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勝ち目の無い闘い

「そろそろだな」
 黒服の男は席を立ち、階段で下の床に降りた。
 程なくして、ブリッジの壁に設けてある扉が開き、やかましい喧噪が聞こえてくる。
 予想通り、〈太陽破壊爆弾〉のところで見た老人と中年と子供だ。
 前を歩く保安チームに手錠(四角く組んだ本)をかけられ、引っ張られている。
「いたたた、この野郎、もっとお客さまは丁重に扱いやがれ!」
 手錠を急に引かれたので、子供のように騒ぐ中年の大男。
「そうですよ! 船造ってまで来たんですよ!? 大変だったんですから!」
 ぶーぶーと文句を垂れる、大きなメガネの少女。
「そうじゃそうじゃ! わしなんてこの二人のお客さんなんじゃぞ! つまり客の客ってことで、より丁寧に扱って、っていたた!」
 手錠を引っ張られ、黙らされる老人。
 黒服の男はそれを眺めながら、床の広く開けている場所に歩いていった。
 ドーム型天井と床が接している場所。ブリッジの一番前。
 ここなら、ブリッジ中の本にこの三人組の末路を見せることが出来るだろう。
 黒服の男が、歩いてくる三人組に手を振る。
「やあどうも! ご気分はいかがかな?」
 三人はほぼ同時に反応した。
「ああ、最高だな! このゴツいお友達がもーちょっと遠ければな」
「えーと、お、お気遣いありがとうございます!」
「へーくしょい! へーくしょい!」
 黒服の男は頭を押さえた。皮肉でいいから、せめて方向を統一してくれないものか。
 
 
 三人組は、黒服の男の目の前に引っ立てられた。
 保安チームに背後からしっかりと腕をつかまれ、床に無理やり座らされる。
 じろりと睨まれても、黒服の男は涼しい顔だった。
「爆弾のところでもっと苦労してもらう予定だったんだがね。解体は終わったのか?」
 リテミスが自慢げに答える。
「ああ、残り時間は半分も余ってたぜ」
「ほう、それはそれは!」
 これにはさすがに黒服の男も驚く。あの複雑極まる構造の爆弾を、たった二分と少々で解体しただと?
 やれやれ、こいつらは放っておけば新生大学帝国にとって脅威になりかねない。
「となれば、対処は簡単だ」
 黒服の男はつぶやくと、フェスエに向かって手をかざした。
 とたんに、なぜかフェスエが首を押さえ、苦しみだす。
「かっ……くかっ……!?」
 まるで首を絞められているように、息がのどを通らなくなっているのだ。なんとか口をいっぱいに開いて空気を通そうとするが、まったく効果は無い。
「〈フォース〉だよ。〈全知の書〉に記された知識のひとつだ。これなら、たとえ君たちだって殺すことが出来る。もっと早くこうすれば良かったな?」
 くくく、と笑いを漏らす黒服の男。
「かっ……か……」
 そうしている間にも、フェスエの顔からどんどん血の気が引いていく。
 リテミスが上から保安チームに押さえつけられたまま、身を乗り出して叫んだ。
「てめえっ! 殺すなら俺からやりやがれ!」
 冒険家も叫ぶ。
「いや、わしじゃ! いま死のうが寿命で死のうが、大して変わりゃせんわ!」
「……ふん」
 黒服の男が手を下ろした。
「かはっ!」
 邪悪な力から解放されたフェスエが床に倒れる。
「げほっ、はあ、はあ」
 そのまま、急いで息をつく。
「大丈夫か!」
「平気かねフェスエさん!」
 しばらく経ってから、フェスエの返事があった。
「だ、だいじょぶ、です……」
 声がだいぶ枯れているが、命に別状は無いようだ。
 その様子を冷たい目で眺めていた黒服の男が、大げさに肩をすくめた。
「まあ、今すぐに殺すのももったいないな。君たちの持っている知識を洗いざらい吐いてもらって、そしたら死んでもらおう。艦長!」
 突然呼ばれたので、艦長は少し反応が遅れてしまった。
「はっ、陛下」
「こいつらに、我が艦隊を見せてやれ」
 ニヤニヤと笑いながら、黒服の男は命令を下した。
 
