明日から書く。

□ 図書館グーゴルプレックス □

閲覧室へようこそ

 二人がカウンターに戻ると、少女はすでに質問シートに記入を終えていた。
「お預かりいたします」
 ホーラが少女からシートを受け取り、内容にざっと目を走らせた。
「はい、大丈夫です。それでは閲覧室の準備をして参りますので、こちらでもうしばらくお待ちください」
 事務室に行くため、カウンターから立ち上がる。
「はいっ」
 少女がしゃちほこばって答えると、リテミスが何かに気づいた。
「そうだ、ホーラ。このお客さんに本を並べるところ、見せてあげたらどうだ」
「ええー?」
 客の前だというのに、露骨に嫌な顔をしてしまうホーラ。
「だってさ、せっかくの機会だから。一期一会だから」
「それはお客さま全員がそうよ」
「ねー、見たいですよねお客さん。ねー」
「う、うん」
「ええ、見たいですね」
 あっという間に二人の客を取り込むリテミス。
「くっ……」
 これは面倒なことになった、とホーラは唇を噛んだ。
 カウンターに座り直し、引き出しから青いシートを取り出す。
 表面に指を走らせ、事務室に部外者同伴許可の問い合わせをかける。どうにか、室長がこちらの意図を汲んでくれるといいのだが。
 うつむいたまま過ぎる数秒の間のあと、ホーラは憂鬱そうにつぶやいた。
「大丈夫だそうです」
「おお、やったぜ! 良かったですねお客さん!」
「ええ!」
「興味深いですね」
「やりましたね!」
 ハイタッチで大喜びの四人。
 ホーラはその様子を眺めながら、気づかれないようにため息をついた。
 
 
 四人は壁沿いのドアを抜けて、またとんでもなく大きな部屋に居た。
 円形の床、その回りをぐるりと取り囲む壁。
 まるで巨大なパイプの中に立っているようだ。
 はるか高いところにある天井から、上品な光が降り注ぐ。
「何もないわね?」
 少女がいぶかしげにつぶやく。
「すぐに到着しますよ。おっと」
 リテミスが懐中時計を覗きこみ、床を眺め回し始めた。
「お客さん、そこ危ないですよ。どいたほうがいい」
 少女も眺め回してみた。別段おかしなところはない。
「なぜなの?」
「いいからどいてください」
 少女のほほがぷくっとふくらむ。紳士が助け船を出した。
「リテミスさま、お嬢さまは理由がわからない限り、ご命令には従われません」
 めんどくせえ、とため息をつきながら、リテミスは言った。
「そこの床はですね、もうすぐ……」
「きゃっ!?」
 リテミスが言い終わる前に、少女が軽く飛び上がっていた。
 どこから来たのか、少女の横に小人が立っていたのである。
 少女の肩までの身長にもかかわらず、いっちょまえに司書の制服を身につけ、さらには白いあごひげまで蓄えている。
「む? ここで何をしとるんじゃ、お嬢さん?」
 先に質問されてしまった。
「あの、本を並べるところを見せてくれるって、司書の方におっしゃられたので」
 おそらく(相対的には)年長者だろうと思ったので、少女は礼儀正しく敬語で答える。
「なぬ? そんなこと一体誰が……ああ」
 ひとりで何かを納得し、渋い顔になった。
「リテミース! こっちへ来い! 駆け足じゃ!」
 大声で怒鳴り、リテミスを呼ぶ。
 げっマズい奴に見つかった、という表情でリテミスが飛んでくる。
「あれ、今日ってジタンファ爺さんの担当だったんスか?」
「一人病欠が出たんじゃ、そんなことはいい! こんな小さい子を連れてきて、何を考えとるんじゃお前は! いっぺん脳みそ煮こんだほうがいいんじゃないのか、ええ!?」
 全身で怒鳴り散らすジタンファ。小さいながらに迫力満点である。
「だ、だって、この子……お客さんが見たいって」
「言い訳はいいわ! 危ないじゃろうが! すぐに帰れ!」
 え、危ないの? と顔を見合わせる紳士と少女。
 フェスエがジタンファに近づき、話しかける。
「あの、ジタンファさん」
「なんじゃ、いま忙し……ああ、フェスエちゃんか! ここで何をしとるんだね?」
 突然声のトーンが急激に上がり、さらに顔が別人のように優しくなった。
 あまりの変容ぶりに目を見張る紳士と少女。
「リテミスさんのお手伝いです」
「そうかそうか! もうそんなことが出来るようになったのか、えらいのう!」
 フェスエがジタンファの近くにかがみ込むと、ジタンファがその頭をなでる。
「もう、大分前からやってますよう。えへへ」
 フェスエは口では文句をいいつつ、まんざらでもなさそうな笑顔である。
 はっ、とジタンファが我に返った。こんなことをしている場合ではない。
「とにかくじゃな、ここは危ないから……」
「きゃあああ!」
 言ったそばから、少女が巨大なドラゴンのかぎ爪に捕まって、空を飛んでいた。
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Date:2014/05/04
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Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

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