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先ほど以上の大混乱

 四人は廊下を走っていた。廊下には警報が鳴り響いていたし、周り中から、怒号や罵声や悲鳴がごっちゃになったものがずっと聞こえていた。
 廊下に面した部屋からはひっきりなしに兵士が出て、四人にぶつかりそうになりながらどこかに逃げて行った。
 しかも部屋から廊下に出るのは、兵士だけではなかった。
 ある部屋からは爆発音とともに机だった本のカタマリが飛び出てきたし、別の部屋からは水の濁流が、また別の部屋からは壁を突き破って偵察艇の先っぽが飛び出てきた(その場合はそれ以上空気が漏れないように、すぐさま廊下の隔壁が降りた)。
 要するに、とんでもなくひどい有様であった。
「い、一体何をしたの?」
 全力で走りながら、少女はフェスエに尋ねた。フェスエがコンソールに本を戻した瞬間から、この大混乱は始まったのだ。
「んふふ、ちょこっと水と超音波の流れを変えただけです! ね、リテミスさん!」
「おう、それに機関部の給水ラインを切ったりつなげたりな」
 少女は頭がクラクラし始めていた。
 どういうことだ、この二人……一見して司書か何かにしか見えない二人が、実は凄腕のエンジニアだったのか?
 それも単に器用なだけじゃない。戦艦の論理構造をちょっと見ただけで完全に把握し、少ない作業で効率的にそれを改ざんして、とんでもない損害を与えたのだ。
「お、お姉ちゃんたちはなんなの? この戦艦を造った人?」
「いいえ全然? 初めて来ました」
 真顔で答えるフェスエ。どうやら、本当に初見であの改ざんを行ったらしい。
 そうなると、もはや「天才」などというレベルではなく。
「お姉ちゃんたちは……うーんと、神さまとか?」
 少女は真剣に聞いたのだが、ぷふっ! っとフェスエは吹いてしまった。
「えー、そう見えますかぁ?」
「ううん、全然。でも、あんなの普通の本にはムリだよ!」
 まあ合ってるっちゃ合ってる、とリテミスは思ったが、それを伝えるわけにもいくまい。
「俺たちはプロなんでな。それに加えて、こいつは大天才だ」
 リテミスの横には、器用にも走りながら胸を張るフェスエが居た。
「あんま言いたくないけどな」
「なっ、なんでですか」
「よっしゃ着いたぜ!」
 フェスエの抗議はリテミスにさえぎられた。
 四人は、「戦闘指揮所」と看板の掲げられた、一回通り過ぎた部屋に戻ってきていた。
 
 
 部屋にはだれも居なかった。さきほど見学したときの喧騒がウソのようだ。
「あれ? なんで空っぽなの?」
 部屋をきょろきょろ見回しながら、少女は言った。
「ああ、なんかさっき艦内中に減圧警報が出てたな」
 しれっと言いのけるリテミス。
 フェスエとリテミスは、またも迷うことなくコンソールに向かった。席に着く。
「あ、そうだ、お客さんも手伝ってください」
 フェスエが入り口近くに立っている冒険家に声をかけた。
「わ、わしは全然わからんぞ?」
「ふっふっふ、心配ゴム用。こういうときにはコレです!」
 フェスエがポケットからなにか怪しげな小瓶を取り出した。
「瞬間理解薬ー! ひとつぶ飲めば効いている間、理解力が一万倍になります! わ・た・し・が・合成しました!」
「怖っ!」
「怖ーっ!」
 ドン引きするリテミスと冒険家。
「え、説明の前半ですか後半ですか」
「両方だよ……必要な資格とか持ってるんだろうな。あとリスクの説明しろ」
 フェスエが気まずそうな顔になり、ゆっくりとうつむいた。
 全員が注視するなか、のどからしぼり出すように言葉を吐き出す。
「か、過度の服用は……大脳皮質に重大な損傷をもたらす……恐れが……」
 空気の流れが止まったかのように、戦闘指揮所は静まり返った。
 少女がごくり、とつばを飲む音だけが聞こえる。
 熟考していたリテミスが、突然立ち上がった。
 冒険家に素早く走り寄り、背後から羽交い絞めにする。
「よし、じゃあお客さん飲んでみましょうか!」
「ええー!?」
 恐怖の表情を浮かべる冒険家。
「よし穣ちゃん今だ!」
「がってんです!」
「ま、まてまて、ちょっとま、あがぐぐ、むぐ、ごくん」
 冒険家の顔が真っ青になった。
 が、どんどん元に戻っていく。
「……平気、だの」
 リテミスが羽交い絞めを解いた。
「それではレッツゴー!」
 後ろから背中をフェスエに押されて、冒険家が席に着いた。
 はじめは戸惑っていたが、見る見る表情が明るくなる。構造を理解し、操作を習得したのである。
 リテミスも寄ってきて、二人に耳打ちをした。それぞれうなずき、微笑み、席に戻る。
「よっしゃ、やっちまおうぜ?」
「合点承知、です!」
「うむ、ロケンロール(蜂の巣にしてやるわい)!」
 それから数分は、まるでピアノのアンサンブルを見ているようだった。三人は歌うようにコンソールを叩き、艦隊中に向かって破滅の呪文を投げかけた。
 彼らの前の画面郡には、なんとか読める程度の速度で流れ去る文字列の山、たくさんの四角と四角が線で結ばれたもの、同じ方向を向いた三角マークの大群、などが映っていた。三人はせわしなく動き続ける。
「ルート権限奪取しましたー」
「よーし、こっちも行けそうだ。そろそろ出来上がるぜ、特製の強力なヤツが」
「即時通信ライン乱れなし、いつでも行けるぞい」
 そこまで来て、彼らの動きが止まった。
 フェスエが、少女を手招きする。コンソールを指差した。
「えっと、ここを押してもらえます?」
「こ、ここ?」
「そうそこ」
「えいっ」
 ぽちっ。
 コンソールから指を上げた少女は、ふと画面が変化したのに気づいた。さっきまで画面中が赤い三角マークであふれていたのに、刻一刻と色が青く変わっていき、ついには中央の黄色いマークだけを残して、全て青くなっている。
「よーし、全艦制圧したな」
「やつらのあわてる顔が見ものじゃな」
「それは後のお楽しみです!」
 三人はなにやら物騒な会話をしたあと、さらに操作を続けた。
 数分が経つと、それぞれコンソールから手を離し、肩をもむ。
「経理部どうなった?」
 リテミスが首を回しながら聞くと、冒険家とフェスエがそれぞれに報告を上げる。
「粉飾決算をリークしといたわい、学生連合名義で」
「ついでに戦闘機を講堂に突っ込ませましたー」
「よーし上出来。俺も終わった」
 めいめいがコンソールから立ち上がる。
「じゃ、最終段階だな」
 リテミスが意味深に、少女にウインクした。
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Date:2014/04/29
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Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

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