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戦艦への、バタ足による突撃

 三人が吸いだされた直後、ロケットは爆発し、ばらばらの本になって四散した。
 周り中が星空であり、上も下もなかった。
 冒険家は無駄と知りながらも、手足をじたばたさせた。
 そのほうが、一秒でも長く生きられるような気がしたのだ。
 だがすぐに疲れたので、ひざに手をついて、ぜいぜいと息をした。
 はて?
「お客さーん!」
 ふと、大声で呼ばれた。なじみのある声だ。
 声のした方を見ると、星の海をすいすいとクロールで渡ってくる人影があった。
 冒険家は目を疑ったが、自分の正気を疑うのも忘れなかった。
 ただどちらを疑ったところで、目の前にフェスエが漂っている事実は消えなかった。
「いやー良かった、お客さん近くにいて」
 ふー、とおでこをぬぐうフェスエ。
「あの、えーとだね、基本的な質問をしていいかね」
「はいどうぞ」
「なんでわしらは普通に生きてるのかね」
「それはですね」
 フェスエが、冒険家の横あたりを指差した。冒険家がそちらを見る。
「……カンテラ?」
 カンテラが浮かんでいた。それも奇妙なことに、冒険家から一定の距離を保ってわずかに動いている。
「おーい! 無事かー!」
 また大声で呼ばれた。そちらを見ると、リテミスがかえる泳ぎでこちらに近づいていた。
 
 
 三人はバタ足で真空を渡っていた。
 どうやらフェスエとリテミスの説明によると、カンテラは自動翻訳機兼、環境適応装置らしい。真空の空間で呼吸ができ、話すことができ、さらには泳ぐことができるのも、全てはカンテラのおかげだったのだ。
 現に今も、三人の後を三つのカンテラがふわふわと追っている。
 驚くべきテクノロジーだ。冒険家は足をバタつかせがら、かぶりを振った。
 ただ、それなら始めから言っておいてくれればよかったのに。
「絶対安全だと言ってしまったら、スリルってものがないでしょう」とはリテミスの弁。
 そんなものかねえ。
 ばたばたばたばた、と三人は泳ぐ。
 ぐうー、と、冒険家のおなかが鳴った。
「おっとと、わしか」
 苦笑いを浮かべる冒険家。リテミスに話しかける。
「そういえば、腹が減ったな。どれくらい泳ぐのかね」
 リテミスは無言で、顔をそむけた。
 首をかしげる冒険家。今度は、フェスエの方を向く。
「わしらはどれくらい……」
 フェスエも顔をそむけた。
 無言でバタ足を続ける三人。
 おもむろに冒険家はリテミスの頭を両手でわしづかみにして、自分の方を向かせようと力を入れた。冒険家の体を押して抵抗するリテミス。
「ど、れ、く、ら、い、で、つ、く、の、か、ね、?」
「そ、そのようなご質問にはお答えできません~」
 精一杯力を入れたが首をひねることには失敗したので、冒険家は両手を離した。解放されたリテミスが首をさする。
 今度はフェスエの方を向いた。冒険家は笑顔だが、目は笑っていない。
「どれくらいで着くのかね?」
「あ、あのー、その、ですね……」
 フェスエはぽりぽりと頭をかいた。決して冒険家の顔は見ない。
 冒険家は泳いで、フェスエの顔の正面に移動した。だがフェスエもそれに合わせて頭を回し、決して冒険家の顔は見ない。
 ぐるぐるぐるぐると、冒険家はフェスエの周りを何周もした。だがフェスエは決して顔だけは合わせてはならないと、体ごとくるくると回る。
 そんなこんなしている二人を見ていたリテミスだったが、ふいに、その場から逃げ出すようにスピードを速めた。
 それに気づいた二人が、そろって追いつこうとスパートをかける。
「こら、何で逃げるんだね!」
「一人だけズルいです、リテミスさん!」
 いったんは追いつくものの、リテミスがさらに一秒あたりのバタ足回数を増やし、二人を抜き去る。その差を縮めようと、また二人が頑張り……。
 三人はバタ足チェイスに突入した。
 冒険家が必死に泳ぎながらリテミスに叫ぶ。
「はっ、はっ、何か、言うべきことがあるんじゃないのかね!?」
 フェスエも泳ぎながら叫ぶ。
「そーですよリテミスさん! 謝ってください!」
 リテミスも叫び返した。
「何で俺が謝んなきゃいけねーんだよ!!」
 その後もぎゃあぎゃあとやりながら泳ぎ続ける三人だったが、この一瞬のちに歴史的な事件をもたらす重要な事実をすっかり失念していた。
 カンテラを伴っての真空中でのバタ足は、際限のない加速を生むのである。
 その上で、三つの偶然が重なった。
 まず、彼らの進路上に、チャルグウィッ大学帝国の大艦隊が待ち構えていたこと。
 次に、彼ら三人の速度がいまや、(艦隊に対して相対的に)毎秒二十キロメートルに達していたということ。
 最後に、チャルグウィッ大学帝国の艦隊は本に対しては鉄壁の反発シールドを持っていたが、残念なことに今飛来する物体は書庫内で唯一の人間だったということである。
 
 
 それは「書庫」の歴史に残るような、劇的な攻撃だった。
 まず三人の人間が恐るべき速度でもって、チャルグウィッ大学帝国の旗艦にわき目もふらずに突進した。
 旗艦は当然の対処として、飛来する物体を迎撃すべく大量のミサイル(本の集合体)を繰り出した。
 だが、ミサイルの(本同士の相互作用を利用した)誘導システムは本でない物体を認識できなかったため、ミサイル同士がお互いに激突しあうことになり、三人組はミサイルに気づきもしなかった。
 結果として(鉄壁を誇った反発シールドも、本同士を結合する強力な引力もおよばず)旗艦(全長一キロメートル級)は機関部を打ち抜かれ、大破した。
 ここで、旗艦が脆いなどという批判は筋違いである。なぜなら、毎秒二十キロメートルで飛来する人体の運動エネルギーを計算すれば、ざっと四十四口径マグナム弾の七百五十万倍に及ぶからだ。運悪く流れ弾に当たって死んだ人に向かって、「お前が皮膚を鍛えていないのが悪い」と叱るようなものである。
 しかも艦隊は密集形態をとっていたため、旗艦の放ったミサイルがよけきれず隣の艦に衝突。これを敵にジャックされた味方艦からの予期せぬ攻撃と受け取った艦載論理機関が反撃に移ったので、ミサイルはさらに別の艦に着弾。そしてまたその艦が打ち返し……。
 艦隊は未曾有の大混乱に陥った。
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Date:2014/04/29
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Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

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