明日から書く。

□ 図書館グーゴルプレックス □

カンテラの故障

 三人はどこか暗い倉庫のような場所に突っ込んで止まった。
 全員、もちろんカンテラのおかげで無傷である。
 冒険家、リテミス、フェスエがそれぞれ、壁だった本の山から体を起こした。
「あたた、何かにぶつからなかったかね?」
 冒険家はわき見をしていたのでよく見ていなかった。
「うーん、ゴミでも漂っていたんでしょう」
 リテミスも同じく見ていなかった。
「ぷはあ、なんか一瞬熱かったような」
 フェスエも同上。
 やれやれカンテラがあってよかった、とリテミスは思った。
 普通なら今ごろ全員、仲良くパンケーキみたいになっているところである。
 服を手で払いながら立ち上がる。が、何かに気づいて止まった。
「あーっ!?」
 急に、目をまん丸にして叫ぶ。
 自分の近くを漂っていたカンテラをひっつかみ、フェスエに向ける。
 フェスエもそのカンテラを見たとたん、
「ぎゃーっ!」
 まるで恐ろしいものを見たように叫び、自分の近くのカンテラをひっつかむ。
 その両手がガクガクと震えている。
「え、ど、どうしたのかね」
 二人のただならぬ様子に、冒険家も不安になってきた。
 フェスエが口を開き、申し訳なさそうに説明を始める。
「実はその、カンテラがiMLyZQしまって……最Wwrenk生命維持シスtaaVWZ言語翻訳機能Mddebuているんですが……」
 おかしい。生の声のはずなのに、ときおりノイズが混じって聞き取れない。
「す、すまんがもう一回言ってくれ」
 人差し指を立ててお願いすると、うなずいて繰り返してくれた。
「qavIt, ejDoQIHwewwI’, yIntaghyIn’ej yInQumwI’.」
「はあ?」
 冒険家は目も口もまん丸に開いてしまう。
 余計聞き取れない! というより、全く別の言語を話されているようだ。
 リテミスが助け船を出してくれた。
「フェスエ、カンテラeAeCbiYhCAがいかれdTNFJjYjQD。お客さんLiFMcUkQSZだ」
 フェスエはうなずき、自分のカンテラの裏のフタを開けて、ごそごそいじり始めた。
 混乱する冒険家のところにリテミスがやってきて、ジェスチャーでカンテラを貸せ、と言ってくる。
 冒険家がカンテラを貸すと、リテミスがそれをいじり始めた。
 どんな作業なのかさっぱりわからないが、冒険家は待つしかない。
 しばらく待っていると、二人ともカンテラを置いた。
 おほん、とフェスエが咳払いして言った。
「あー、あー。お客さん、わかります? 言葉通じますか?」
 冒険家は思わずフェスエに抱きついていた。さっきまで、言葉も文化も全く知らない国に放り出された気分だったのだ。
「ぎゅー」
「ああ、すまない」
 解放されたフェスエが新鮮な空気(カンテラのサポートつき)を吸い込む。
「で、なにがあったんだね?」
 リテミスが頭をかきながらやってきた。
「衝突のショックで、カンテラの機能が一部壊れてしまいまして……生命維持システムと言語翻訳機能はどうにか回復しましたが、さっきみたいな無茶はもうできないですね」
「それ以外に不都合はあるのかね?」
「呼吸は相変わらずサポートされますが、真空中では無理です。あとバタ足もね。例えば高い所から落ちるとか銃撃されるとかすれば、怪我したり死んだりします」
 ふー、と冒険家は溜めていた息を吐き出した。
「ならまあ、それほど問題もなさそうだの。要は普通になったというだけのこと」
 リテミスがまた頭をかきむしる。
「でもこうなると、どうやって図書館まで帰ればいいのやら」
 三人は腕組みをして、しばらくうーん、とうなっていた。
 
 
 考えていてもしかたないので、三人は連れ立って、廊下らしき場所を歩きはじめた。
 どうやら戦艦に突っ込んでしまったらしい。
 ときおりドタドタと戦闘服の兵士が走って通り過ぎるが、よほど忙しいのか、奇妙な風体の三人にも構っていられないようだ。廊下には警報が鳴り響いている。
「なんかうるさいですねえ?」
 フェスエが耳に手を当てながら言った。
「お祭りか何かかのう」
 冒険家があごをなでながら笑う。
「ならいいんですけどね」
 リテミスが軽くため息をついた。
 歩いていると、がやがやと騒がしい部屋にたどり着いた。
 
 
 部屋の入り口には、「戦闘指揮所」という看板があった。壁中に大小様々な開いた本がいくつもくっつけられており、レーダーらしきものの図や、艦隊の配置図や、その他もろもろの図形が動いている。
 部屋には怒号が満ちていた。コンソールらしき本のカタマリに張り付いたたくさんの人間(本)が、てんでばらばらに報告を上げている。
「『英単語かんたんマスター』の状況はどうなってる!?」
「状況不明です、応答ありません!」
「駆逐艦『カップめん完全ガイドブック』、轟沈しました!」
「くそっ、学生連合めっ……」
「重巡『家庭菜園をつくろう』、ならびに輸送艦『激ヤバ都市伝説』、爆沈!」
 と、ここでズシン! と部屋が大きく揺れた。
「何やってんだ! 早くシールド復旧しろ! 早く!」
「現在修復中! 修復率三十パーセント!」
「軽巡『トキメキ☆超兵器』より入電! 『機関暴走、操舵不能!』」
 三人はちょっと見学すると、その部屋を通り過ぎた。特に用事もなかったからだ。
 フェスエが先頭を切って歩いているリテミスの肩をつついた。
「あのー、わたしたちってどこに向かってるんでしょ?」
「えっ、わかってなかったの!?」
 リテミスがびっくりして振り返る。
「説明が無かったですもの」
 ぷくっとほほをふくらませて反論する。
「う、うむ、わしも聞いておらん」
 冒険家も負けじとほほをふくらませる。
「なんでお客さんまで張り合うんすか。……あのね、俺らは、この戦艦から脱出しなくちゃいけないの。わかる?」
「もちろんわかります!」
 フェスエがぺん、と胸を叩いた。
「じゃあ、どこ行くかはもうわかるだろ」
「全然わかりません!」
 またぺん、と胸を叩いた。
「……まあ、脱出ポッドくらいあるだろ。たぶん」
 そう言って、リテミスは前を向いた。早く帰って寝たい。
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Date:2014/04/29
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Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

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