明日から書く。

□ 図書館グーゴルプレックス □

皇帝ではなく、清掃員との出会い

「だ、誰だお前は!」
 思わず声をかけてしまうリテミス。なぜなら怪しかったからだ。
「なに、誰か居るのか!?」
「な、なんですか?」
 冒険家とフェスエもそっちを見る。まずい。兵士に見つかったか?
 問題の人物はちょっとためらっていたが、観念して物陰から出てきた。
「ああいやそのー、すまない、驚かすつもりはなかったのだ。撃たないでくれ、撃たないでくれよ!」
 そう言いつつビクビクと両手を挙げる老人に、リテミスが詰め寄る。
「あンたは誰だ、ここの兵士か?」
 驚き首を振る老人。
「いやいやいや、とんでもない兵士だなどと。ただの、あー、清掃員だ。このタンクの」
 首を振るたびに真っ黒なローブがバサバサと音を立てる。
 黒魔術で使うような格好だ。さらに、ちょっと首を下に向けただけで顔が全て隠れそうなほどゆったりとしており、裾もかなり長くて踏んでしまいそうだ。
 こんな格好でタンクの掃除をせねばならんとは大変だなあ、と冒険家は同情した。
「あの、なんで他の方はいらっしゃらないんですか?」
 フェスエが恐る恐る質問した。正直この老人は見た目が怖い。
「さ、さあ。確か誰かが侵入したとか言ってたから、それを撃退しに行ったのかも」
 なぜかこの老人、さっきから目を見て話してくれない。
 リテミスは思案顔になった。
 参ったな、自分達はしっかり見つかってるわけで、これからどうするべきか。
「なあ、あンた皇帝……」
 なぜか老人の身体がビクッと震えた。
「の居場所とか知らないか。いや、知らなくてもしょうがないンだけどな、清掃員じゃ」
 老人は長く細い息を吐いた。
「……すまないが、ちょっとわからない」
「そうか~」
 リテミスががりがりと頭をかく。
 仕方ない、別の人に聞くか。
 しかしそこで、フェスエが名案を思いついた。
「そーだ! この人に一緒に来てもらいましょうよ! 道案内してもらいましょう!」
 老人がまん丸になった瞳でフェスエを見つめる。
「いや、このじいさんは知らないって言ってるだろ?」
 リテミスの言葉に、老人がうんうんと激しくうなずく。
「それでもこの近くならわかるはずですよ、だって働いてる場所ですもん。ね?」
 老人はフェスエの屈託の無い笑顔を向けられて、目玉をきょろきょろと動かした。
「あ、あー、そう、だな。この近く、本当に近くまでなら案内できる」
「やった!」
 ハイタッチして喜びあう三人。対して老人は、気づかれないようにため息を吐いていた。
 
 
 壁のドアから階段に出て三つほど上のフロアにたどり着くと、そこは兵士達の走り回る喧騒に満ちていた。
 フロアに出るドアの内側に張り付き、様子を伺っていたリテミスが戻ってくる。
「まずいな、ここには出れそうにねえぜ。人が多すぎる」
「そうか残念だ、では帰るか」
 言うなり、階段を引き返そうとする老人。
 冒険家に肩をがっしりつかまれた。
「そういうわけにもいかなくての。ん? そうじゃ、リテミスさんや」
「なんでしょ」
 冒険家が老人を指差す。
「この際、この人に人質になってもらうというのはどうかの。申し訳ないが」
 老人はなにかを吹き出しそうになった。
「し、しかしわたしは清掃員だ。そういうのには向かないと思うが」
 リテミスはちょっと考えたあと、こう言った。
「よし、その案で行きましょう」
 老人はがっくりと肩を落とした。
 
 
「よーしお前ら道を開けろ! これが目に入らないか!」
 リテミスの威勢のいい掛け声と共に、三人(と老人)はフロアに躍り出た。
 老人の首にはリテミスの腕が後ろから回され、逃げられないようになっている。
 さらに、その頭には拳銃(本のカタマリ、フェスエ作)が突きつけられている。
「お、お前ら動くんじゃねえー、です!」
 ショットガン(同じくフェスエ作)を振り回すフェスエ。
「武器を捨てるんじゃ!」
 ロケットランチャー(同じくフェスエ作)を振り回す冒険家。
「くそっ、なんてことだ……!」
 兵士たちは口々にそんな言葉をつぶやきながら、持っていた拳銃を床に落としていく。
 ゆっくりと油断なく廊下を進みながら、リテミスは確かな手ごたえを感じていた。
「おいなんだかうまくいってるぜ、穣ちゃんよ」
「そうだな、です」
「ほっほ、まさか清掃員を人質に取られるとは予想外だったみたいだの」
 三人はあっけなく、エレベーターシャフトまでたどり着いた。
 廊下ではたくさんの兵士がこちらの動向をうかがっている。
「よおし、これでこことオサラバできるぜ。バイバイ兵士さん」
 エレベーターのボタン(開いた本の模様)を押しながら、リテミスは安堵していた。
「あ、リテミスさん。どこに行けばいいのかわかりませんよ」
「げ、参ったな」
 早くしないとエレベーターが来てしまう。
 冒険家が一番近くの兵士に声をかけた。
「ちょっとお尋ねしたいのだが、皇帝とやらはどちらにいらっしゃるのかの」
 兵士は目をひん剥いて、なぜかリテミスのあたりをソロソロと指差そうとしたが、
「こ、この方のおっしゃりたいことはだ。つまり、皇帝陛下の執務室はどこか? ということだ」
 と老人が口をはさんだので止めた。
「……このエレベーターシャフトを上がって、百五十階に上がれば執務室です……陛下」
「わしゃ陛下などと呼ばれる覚えはないのう」
 冒険家は軽く笑った。
「お、結構近いぜ!」
「とんとん拍子ですね!」
 きゃっきゃとはしゃぐ二人。
 老人はいまにも目を回しそうだった。
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Date:2014/04/29
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Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

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