明日から書く。

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□ 図書館グーゴルプレックス □

というお話

 そこまで読んで、少年は本から顔を上げた。
 ここは少年の自室。少年はベッドに両肘をついた姿勢。
 そして時計を見れば、時刻は午前一時四十六分。
 土日をはさんで週明けに期末テストだから、今日は勉強せにゃならんかったのになあ、と少年はため息をつく。
 学校からの帰り道でヘンテコな本を買ってしまったばかりに、この体たらくだ。
「なんつー投げやりなラストだ……ふざけたタイトルだとは思ってたけど」
 少年の持つ本には、「図書館グーゴルプレックス」とタイトルが書いてある。
 嗚呼、なんて本をつかまされてしまったのだ。ため息をひとつ。
 だがその素振りとは裏腹に、少年の胸は高鳴っていた。
 その理由は、本の内容に覚えがあるからだ。特に、第一章の内容に。
 自分が一年前に見た夢と内容が酷似している……というか、全く同じなのだ。
 こんな偶然があり得るだろうか?
 かちゃり。
 そのとき突然、部屋のドアノブに手をかけられた音がした。
 なんだなんだ、親か? 早く寝ろって注意されちゃうかな。
 だが、ドアが開いた瞬間。
「じゃあ、行ってきます!」
 なぜか女の子の声がした。
「おう、頑張ってこい!」
「無理はしないでね!」
 それに、おっさんとおばさんの声。
「いっちょ、かましたれい!」
「気張るにゃ! 気合いにゃ!」
 おじいさんと……なんだこの声?
 そして、声の主が部屋に入ってきた。
 少年には、その姿に心当たりがあった。
 まさか、まさか。
 心当たりはあるけど、あれは夢だぞ?
 声の主の少女が部屋に入ってドアを閉めるなり、
「あっ!?」
 少年に気づき、絶句した。
 そのまま、しばらく無言の時が過ぎる。
 少女が先に口を開いた。
「お、おひさしぶりです!」
 その心から嬉しそうな笑顔に、少年の疑問は氷解した。
 ああ、夢じゃなかったんだ。
 
 
 とりあえずそーっと台所に忍び込んでポットを奪取、部屋に引き返してお茶を入れる。
 丸テーブルを出してきて、向かい合って座る。
 ずずー、とお茶をすする音だけが響く。お互いシャイなのである。
「えーと」
 少年がぎこちない調子で口火を切る。
「びっくりしましたよ。これの第一章読んだら、僕の経験したことそのままで」
 少女に本を開いて見せる。
「ああ! あはは、これはですね、実は日記を読んでたんですよ」
「でも、なんでフェスエさんの日記が僕の……えー」
 えーと、この場合は何と言うべきなのだろう。本屋? 町? 惑星? 銀河? いや、もっと大きなスケールの話だ。
「……宇宙に?」
 少女が微笑んで答える。
「検索条件に入れたからです。『フィクションとして、わたしの日記がある宇宙』と」
「なんでまた?」
 少年の疑問を聞いて、少女は少しうつむき加減になった。
 おや、何か後ろめたいことでも?
 だが少女の口から聞こえてきたのは、思いがけない理由だった。
「その、知っておいて欲しくて。わたしの居た場所のこととか、家族のことを。お客さんのことは、あの時たくさん教えて頂きましたから」
 そのもじもじとした様子に、少年は思わず自分の顔を手で押さえた。
 うわ、なんだろう、顔が熱い。フェスエさんは顔が赤いし、たぶん自分もそうだ。
 なんだか恥ずかしいので、別の質問に移ることにする。
「でも、これと違いますね。この第一章の日記と。こうして、また会えましたから」
 また本を指差して見せる。
 ちょっと心を落ち着けてから、少女が質問に答えた。
「ええ。その日記は古いバージョンなんです」
 なんだって? 少年が眉をひそめる。
「バージョン違いがあるんですか? 日記に?」
「ええ、日記とはいえ予言的な内容を含んでますので、より正確な情報を元に検索すれば、より正確に未来を予知した日記が出てきます」
 それ日記か? と思ったが、少年は口には出さなかった。
「今お客さんが読んでらっしゃったのが、図書館を救った日記よりも新しいバージョンの日記です。もっと先まで書いてあります……色々と省かれちゃってる箇所もありますけど」
「なーるほど。じゃあ」
 少年は腕を横に広げ、部屋全体、いや世界全体を指し示した。
「今の、このやり取りが書かれたバージョンの日記もあるわけですね」
「あると思います。というか、図書館には必ずありますよ」
 その日記を今、誰かが読んでいたりするのだろうか? なんだか自分達が本の中に居て誰かに見つめられているような、不思議な気分だ。
「ってことは、これから何をやっても、それを予知した本が既にあるってことですよね?」
 少年が肩をすくめて見せると、その大げさな身振りに少女がくすりと笑う。
「物語は自分で創っていくものですよ、お客さん。これからどういう風に生きたとしても、それはお客さんのオリジナルです。他の誰の作品でも無いんですよ」
 うーん、と腕組みして考えてみて、少年は答える。
「わかったような、わからんような。フェスエさんの話はいつもそうだ」
「そうですか?」
「ええ」
 少年は微笑んだ。少女も微笑んだ。
 この時間がずーっと続けばいいなあ、と少年は思った。
 だが突然、少女が何かに気づき、すっとんきょうな声を上げる。
「あの! 今日泊めてもらえませんか?」
「ああ、それぐらいなら……」
 と少年が答え終わるより先に、またもうつむいて付け加える。
「……というか、無期限に」
「ええー!?」
 さすがに少年もちょっと引いた。時間が続くのはいいけど、それ居候じゃないですか。
 どうしようかなあ、と考えてみる。親が認めてくれるのか? 異世界からの客を?
 こつこつ。こつこつ。
 部屋のドアがノックされた。
 げ、今度こそ親だ! 部屋がうるさいから注意しに来たに違いない!
 少女の顔を見る。何もわかっていない、純真無垢な表情。
 誰かに「この少女と今後も一緒に居たいか」と聞かれれば、と少年は考えた。
 もちろんイエス、それも最大限のイエスですとも。
 ため息をひとつ、自分に気合いを入れる。
「わかりました。ダメ元で聞いてみますよ」
「あ、ありがとうございます!」
 急いで頭を下げる少女に、もうひとつだけ。
「明日って、お忙しいですか?」
 少女は顔を上げ、ちょっと考えてから答えた。
「特に、急いでやる仕事はありませんけど……?」
 良かった、それなら好都合だ。
「じゃあ、明日『高校』を案内しますよ。それから『げえせん』で遊びましょう。ね?」
 少女は一瞬だけぽかーんとしていたが、すぐに一年前の会話を思い出し、
「はいっ!」
 と元気よく答えた。
 ああ、やっぱりヒマワリみたいな笑顔だ、と少年も微笑んだ。


 こうして、少年と少女は同居を始めることになる。
 そして当然のごとく、その生活は平穏とはかけ離れたものになってしまうのだが、ここでその全てをお話することは出来ない。
 可能であれば、また別の機会に。
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Date:2014/05/05
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Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

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