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艦隊の再出発

 無数の星たちのもと、チャルグウィッ大学理工学部航空空洞工学科所属第十三空洞侵略艦隊は、あらたな隊列を組んでいた。
 そして少女はぴんと背筋を伸ばしたまま、コンソール前に座っていた。ガチガチに緊張しているのである。真っ赤なシートから背中は離れ、頭には艦を脱出した(前)艦長の残していったぶかぶかの帽子を乗せている。
 フェスエ、リテミス、冒険家の三人はその後ろに立ち、手を背中の方で組んでいた。
 リテミスが後ろから少女の両肩に手を乗せ、静かに声をかける。
「さ、じゃあ始めましょうか、艦長」
「う、うん」
 コンソールに手を伸ばす。
「ちょっと待った!」
 リテミスが制止した。
「え、なになに!?」
 おたおたと腕を振り回す少女。
「ほら、教えただろ。発進するときは艦長らしく、威厳たっぷりに」
「そ、そっか」
 リテミスが優しく微笑むと、少女も落ち着きを取り戻し、練習通り腕を組んだ。
 おほん、とせき払いする。
 星の映る前方のスクリーンを見据えると、ありったけの威厳を込め、言った。
「発進(エンゲージ)!」
 そして、自分でコンソールをぽちっと押した。
 ズドン!!
 少女以外の三人が後ろにぶっ飛んだ。
 爆発するように反発力エンジンが始動し、全速力で戦艦が発進したのだ。
 四十八基のエンジンを咆哮させながら、星空に向けて吹っ飛んで行った。
 自動的に艦隊中がそれに従う。
「ちょ、速い! 速い!」
 ぐらぐら揺れる船内で、転げ回りながらリテミスが注意した。
 うなりを上げ、艦隊は空間を疾走する。
「ど、どーやって止めるのコレ!?」
 めちゃくちゃにコンソールを押しまくる少女。
 船体から星空に向かって、輝く光の筋が何本も伸びた。
「違います! それ主砲! 主砲です!」
 壁に頭をぶつけながら、フェスエがコンソールを操って砲撃を止める。
 ちなみにこの砲撃で、三つの国が壊滅的な損害を被った。
「え、じゃあコレ!?」
 狂騒状態におちいった少女が、また何かを押した。
 その瞬間、戦艦は側面から強烈な青い閃光を発して、消えた。
 当然、即時通信ラインでつながった艦隊中がそれにならう。
 戦艦のスクリーンに、虹色のトンネルのような光景が映り始めた。
「ワープしちまったわい!」
 頭を押さえてよろよろと立ち上がりながら、冒険家がコンソールを押す。
 スクリーンからトンネルが消え、星空が戻った。
 星空をバックにして、前方に暗い天体が待ち構えている。
 一瞬で目的地に着いたらしい。戦艦も止まったようだ。
 リテミス、フェスエも立ち上がった。
「成功か、結果的には」
 ため息をつくリテミス。
「え、ご、ごめんなさい」
 少女はわけもわからず、謝った。
 
