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予想外の反撃

「いったい、何が起きてるんだ」
 爆散する戦艦のクローズアップを眺めながら、黒服の男は呆然とつぶやいた。
 ブリッジのモニターには、間髪入れずにまた三つの戦艦の爆沈する様子が映されている。
 さらに別の戦艦は爆発こそしていないものの、船体がビリビリと震えていた。
 何か大きなものが、とんでもない速度でぶつかったのだ。
 デスクを叩いていた一人が、大声で報告した。
「敵の攻撃です! 第一艦隊、第六戦隊が全艦轟沈、全滅しました! さらに数隻の艦に敵砲弾が着弾! 航行不能です!」
 艦長が自分の職務を思い出し、コンソールに指示を出す。
「非常事態だ! 総員、戦闘配置!」
 同時に、ブリッジの照明が赤色に切り替わり、艦内アナウンスが流れる。
『非常事態発生! 非常事態発生! 総員、戦闘配置につけ! 総員、戦闘配置につけ!』
 星空の一角に四角い窓が現れると、同じ方向を向いた三角マークの大群が表示される。
 艦隊の配置図だ。
 こうやって見ている間にも、一隻、また一隻と戦艦が沈んでいく。
 黒服の男は混乱していた。これは誰の仕業だというんだ? 反抗する者、その可能性のある者はことごとく追放し、処刑し、長い時間をかけて周到に準備してきたというのに。
 そもそも侵略艦隊以上の兵力を持つ反抗勢力など、この空洞には絶対に存在しない。
 しないはずだ。
 だが、現に我が艦隊は打ち破られようとしている。
「どこから攻撃されてるんだ!」
 気がつくと、黒服の男は艦長を怒鳴りつけていた。
「[黒い太陽]方向からの砲撃と考えられます! 本艦への攻撃と酷似しています!」
 そこで、黒服の男は司書たち三人組を見やった。
 全員、ニヤニヤと笑っている。
 こいつらだ。こいつらがやったのか! しかしどうやって?
「貴様ら、どうやって艦隊を攻撃しているんだ! 太陽に仲間が居るのか?」
 フェスエに近づいて問い詰めるも、ニヤニヤ笑いを止める気配はない。
「ええ、太陽でお友達をたくさんつくったんです」
 リテミスも合いの手を打った。
「そうそう、頼りになるお友達をな」
 冒険家もうれしそうにうなずく。
「ちょっと力加減がわかっとらんようだがの!」
 黒服の男は歯がみした。やられた、兵士を懐柔したのか!
 こいつらに時間をやったのが、そもそもの間違いだった。
 今度こそひと思いに〈フォース〉で殺してやろうと、再び手をかざそうとする。
 そのとき。
『駆逐艦[三分で話せるようになる英会話]より入電! み……』
 一瞬だけ、ブリッジが静かになった。
『み、味方艦から攻撃を受けています! その他にも、駆逐艦三隻、重巡一隻、軽巡五隻からも同様の報告が上がっています!』
「なんだと!?」
 黒服の男は手を下ろし、モニターを見やる。
 そこには、隣接する味方艦に向けて主砲をたたき込む戦艦の姿が複数、それもハッキリと映っていた。
 
 
 戦艦が突然反旗をひるがえし、自らの艦隊を崩壊させようとする……かつて、これほどの異常事態に帝国は見舞われたことが無かった。
 当然、ブリッジはパニックに見舞われる。
 攻撃された味方艦を撃ち返し、共倒れで轟沈した艦からの報告。
 突如制御を失った戦艦を放棄し、自沈させたという報告。
 その他無数の船との、通信が途絶したという報告。
 さらに以下のような報告が入ったことで、恐慌は最高潮に達した。
『重巡[週刊世界のコケ植物]から緊急通信が入っています!』
 モニターの一部が四角に切り取られ、ノイズに乱れた映像が映りだした。
 監視カメラの映像で、相手の船のブリッジを斜め上から見ているようだ。
