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帝国との別れ、ハートとの再会、そして地上への帰還

 チャルグウィッ大学理工学部航空空洞工学科所属基地回収用艦隊旗艦「ユグドラシルが燃える夜」は、黒い太陽から約五百キロメートルの距離を持って、空間に停泊していた。
 その巨大な船体には常に小型艇が出入りし、「黒い太陽」の基地を解体した材料が運び込まれ続けている。
 帝国の崩壊に伴って、痕跡すら残さずに基地を消滅させるためである。
 後から「黒い太陽」にやってきた本たちが、物騒なオーバーテクノロジーを手にしたりしないための処置だ。
 出入りする小型艇とは別に、その船体に寄り添うようにして、オタマジャクシのような形をした船が停まっていた。
 タマゴのような形の頭から支柱が伸びており、そこに三本の筒が平行に取り付けてある。
「操縦システムよーし、反発エンジンよーし、ワープエンジンよーし」
 タマゴのような形の頭の中で、フェスエは計器類を指差し確認していた。
「しかしまあ、よく再現できたもんだ。この内装」
 その横でリテミスがつぶやく。
「まったく乗ってきた船にそっくりだの、中は」
 冒険家も狭いコクピットのシート(本なので固い)をなでながら言う。
 そう、彼ら三人が空洞に飛び立つ際に使用した「空洞探査船」と、まったく同じ内装のコクピットになっているのだ。
「リテミスさん! 何度も言うように、外装も全部再現してますってば」
「わかってるわかってる、すごいすごい」
 聞き捨てならん、と腕を振り回すフェスエと、苦笑いでなだめるリテミス。
 実際、三人は空洞探査船と全く同じ、ピラミッド型の船に乗り込んでいた。
 フェスエが(爆発寸前の)切り離しを終えた空洞探査船の構造を完全に覚えていたので、それを元に再現されているのだ。
 ピラミッド型の船は、ワープ中の亜空間に耐えられるタマゴ型船殻に包まれて保護され、さらにその後ろには使い捨てワープエンジン・ユニットがくっついている。
「ワープを使いますから、旅は十秒弱で終わります」
「早いもんだのう。行きは二十日弱かかる予定だったのに」
 感慨深げに頭を振る冒険家。その横でリテミスは、次回書庫に来るときはたっぷり携帯食料を持ってくることにしよう、と思っていた。
「よっしゃ! 早く帰ろうぜ、腹が減ってしかたねえ」
「了解です!」
「なるはやで頼むぞい!」
 フェスエがコンソールを操作し、ワープエンジンに火を入れた。
 
 
 オタマジャクシ船が飛び立つその刹那、冒険家は後方モニターを見てみた。
「ユグドラシルが燃える夜」の外壁にびっしりととりついた、たくさんの(虫のような)自己増殖オートマトンが、もぞもぞと動いている。
 今は外壁をふさぐ作業をしているはずだが、それにしても動きが単調で、まるで揺れているような……。
 オートマトンの中でひときわ巨大なものの動きを見て、その揺れの意味がわかった。
 手というか、足を振っている。
 こちらに向けて、サヨナラをしているのだ。
 冒険家も後方モニターに手を振り返すと、その瞬間、船は亜空間に突入した。
 虹色のトンネルはすぐに過ぎ去り、船の周りは星空に戻る。
 フェスエがコンソールに手を伸ばし、(開かれた本に書かれた)ボタンを押した。
 コクピットに短く振動が走ると、タマゴ型船殻が細かく分解し、飛散した。
 同時に、むき出しになった空洞探査船の後ろにくっついたワープエンジン・ユニットも、ぼろぼろと崩れ去りながらどこかに飛んでいった。
 船殻やワープエンジンの名残である本の霧もすぐに晴れ、星空をバックに、ピラミッド型の空洞探査船だけが残る。
「さて、じゃあ帰ることを伝えないとな」
 リテミスが言うと、フェスエと冒険家は首をかしげた。
「ハートさんにだよ! ほら、打ち上げのときに話してたろ! 俺たちは突然行方不明になってるんだよ!」
 じっくりと時間をかけて、じわじわと二人の脳裏に思い出が蘇ってきた。
 フェスエの顔が青くなっている。
「そういえば最後の通信は『食料が保たなくて死にそうなんですが』っていうヤツでした、よね……」
 リテミスがオデコに手を当てる。
「そう。その直後に船が爆発、音信不通だもんな。死ぬほど心配してるだろうぜ」
 