 
 皆がひと息ついていると、突然戦闘指揮所にチャイム音が鳴り響いた。
 びくりと全員の身体が震える。
「通信です……。スクリーンに出します」
 フェスエがコンソールをいじった。
 リテミスがスクリーンの前に立つ。胸を張って腕を後ろで組み、笑顔を作った。
 フェスエも横に並ぶが、表情はやや固くぎこちない。
 冒険家たちは向こうの画面に映らないように、少し離れた場所に移動する。
 画面の向こうでは、全身黒尽くめの制服を着た二十人ほどの男たちが並んでいた。
 どうやらどこかの研究施設の中のようで、黒服たちの後ろではたくさんの白衣を着た本が歩き回っていた。
 黒服の一人に見覚えがある。
 そう、あの空洞内の都市で〈全知の書〉を持ち去った男だ。
 別の一人が進み出て、スクリーンに近づいた。だいぶ老齢の男だ。
 感情の見えない目がリテミスとフェスエをじっと見つめる。
『あなた方はどなたかな? 侵略艦隊に何をしたのだ?』
「司書です。あー、このチビッ子は見習いですが」
「ちょっと、誰がチビッ子ですか! それに司書ですよう!」
 フェスエがわめきながらリテミスの袖を引っ張る。
 が、リテミスにメガネをつまみ上げられて放り投げられたので、
「ああ、メガネがあ!」
 フェスエは画面外に消えた。
「そちらの基地まで乗せてもらったんです。実に親切な方々で、助かりました」
 眉をひそめて何かを考えていた黒服の男が、少し経って口を開く。
『司書と言ったな。司書が我々の基地にいかなる用があるというのだ?』
「ちょっと禁帯出本の持ち出しがあったもので、返してもらおうかと」
『ふむ? 君たちはどこの図書館の職員かね?』
「あー、それはちょっと言えません。でも、ヒントなら」
 すう、と息を吸い込み、はっきりと伝える。
「空洞と太陽を所有し、管理しています。〈全知の書〉ももちろん、我々の所有物です。すぐに返却して頂きたい」
 つかの間、戦闘指揮所に静寂が降りた。
 黒服の男がのどの中で、くつくつと笑い始める。
『なるほど、なるほど、なるほど。どこの図書館かわかったよ。……ところで、もし我々が抵抗したらどうなるのかね?』
 リテミスの眉がちょっと上がって、下がった。
「そうですねえ、そうなると、ちょっと実力行使という形になってしまいます。なるべく抵抗しないことをオススメしますよ」
 黒服の男はもはや笑いを押し殺すことが出来なかった。
『ハ、ハ、ハハハハハ! 君たち三人で、軍隊を相手にするというのかね!』
「ええ」
 さらりと答えるリテミス。
 黒服の男は笑いが引くまで待ち、しわの寄った目の端をぬぐってからこう言った。
『そういうことなら仕方ないな、ではお待ちしているよ』
「ええ、皇帝にもよろしく」
 スクリーンが消えた。
 ふいー、とためた息を吐き出すリテミス。ちらっと少女を見る。
 少女も、不安げに見つめ返していた。
「えーっと、だな」
 ぽりぽりと頭をかきながら、どう言おうか考える。
「じゃあ、もう俺たちは行くわ」
 さりげなく切り出した。それでも少女が驚き、ついで表情が暗くなるのがわかる。
「……そっか。そうだよね。用事があるって言ってたもんね」
 帽子を取り、頭をかいた。
「なんか、すごい助けられちゃったね」
 笑ってはいるが、さびしさは隠せていない。
「悪いな。その、ちょっとしたパーティーがあるんだ。遅れるわけにもいかなくてな」
 それきり、気まずい沈黙が降りた。フェスエや冒険家も押し黙っている。
 しかし、時間が迫っていた。
 仕方なく、リテミスが切り出す。
「……じゃ、もう一人で大丈夫だよな」
「うん、ありがとう」
 少女が手のひらを見せた。
「またね、みんな」
「おう」リテミスが答えた。
「また会いましょう」フェスエが答えた。
「達者での」冒険家が答えた。
 リテミスが、部屋の出口に向かって歩き出す。後の二人も続く。
 廊下を三人で歩く。
「あの子、もう大丈夫ですよね?」
 フェスエがつぶやくと、リテミスは何気ない調子で答えた。
「ああ、もちろん」
 大丈夫、きっとなんとかやっていくだろう。
 廊下を曲がったところで、リテミスはふと、冒険家がいないことに気づいた。
 あわてて引き返す。
 冒険家は部屋から少し出たところで止まっていた。
「捕まっちまったわい」
 参った、と笑いながら肩をすくめる。
 腰に少女がくっついていた。
「おいおい、なにやってんだよ?」
 苦笑いするリテミス。
「ちょっとだけ、こうさせて」
 少女のくぐもった声。
 冒険家がその頭を、くしゃくしゃとなでた。
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Date:2014/04/29
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Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

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