 デスクは壊れ、壁は崩れ、モニターは映らず、もはや沈没寸前といった様子だ。
 兵士はほとんど居ない。居る者もみな、銃を構えており……ひどくおびえている。
『現在、敵勢力と交戦中! 艦の主導権は奪われた! 敵は未知の勢力で……わああ!』
 その瞬間、兵士の悲鳴と共に、画面に何かが出現した。
 兵士の二倍もの大きさがあると思われる、巨大な……虫のようなもの。
 それが群れをなして、ブリッジを蹂躙しはじめた。
 デスクを破壊し、床を食い破り、船そのものを食べようとしているように。
 兵士が銃器で応戦するも、まったくと言っていいほど効果は上がっていない。
 ときおり虫が邪魔そうに兵士をつかみ、遠くに放り投げると、兵士は静かになった。
 全ての兵士が沈黙すると、虫の群れはどこかに引き上げていった。
 映像は消えた。
 再び静かになったブリッジに、ある兵士の戸惑った声が響く。
『な、これは……!?』
「今度はなんだ!」
 艦長がたまらず叫んだ。
『さきほどの重巡[週刊世界のコケ植物]ですが……へ、変形しています』
「なに!?」
 いま叫んだのは黒服の男だ。
 モニターに、例の重巡を捉えた映像が映る。
 基本的に三角形をしているはずの船体が、ひどく歪んでいる。
 艦の最前部、三角形の頂点から船体に何本もの亀裂が入り、見ている間にもまるで開花でもするように、船体が別れて開いていく。
 そして、その花のような部分が何度も規則的に、ぶるっ、ぶるっ、と震えた。
『重巡[週刊世界のコケ植物]が何かを射出しました、秒速三十キロメートル、直径が十メートルの球形の砲弾のようです! ……あ、着弾しました! 軽巡[例解クリンゴン語辞典]、輸送艦[手作りの恋人]、駆逐艦[ナルコレプシー・ヒーロー]から被害報告!』
「おー、なかなか手際がいいな」
「えっへん!」
「変形までが大分早くなっとるのお」
 ブリッジの雰囲気に似つかわしくない呑気な会話に、黒服の男が我に返る。
「お前ら! 何をやったんだ!」
 声がヒステリックになるのにも構わず、三人に詰め寄る。
 フェスエが胸を張りながら、言った。
「言ったじゃないですか。造ったんですよ、お友達を」
 
 
「あれはですね、自己増殖オートマトンなんです! 砲弾にタマゴを詰め込んで発射して、戦艦の中で増えまくって無力化します。そして戦艦を大砲に改造して、またタマゴを別の戦艦に撃ち込む、の繰り返しです」
 心底うれしそうな顔で、恐ろしい事実を説明するフェスエ。
「ど、どうやって、そんな物を造ったんだ。我が帝国でも、そこまでの技術は」
 そこで、フェスエが制服の内ポケットから一冊の本を取り出した。
 黒服の男の目が大きく開かれる。
「〈全知の書〉か! お前はそれを読んだんだな?」
 フェスエがうなずく。と、また報告が入った。
『本艦に侵入者です! [週刊世界のコケ植物]に侵入したものと同じものと思われます、現在保安チームが応戦中!』
「隔壁を閉じろ! 廊下の隔壁を全部閉じるんだ、急げ!」
『ダメです、隔壁を……食い破っています! 保安チームと通信途絶!』
「どうやって侵入した!」
 黒服の男が叫ぶと、リテミスが肩をすくめて、答えた。
「おいおい、俺たちだけでこんな危ない場所に来るわけないだろ?」
 そうこうしているうちにも、ブリッジのモニターに映っている艦隊配置図がすさまじい速さで様変わりしていった。
 まだ生きていることを表す青の三角マークが加速度的に減少していき、代わりに爆沈、または沈黙したことを表す赤の三角マークに変わっていく。
 もはや、青の三角マークは艦隊の一割にも満たない。
 それに、あの恐ろしい虫がこの船にも……。
「あの虫どもを止めろ! 今すぐにだ!」
 黒服の男はフェスエに手をかざし、再び〈フォース〉の力を使った。
「あ、くっ……!」
