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明らかになる陰謀

 老人の代わりに部屋に入ってきたのは、二十人もの重武装した兵士たちだった。
 全員がドアの近くに広がり、ショットガンをリテミスたちに向けている。
 ちょっと経って、三人にも今どういう状況なのか理解できたので、両手を挙げた。
 冒険家が遠慮がちに口を開く。
「なあ、ひょっとしてなんだが……わしらは今かなりピンチなんでは?」
 リテミスはもう冒険家に向けられる顔なんて無いと思った。
 人質を普通にドアに向かわせるとは、なんという底なしの間抜けなんだ、俺は。
「はい……ちなみにあの銃で吹っ飛ばされたら、大体の本は死にます。すみません」
 それに隣で震えているフェスエにも、本当に申し訳ないと思った。
 俺が守ってやらなきゃならなかったのに。なんとしても。
 悔しくて仕方ないのに、涙も出やしない。
「総員、撃てえッ!」
 突入部隊のリーダーが吠える。
 三人に向けられた本が一斉に火を噴き、恐るべき反発場を解放した。
 三つの身体が後ろに飛び、倒れた。
 
 
「やめッ!」
 リーダーの声で、長かった射撃は終わった。
 万が一にも生きていることなどないよう、徹底的にダメージを与えておくための。
 その甲斐あって床に倒れた三人はぴくりとも動かないし、その向こうにあった皇帝の机に至ってはもはや原型を留めず、ただの散らばった本と化している。
 学生連合がここまで侵入したなどというのは不名誉な事件に違いないが、しかし最悪の事態は水際で防がれたわけだ。
 基地に緊急警報が発令されてから、初めてリーダーは安堵した。
 この三人以外の侵入は確認されていない。後は念のため基地中を一通り捜索して……。
 もぞっ。
 突然、倒れていたはずの身体が動いたので、リーダーは飛び上がるほど驚いた。
「あれ、俺たち生きてる?」
「あれー? なんでですか?」
「てっきり撃たれたと……でも痛くないのう」
 三人が起き上がった。
 大学自衛軍一の勇ましさを自認する突入部隊は、全員がその場から素早く一歩引いた。
 リーダーは任務を思い出した。震える声で再び号令をかける。
「う、撃てッ! 撃てえーッ!」
 またも一斉射撃が三人を襲う。
 が、三人はそよ風ひとつ吹いていないといった風で、のほほんと立っている。
 しかも、銃が作動していないわけではない。射撃は三人の後ろの壁にダメージを与えており、壁を構成している本が崩れてゆがみ、穴も開きそうだ。
 どういうことだ?
 リーダーは混乱の極地に立たされた。
「あー、そうか! わかったぜ嬢ちゃん」
 リテミスが心底うれしそうに声を上げる。
「俺たち本じゃないじゃん。本なら反発場で吹っ飛んで死ぬけど」
「あ、ああー!」
「なるほどのう!」
 フェスエと冒険家も大納得。
 それを聞いたリーダーはもはや混乱などというものではない。
 まさか、じゃあ「あの三人」は、いや「あれ」はなんだ。本でないとすれば、本でないとすればなんだ?
「さーて、じゃあここを出るぞ! 駆け足!」
「あいあいさー!」
「了解じゃ!」
 三人は突入部隊を押しのけて、いともやすやすと皇帝執務室を後にした。
 
