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黒い太陽への旅立ち

 廊下を少し歩いたところに、たくさんのハッチが開いている場所があった。
 脱出ポッドの区画だ。
 大体のポッドは使用されたようだったが、ひとつだけ未使用のものがあった。
 壁にある開いた本の模様を押すと、ハッチが開いた。
 三人はその中に入る。中はすぐ、狭いポッド内部になっていた。
 席に着き、シートに体を固定する。廊下から、少女がそれを見守っている。
 固定が終わると、リテミスが空中に声をかけた。
「JAL! 艦長のサポートよろしくな!」
『お任せください。まったく、ホントに死んだかと思いましたよ』
「悪い悪い」
 手を合わせて謝る。
『そうだ、もうひとつだけ。艦長、お願いします』
「うん」
 少女が廊下に置いてあった一冊の本を持ち上げ、ポッドに入ってきた。
「はい、これ。お土産」
 リテミスにそれを渡す。
「なんだコレ」
『〈全知の書〉のうちの一冊です』
「ええっ!?」
 椅子から浮かんばかりに驚くリテミス。なんでここにあるんだ。
『我々侵略艦隊の重要な目的の一つが、その〈全知の書〉を発見することだったのです』
 リテミスはその本の表面をなでてみた。確かに、長老が持っていた本とそっくりだ。
「なんで、くれるんですか?」
 フェスエが首をかしげていると、少女がそちらを向いて微笑んだ。
「わたしたちが持ってても、意味なんてないから。あんた達が持ってたほうが、たぶん、この本も喜ぶと思うんだ」
 ずいぶん頼もしい笑顔が出来るようになったなあ、とフェスエもつられて笑った。
「そっか。ありがとな、艦長さん」
 リテミスが手を差し出すと、少女も手を出した。固い握手をする二人。
「ご武運を祈ってます」
「風邪ひかんようにの」
「ありがとう」
 フェスエと冒険家とも、しっかり握手をする。
「おっとリテミスさん、そろそろ行かないと」
「おお、そうだな」
 少女は素早くポッドから廊下に出た。まだ開いたハッチ越しに見えている。
「じゃあ、お達者で!」
 フェスエが大きく手を振ると、少女も振り返した。
 リテミスが操縦装置をいじると、ハッチが閉まり始める。
 少女は手を振るのをやめ、おもむろに手の甲をおでこに付けた。敬礼である。
 三人もそれに習う。
 リテミスは、その小さな勇士をずっと覚えておこうと思った。
 ハッチが閉まると、少女は見えなくなった。


 ポッドは戦艦から勢いよく射出された。
 暗く長いトンネルを抜けると、後方モニターに、巨大な壁のように戦艦が映った。
 進むにつれ戦艦が小さくなり、それに従う数多くの船も見え始めた。
 ポッドが十分離れると、艦隊は一斉に閃光を放ち、ワープした。
「うまくいったみたいだな」
 ぽつりと、リテミスが言う。
「あれれー? さびしいんですかリテミスさん」
 フェスエがちゃちゃを入れる。
「うっせ! 嬢ちゃんだって泣いてるじゃねーか」
「な! 泣いてません!」
 ぐすっ、とすすりあげた。
「うまくいくといいのう」
 やや不安げに、冒険家がつぶやく。
「そうですね。これから、ですから」
 リテミスは、あいつならきっとうまくいく、と思った。
 ポッドの軌道を修正し、目的地にセットする。
「それに我々のパーティーだって、これからが本番なんですよ」
 前方モニターには、すでにその巨大な姿が映っていた。
 ぐんぐんと距離を縮める。
 その目的地はいまや、視界の半分を覆う真っ黒な球体と化していた。
「あれが目的地なのかね?」
 冒険家がゆっくりとリテミスに尋ねた。
「そうです。あれが空洞の中心、『黒い太陽』。長老によれば、あれのどこかに奪われた〈全知の書〉がある……はずです。な? 穣ちゃん」
 リテミスがフェスエに振った。
「ええ。そのはず……です」
 袖で目をふきながら答えるリテミス。
「ふーむ。そのはず、かね」
 冒険家は腕を組んで、座席に沈み込んだ。
「まあ、確かに行ってみないとわからないだろうのう」
 近づいてみると、暗黒の天体は黒い惑星であった。
 どうやら人工物らしく、鏡のように滑らかな表面が星明りを反射している。
 ただし、完全な球体ではなかった。よく見ると表面にはたくさんの穴が開いている。
 まるで宙に浮く、金属製のゴルフボールだ。
「これは本ではないのか?」
 そういえばそんなことを言っていたな、と思いながら、冒険家がリテミスに聞いた。
「はい。スプリンクラーですから」
 ポッドの中が静かになった。
「……なぬ?」
 冒険家のおでこに、本人もびっくりするほどのシワが寄った。
 リテミスが慌てて補足を加える。
「ああ、スプリンクラーっていうのはですね! 要するに水を撒く機械のことで」
「知っとるわ! あれが水撒き機だというのかね! あのでっかいのが!」
 さらに距離を詰めていくと、穴のふちにキラキラと点滅する物体が連なって張り付いているのが見えてきた。まるで砂がこびりついて光を反射しているようだ。
「そうです。書庫の中に水を撒いたり、あとは照明をつけたりするんです」
 目をこらしてみると、穴と穴の間にも光の粒が見えてきた。
「そんなバカな話が……」
 そこで突然、ポッドが激しく振動し始めた。
 
 
 ポッドは揺れ続けた。まるで嵐の海に放り込まれたイカダのよう。
 座席に押し付けられたかと思えば次の瞬間自由落下になり、しかし前方モニターは黒い惑星を離さずに捉えていた。
 壁にがつんがつん頭をぶつけながら、冒険家は叫ぶように質問してみた。
「これは、だい、大丈夫なの、かね、あだっ!?」
 リテミスが叫び返す。
「どうも、誘導、ビームにいでっ! 捕まってしま、ったようですフェスエ!」
「いまやってまー、すっ!? ひたかんだあ」
 フェスエは答えながらも、目まぐるしいスピードでコンソールを叩きまくっていた。
 その間にもモニターに映る黒い惑星はぐんぐんと接近してきている。
 穴と穴の間にある光の粒に向かって落ちていく。
 光の粒はどうやら建造物の明かりらしく、輪郭が見分けられるようになってきた。
「ぶ、ぶつかっ、てしまうぞ!」
「フェスエ! 早く! 早く! 早く!」
「はひー」
 フェスエが必死に仕事を続けているにもかかわらず、無慈悲にも黒い惑星の地面はどんどん近づいてくる。
 正確な高度はわからないが、あと数秒で激突することは確実だろう。
 もうだめだ……と冒険家(とリテミス)が目をつむったとき。
 ガタン!
 急に思いっきり前に押し付けられた。
 安全レバーが思い切り腹にくい込み、まるでレバーで全体重を支えたように痛む。
 ああ胃になにも入ってなくてよかった、と三人は思った。
 吐き気がおさまると、フェスエはコンソールの表示を確認する。
「誘導ビームは遮断されました。成功です」
「よおしよくやったぞ穣ちゃーん!」
 リテミスがここ一番の笑顔で、フェスエの頭をぐしゃぐしゃとなでた。
「い、痛いですよー。えへへへ」
 痛がりながらも照れるフェスエ。
 喜んでいたリテミスだが、すぐに我に返る。
「おっと、また捕まっちまう。すぐに移動するぞ」
「あいあいさー!」
 フェスエがコンソールに戻り、ポッドが再び移動しはじめた。
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Date:2014/04/29
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Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

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