 フェスエがのどを押さえ、苦しみだす。
「さあ、止めろ! 止めないと死ぬぞ!」
 だが、フェスエは黒服の男を見やり、口の形だけでこう言った。
「い、や、で、す」
 こいつ、と黒服の男は思った。死んでも止めないつもりか。
 突然、フェスエが解放された。
「かはっ! はあ、はあ」
「あがっ!? く、か」
 代わりに、リテミスが苦悶の表情を浮かべる。
「や、やめてください!」
 フェスエが叫ぶと、黒服の男は答えた。
「では、あの虫どもを止めるんだな。でないと、こいつが死ぬ」
 リテミスは窒息しそうになりながらも、ゆっくりと首を振った。
 そのままたっぷり数瞬の時が流れる。リテミスの顔から血が失われ、青くなっていく。
 フェスエは奥歯を噛みしめると、うつむきながら言った。
「……わかりました」
〈全知の書〉を自分の前にかざし、短い呪文を唱える。
「これで……止まったハズです」
「どうだ!」
 黒服の男が艦長に問いただす。
『本艦内敵勢力、沈黙を確認しました!』
 ブリッジのモニターに別の戦艦の様子が映し出される。
 変形しかけていた戦艦はその開花を止め、ブリッジを襲っていた虫たちは立ち止まり、そのまま動かなくなっていた。
『軽巡[例解クリンゴン語辞典]、輸送艦[手作りの恋人]、駆逐艦[ナルコレプシー・ヒーロー]、さらに六十五の艦から報告! 敵勢力は完全に沈黙しました!』
 ふう、と息を吐き、黒服の男がリテミスを解放する。
「がは! げほ、げほ、げほ」
「リテミスさん、大丈夫ですか!」
 フェスエがリテミスに駆け寄り、抱きつく。
「大丈夫かね!」
 冒険家も駆け寄った。
「だ、だいじょうぶ、だけどよ。とめちゃ、ダメだって言ったろ……」
 ガラガラ声で、優しくフェスエをたしなめる。
「だって、だって、心配で……」
 泣きそうになっているフェスエの髪を、リテミスがくしゃくしゃとなでてやった。
「ふん、美しい友情だな」
 心にもないセリフを吐きながら笑う、黒服の男。
 予想外の効果的な奇襲だったが、まだ艦隊は一割残っている。もともとが大規模な艦隊だったのだ、これでも第十五空洞の侵略には十分だろう。
 この司書どもの作戦は失敗に終わったわけだ。
「よし、改めてこいつらを拘束室に」
『敵勢力、活動を再開しました! ブリッジに向かっています!』
 しん、とブリッジが静まりかえった。
「おい貴様、どういうつもりだ!」
 黒服の男が叫ぶと、フェスエがぽかんとした顔になる。
「そ、そんなはずは」
「あがが、ぐ、が!」
 黒服の男がまたリテミスに〈フォース〉を使い始めたので、フェスエがあわてて〈全知の書〉を構え、再び呪文を唱える。
「今度こそ止まったハズです!」
「どうだ今度は!」
 確認までの時間、リテミスが青い顔でもだえ苦しんでいるのは言うまでもない。
『敵勢力、依然として進行中です!』
「おおい小娘えええ!」
 フェスエを怒鳴りつける、黒服の男。恥も外聞もない。
 叱られた当人は頭をかきながら、苦笑いを浮かべるばかり。
「すみません、命令を聞かなくなっちゃいました。えへへ」
 えへへじゃねーよ、と黒服の男は頭を抱えた。
 と同時に〈フォース〉が切れたので、間一髪でリテミスは一命を取りとめた。
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Date:2014/05/04
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Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

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