 
『オー! オオー、ガーッド! 信じられナイ! 奇跡、これは奇跡デース! 神さま、ありがとう、ありがとう……おおいおいおい、おおいおい……』
「ああうん、そうですね、うん。よしよし」
 泣き崩れるハートを無線越しになだめるリテミス。
『ぐすっ、ふう。それにしても、船体の爆発を確認したはず、なのデスが……?』
 急に冷静な質問が来たので、切り替え早いなあ、とリテミスは苦笑した。
「さあ、見間違えでしょう。だって、僕たちはこうして生きてるわけですからね」
『見間違え』
 そう言ったきりハートが黙り込んでしまった。
 船の三人組はちょっと嫌な汗をかきながら、返答を待つ。
『まあ、そうデスね! それしかありまセン、見間違えじゃなかったら、爆発した船と同じ船を造って戻ってきてるってことになりマス! ハーッハッハ! あり得まセーン!』
 ははは、と三人組は乾いた笑いを漏らした。
『それにしても、偶然船体がちょうど反転して、偶然発射された[反発場]が[黒い太陽]に偶然当たってこっちに戻ってこれるなんて、とんでもなく低い確率デースね!』
「そうですね、偶然って重なるんですねえ。はは、は」
『おっと、話しすぎマーシタ。帰還するための指示を出そうと思いマス、と言っても単純な指示なのデスが』
「海に落ちればいいんですよね? なるべく発射台に近いところで」
「そう、その通りデース。拾いに行くので、遠すぎなければ問題ありまセン」
 そこで、冒険家が話をさえぎった。
「ちょ、ちょっと待った。どうやって海に落ちるんだね」
『記録機関にコースが覚え込ませてありマス。壊れていれば、目測で結構デース』
 冒険家がフェスエの方を見ると、両手で大きくバッテンを作っていた。
 つまり、記録機関の中身までは無理だったということだ。
「目測って、どうやって」
『目測とはつまり、目を良く開きマス、続いて船のモニターを見て大陸の形を見分けマス、最後にモニターの照準を海に合わせてスラスターを動かしマス。すると、船体の一部が吹っ飛ぶ反動で海の方へ向けて進めマス』
「いやだから、こう暗くては海もなにも……」
 そのとき、冒険家は船内に起こった変化に気づいた。
 明るくなってきている。まるで日差しが差し込んで来ているかのように。
 モニターが明るい青空を映していた。
 
 
『ちょうど日の出の時間デースね。あなた達はつくづく運がありマス!』
 少し前まで星空を映していたモニターがどれもこれも、青空を映すようになっていた。
 前方モニターは雲ひとつ無い、染みひとつ無い真っ青な空。
 後方モニターは輝く太陽と真っ青な空。
 冒険家は事態を飲み込むのに苦労していた。
 あっちもこっちも空ばかり、太陽の反対側にも空しかないのなら、一体自分たちはどこに向かって進めばいいのだろう?
『たぶん、大陸の形が見えると思いマス、どうデスか?』
「あー、ちょっと待ってください」
 リテミスがコンソールを少しいじった。
 ゴコン、と壁の向こうで音がして、船がゆっくりと回転し始めるのがわかる。
「ええ、見えてきました」
「わあー、綺麗です」
 前方モニターを食い入るように見つめる、リテミスとフェスエ。
 冒険家は目を見張った。
 モニターの端っこから、何か白色や灰色のモノが侵入し始めているのだ。
 白は雲だ。それはすぐにわかった。
 だが、灰色のモノは何だ? 空がカビているとでも?
『大陸の形が見分けられマスカ?』
「ええ、大丈夫です。着陸すべき湾も特定できましたよ」
「大陸じゃと!?」
 冒険家が思わず叫んでしまうと、コクピットは一瞬静かになった。
『な、何かトラブルですカ!?』
「い、いや、大丈夫です! ちょっと待っててください。……おい、フェスエ説明して」
「あ、はい!」
 リテミスがハートと込み入った打ち合わせを始めた。
 フェスエは冒険家をなるべく遠い所に引っ張っていく。
「あの灰色のモノは、この空洞の大陸です」
「た、大陸ってじゃあ、あの青いのは」
「海です、もちろん」
 冒険家は言葉を失った。
 この宇宙船は上下も左右も前後も、海に囲まれているのだ。
 海で出来たボールの内側に居るのだ。
「なんたることだ」
 思わずつぶやいていた。
 
 
 灰色の大陸の内のひとつを選び、発射台に一番近い湾に狙いを定め、船は降下していく。
 ガタガタと揺れる船内で、三人はシートに縛り付けられながら、じっと耐えていた。
 後方モニターに映る灰色の大陸はどんどん大きくなっていく。
 ときおり、ガタン、と一瞬シートに押しつけられる。
 パラシュートなどというものが無いので、細かい逆噴射で減速するしか無いのだ。
 逆噴射の間隔が、だんだん狭まってきた。
 ガタン、ガタン、ガタン、ガタ、ガタ、ガタ、ガタガタガタガタガタ。
 がくがくと揺れる船内。
 湾は大きくなり、細かいデコボコも見分けられるようになってきた。
 ガタガタガタガタガタ、ガガガガガガガガ。
「だいぶぶぶ、揺れるるるのおおおお」
 口を押さえる冒険家。
「我慢してててくださーいいい」
 同じく、口を押さえるリテミス。
「こここの揺れれれれ久しぶりでーすすす!」
 両手を挙げて歓声を上げるフェスエ。
 しばらく船は揺れ続けたが、幸いにして、二人が吐くことは無かった。
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Date:2014/05/04
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Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

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