獄のパジャマパーティーの始まりだぜ。
 
 
 テレビ画面に日本放送協会、そして製作元である英国放送協会のロゴが踊る。
 結局目当ての作品を借りられなかった朝比奈さん、長門、古泉もそれを一緒になって眺めている。
 内容は、要するに「ドクター」というヘンテコな名前で呼ばれる宇宙人が、地球人の女の子と一緒になって色んな時代と場所で冒険を繰り広げる、というものだ。
 ていうか、ハルヒもよくこんなマイナー作品を選んだもんだな。映画でもないし、それこそ冒険じゃないか?
「テレビで一話だけ観てたのよ」
 そうか。
 第一話でマネキンが人間に反乱を起こし、第二話で地球が滅亡し、第三話で死体がよみがえり、第四話でUFOがロンドンに墜落し……。
 そこで、俺の意識は途絶えた。
 丸三時間耐えた自分を褒めてやりたい気分だ。
 気がついた時には、もう朝日が昇っていた。
 室内が柔らかな朝焼けに照らされる中、俺は見た。
 朝比奈さんが無防備な姿勢で転がり、古泉が行儀よく布団にくるまり、ハルヒさえもが脱落しているなか。
 一心不乱に画面を見つめる長門の姿が、そこにはあった。
「いま、何話目だ?」
「八話目」
「眠くないか?」
「次を見たら寝る。栄誉ある章を獲得している」
 頑張ってください。
 俺はまたすとんと心地よい眠りに落ち、普段より若干遅めの時間に起床した。
 他の団員達はまだ眠りの中。長門も寝ていたので、少し安心する。
 宇宙人だからといって身体を壊さないわけじゃないだろうからな。
 ただ、DVDが四枚目に到達していたのが気になった。てことは全部観たのか?
 計算してみると、実に十時間半、長門はDVDを鑑賞し続けたことになる。
 そこまで面白かったのか、それとも好奇心か。
 なんにせよ、長門、お前がチャンピオンだ。
 なにに優勝したのかは知らんが。
 というわけでまとめてみると、DVD鑑賞会は史上空前のグダグダ具合で幕を閉じたのであった。
 
 
 長門には及ばなかったが団長様もかなり頑張っていたらしく、起きだしたころにはもう午前もかなり回っていた。
 そのままあまり回らない口で団員全員に訓辞を垂れたあと、各自帰宅した後自主探索と言い残し、早々に帰っていった。
 もちろんDVDは持って行ったが、ちゃんと期限までに全部観るんだろうな?
 寝ている長門にメモを残し、残りの俺達もまとめて長門家を後にして、適当なところで解散した。
 実は早めに脱落したおかげで、俺はそこまで眠くない。
 おかげで、今日はゆっくりと家でゴロゴロできそうだ。
 うきうきと歩く帰り道、俺はふとこんなことを思っていた。
 寝ちまって観てない分にはどんな怪物が出てきていたんだろう、と。
 そのときはふっと頭をかすめただけだったが、後に俺は激しく後悔することになる。
 怪物を知っていれば、長門を救えたかもしれないからだ。
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Date:2014/05/14
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