 
 すぐにドーム型天井いっぱいに映されていた星空(都市の灯りなのだが)がスクロールし、今までと反対を向く。
 景色の一部がクローズアップされ、艦隊の全貌が現れた。
 全長一キロメートル級……前回の「第十三空洞侵略艦隊」なら旗艦レベルの大型戦艦が二百隻、連なって浮かんでいる。
「『第十五空洞侵略艦隊』だ。少しばかりスケールアップしてるのが、君たちにもわかるだろうな?」
 天井と三人組の間に立ち、くるくると回ってみせる黒服の男。
「この旗艦には約十万人の兵士が乗り込んでいる……さらに、あの眼下の二百隻にはそれぞれ約一万人前後が乗っているんだ。つまり、君たちが相手にしているのは、総勢二百十万人の大隊なのだよ」
 回るのをやめ、三人をじっと見る。瞳の奧に燃える、狂った炎。
「止めようなどとは思っていないだろうな、まさか?」
「止めます」
 フェスエの声が上がった。まだガラガラ声でいつもの調子は出ていないが、しっかりと黒服の男を見つめ返し、こう告げた。
「止めてみせます」
 思わず目を見張ってしまう黒服の男。こいつ、本当に正気か?
「どうやって止めるんだね? ん? 三対二百十万だぞ? 武装も強力だ」
 リテミスが割って入った。
「あんた、どうやってこんなにお友達を増やした?」
 そこで言葉を切り、ブリッジの方を見る。
 戸惑いながらも、旗艦の発進に向けて調整を続けるスタッフたち。
「きちんと質問に答えてほしいね……まあいい。わたしは皇帝の後を継いだんだ。君たちによって非業の最期を遂げた皇帝のね」
 ブリッジから、何人かの声が上がり始める。
「そうだ!」
「卑怯者のテロリスト!」
「狂信者め!」
 黒服の男が手を挙げ、それを制する。すぐに声は止んだ。
「そういうことだ。君たちも認めるだろ?」
 リテミスがやれやれ、と首を振った。
「認めても認めなくても、どうせ一緒だろうが」
 そのとき、艦長から報告が入った。
「陛下!」
「なんだね艦長」
「発進の準備が整いました!」
 黒服の男の眉が上がり、満面の笑みになる。
「ほう、それは素晴らしい! すぐにワープで第十五空洞の太陽を目指したまえ」
「了解しました」
 ブリッジの床から力強い振動が伝わってくる。旗艦の巨大な動力炉が目覚め、本格的に稼働し始めたのだ。
 黒服の男は三人組を押さえつけている保安チームに、短く指令を出した。
「拘束室に放り込め」
 保安チームはうなずき、三人を一斉に立たせる。
 黒服の男は、今度は壁際に立つ〈カルイデス〉のエージェントに声をかけた。
「〈フォース〉を習得している者が三人同行しろ。抵抗すれば構わん、殺せ」
 エージェントが三人、リテミスたちに近づいてくる。
 感情の見えない黒服の男たち。
 だが、距離を最後まで詰めることは出来なかった。
 エージェントが全員、なぜか途中で、呆然として立ち止まったのだ。
 ドーム型天井に映された景色に魅入られたように、動かなくなってしまった。
 黒服の男がそれに気づき、声をかける。
「おい、どうした。何を見ている」
 しかし返答が無い。さらに今ではエージェントどころか、保安チームも、司書たち三人組も、ブリッジのスタッフも全員がドームの景色に見とれている。
 ブリッジがひどく静かになっていることに、黒服の男は気づいた。
 なので自分も振り返って、ドームの景色を見てみることにした。
 ちょうど艦隊の戦艦が五隻ほど一斉に爆発、轟沈したところだった。
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Date:2014/05/04
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Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

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