明日から書く。

□ 図書館グーゴルプレックス □

タイムキーパー並びにミシェル嬢、退場

 翌朝。
 すっかり身支度を調えた紳士と少女は、グーゴルプレックス図書館四十二番カウンターの前に立っていた。二人の後ろには、雪崩を起こしてしまった本の山が二つ。
「それでは、どうもお世話になりました」
 紳士がリテミスに歩みより、手を差し出す。
 リテミスはそれをしっかり握った。
「どういたしまして。また機会があったら飲もうぜ」
「ええ、ぜひとも」
 紳士はうなずいたが、横で少女が腰に手を当てているのに気づいた。
「タイムキーパー、わたしを待たせすぎだわ! 反省しなさい!」
「はい、申し訳ありませんでした。以後気をつけます」
「よろしい!」
 少女は言いたいことを言い終えたので、フェスエに向き直った。
「ありがとう、とても楽しかったわ。お仕事、頑張ってね」
 二人で手を握り合う。
「はい、ありがとうございます」
「それと、一級司書になれるよう、応援してるわ。ふるさとを探」
「おっと! お嬢さま、そろそろお時間でございます。おいとましなければ」
 なぜか急にタイムキーパーが大声を出して、会話をさえぎった。
「……ちょっと、まだ話しているところだわ?」
「時は金なりと申します、お嬢さま。またこのタイミングを逃した場合、時空渦(タイム・ヴォーテックス)の関係上、お屋敷に一生帰れなくなる危険もございます」
 さらっと告げられた恐ろしい事実に、少女の顔が青くなる。
「わ、わかったわ。すぐに帰るわよ、すぐに」
「承知いたしました」
 紳士が微笑みながら、丁寧に会釈する。
「あ、そうだわ」
 少女がふいをついて、紳士の手をきゅっと握った。
 怪訝な顔になる紳士。
「いかがなさいましたか?」
「別に深い意味はないわ」
「左様ですか」
 紳士は微笑み、優しく手を握り返す。
「それでは、リテミスさま、フェスエさま。我々はおいとまいたします。ご機嫌よう!」
 紳士と少女が手をつないだまま、優雅にお辞儀をした。
 その瞬間、二人の身体が電撃に打たれたように光り輝く。
 連続した稲妻が走る中、身体が粉状になって崩れ、その形状を変えていく。
 粉の山は、やがて本が積み上がった形にまとまった。
 最後の仕上げにとびきりの雷光がひらめくと、そこには本の山があった。
 客人は帰ったのである。
 
 
「さあーて、と」
 リテミスは伸びをしながら言った。
「校正やらないとな!」
 フェスエはガックリと肩を落としながら、答える。
「そうですね、やらないといけないですね」
 カウンターの前に積まれた二つの本の山。これを全てスキャンしない限り、校正は終わらないのだ。一度中断されたものだから、余計に面倒くさい。
 フェスエの丸まった背中を、リテミスがバシッ! と叩いた。
「いった! なんですかリテミスさん!」
「しっかりしろよ、若いの! そんなんじゃ一級司書になれねえぞ!」
「ええ!?」
 なんだこのやる気に満ちた上司は、とフェスエは思った。いつもは自分以上に面倒そうな態度で仕事してるクセに。
「ど、どうしたんですか、リテミスさん。マムシか何か食べました?」
「食べてねーよ。せめてドリンクにしてくれ。ほら、ちゃっちゃとやるぞ」
 まあ面倒そうにやってもやる気十分にやっても、仕事は仕事だ。
 フェスエも気持ちを入れ替えて、仕事に打ち込むことに決める。
「よし! やりましょう!」
 まず手始めに、雪崩を起こした本の山を元通りに積み上げる。
 そこで、はて、と気づいた。
「リテミスさん、どれが校正終わった山か、覚えてます……?」
 フェスエの言葉を聞いた瞬間、リテミスは口をあんぐりと開けた。
 そして二人とも、今度こそ心の底からガックリと肩を落とした。
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Date:2014/05/04
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Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

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