 
 廊下を急いで駆け抜ける。幸いなことに兵士は居なかった。
「なんで人が居ないんですかね?」
 フェスエの疑問に、リテミスがきょろきょろと脱出路を探しながら答える。
「さあな。元々居ないのかもしんないし、どっかに集まってるのかもしんないし」
 そこで何かに気づき、立ち止まった。
 他の二人も驚いて止まる。
 リテミスの視線の先には、床に倒れ伏すたくさんの兵士の姿があった。
 三人で目に入る範囲の兵士の脈を取ってみる。
「生きてるな。失神してるだけだ。でもなんで……?」
 がりがりと頭をかくリテミス。誰か敵対勢力が侵入したのか?
「もしかして、『学生連合』さんでしょうか」
 フェスエの言葉にしばらく考えてみるも、肩をすくめる。
「わからん。そうかもしれないし、そうでないのかもしれない」
 倒れた兵士を見つめていた冒険家が、懐かしそうにつぶやいた。
「まるでクーデターだな」
「クーデター?」
 フェスエの不思議そうな視線に気づくと、冒険家は言葉を継ぐ。
「ああつまり、軍隊などがその雇い主を裏切って、急に反乱を起こしてしまうことだよ。むかし、クーデターの起きた国に行ったときは、ちょうどこんな風に兵士が倒れていた。もう何十年も前なのに、覚えているものなんだのう」
 そんな昔の話はいいから、とリテミスが口をはさんだ。
「まあとりあえず今は、脱出の方法を……」
 しかしそこまで言ってから、はっと何かに気づき、口をつぐむ。
 ちょっと考えをまとめてから、重々しく切り出した。
「なあ、確かジマーマン爺さんは、『あの本をそろえさせるわけにはいかん』とか『世界の終わりが来てしまう』とか言ってたよな」
 フェスエはなんとか昔を振り返り、記憶を引っ張り出してみる。
「ええ」
 だが思い出せなかったので、適当にそれっぽい神妙な顔で相づちだけ打っておいた。
 冒険家も全く覚えていなかったらしく、ぽかーんとしている。
「で、本を集めてたのは『特務機関〈カルイデス〉』って黒服のヤツらだ」
 フェスエと冒険家がなんとかうなづいた。
「そして、清掃員のじいちゃんはこう言ってた。『〈カルイデス〉が暴走してる』って」
 そこは覚えていたので、二人は大きくうなづいた。
「つまりだ。もしかして、もう七冊そろっちゃってるんじゃないか。で、その力を使って〈カルイデス〉がクーデターを実行したんじゃ、ないかなーっ……て……」
 フェスエが自分の持っている〈全知の書〉をリテミスに見せていた。
「ああもう、わかったよ! そんなわけないな。とにかく脱出路を探そう」
 そう言った瞬間、ドドド……と地面が縦に揺れた。
「地震か?」
 とっさに、壁に張り付く冒険家。だが、横揺れはやってこない。
「おいおい、こんなんありえないぜ、だってここは……」
 リテミスは誰にともなくつぶやいていたが、苦笑いでフェスエに向き直る。
「六冊でも結構ヤバイことになるんじゃねーの?」
「かも……しれませんねえ」
 苦笑するフェスエ。
「嬢ちゃん、ここらへんをスキャンしてくれ。エネルギー反応が一番大きいのはどっちだ」
「了解です!」
 メガネのつるをなでて、顔の脇に手のひらを添えた。
「す、きゃーん!」
 手のひらはそのままに、顔をあちこちに向け始める。
 きょろきょろ、きょろきょろ。
「なあ、リテミスさんや」
 冒険家がリテミスの肩をつついた。
「なんでフェスエさんは、ずっと手の指をヒラヒラ動かしているのかね?」
「特に意味はありません。前に理由を聞いたら、『ただキョロキョロしてるだけに見られないように』とか言ってました」
「はあ、なるほど」
 まああれが無ければ、ただ単にキョロキョロしている人であるのは間違いない。
 しばらくするとフェスエがキョロキョロを止め、廊下の床を指差した。
「この下に、ものすごく大きいのがあります!」
 ちょうど良く廊下の壁に地図があったので、二人で位置を確認する。
「えーと、ここだな。地下二十階」
「だと思います」
 神妙にうなずきあう二人。
 話に入りそびれていた冒険家が口をはさんだ。
「早いところ脱出したほうがいいんでないかね? 本のことならもういいから」
 リテミスがゆっくり首を振る。
「いえ、これは思ったよりマズい事態かもしれないので。この星がスプリンクラーなのは言いましたよね?」
 冒険家はこの星に到着する直前に、脱出ポッドの中で説明されたことを思い出した。
「ああ」
「スプリンクラーが設置されているのは、書庫内に水を供給するため、あとは照明を提供するためです。なぜ水を供給するかっていうと、書庫内に住んでいる〈出来上がっていく本〉たちが」
「水をエネルギー源にしているから、かね」
 リテミスが驚いて目を剥いた。
「良くわかりましたね」
「これまでの状況を見てくればおのずとわかるわい。特殊な本は水で濡らすと、その効果を発揮するからの。人間のような本であろうと、その例には漏れんというわけじゃ」
 それに、空洞探査船では食料が無く、水のみが準備されていたことでも明白だ。
 お客さんをちょっと見くびってたな、とリテミスが頭をかいた。
「まあそういうわけで、ここが破壊されると、書庫内の全ての生きている本に深刻な影響があります……大量虐殺です」
「大変なんです!」
 フェスエが最後にムリヤリ割り込んだ。
 冒険家は大きくため息をつくと、熱心に見つめてくる二人を見つめ返した。
「わかった。で、どうするのかね?」
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Date:2014/05/04
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Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

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