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宇宙ではなく、空洞への出発

 一時間ののち、三人組は暗い荒野の真ん中、照明に輝く発射台の前に居た。
 巨大なとんがったピラミッドのような物体が、やぐらに囲まれている。
 ピラミッドの周りに霧がかかっているように見えるのは、水がまかれているせいらしい。
 彼らを乗せていたタクシーが去ったあと、冒険家は聞いた。
「で、空洞ってなにかね? あれは」
 ピラミッドを指差す。
「空洞に向かう『空洞探査船』と聞いたが」
 リテミスが重々しく口を開く。
「空洞とは……積み重なった本の間にあいた隙間のことです」
 沈黙が降りた。寒々しい風が、三人の間を吹き抜ける。
「ん? ん? それとあの船とどういう関係があるのかね?」
 リテミスが地面を指差した。
「よく見てください。この地面は積み重なった本で出来ているんです」
 冒険家は地面を眺めた。発射台からの光で、地面中に表紙の文字が見える。
 たしかに乱雑に積み重なった本のようだが、それはもう知っていたことだ。
「なるほど。つまり、この地下に大空洞があるので、地面を掘り進んで向こう側に行こうというわけかね」
 どすどすと地面を踏んでみる冒険家。
「いえ、逆です」
「なぬ?」
 リテミスは、今度は空を指した。
「空洞はあっちです」
 冒険家はぽかんと空を見上げた。星以外何も見えない。
「じゃあつまり、ここは地下なのか?」
「いいえ」
「じゃあどういうことかね!」
 冒険家はかんしゃくを起こしそうだった。さっぱりわけがわからない。
「こう想像してみてください。宇宙は穴だらけのスポンジのようなもので、その穴の内側に人が住んでいるのだと」
 頭を抱える冒険家。なんてことだ、今度は宇宙?
「想像したぞ」
「それがこの書庫です」
「つまり、我々は積み重なった本の隙間に居ると」
「そうです」
「じゃあやっぱり地下じゃないかね。どこかに地表があるのだろう」
「ありません。この書庫はどこまで行っても本で、最終的には同じところに戻ってきます。恒星より大きな隙間の内側の壁に、人々は住んでいるんです」
 冒険家は地面にへたりこんだ。
 カンテラがかたんと音を立てて倒れた。
 
 
 給水が終わり、長いカウントダウンが始まっていた。
 発射台にすえつけられ、水に濡れて光る物体は動力を得て、小刻みに震えている。
 物体の動力は外壁の材料である〈反発する本〉から供給されていた。
 物体の外で本を広げ、壁沿いに輪になった四十二人の術式スタッフが、絶え間ない呪文を外壁に向かって唱えている。〈反発する本〉が地面との反発力を得るためだ。呪文がクライマックスに向かうにつれ、物体の振動は大きくなってきていた。
 もちろん、コクピットも例外ではない。
「それででで、なんでででわしらががが乗り込んでいるんだねねね」
 物体の中、狭いコクピットのシート(本なので固い)に縛り付けられ、冒険家は言った。
「本ををを、取り戻すすすためですすす、もちろんんん」
 となりのリテミスが答えた。
「ロロロケットに乗るなんててて初めてですすす!」
 もうひとつとなりのフェスエがシートの上でもぞもぞ動いた。
 冒険家は乗り込む直前の出来事を思い出していた。
 もともとのパイロットたちが泣きながら、歴史に残る名誉をゆずってくれたのだ。
 長老は一言電話するだけで、政府をも動かせるらしい。
 それも当然か。なにしろバックに居るのは造物主なのだ。
 無邪気にはしゃぐフェスエと目を閉じて乗り物酔いに耐えるリテミスを横目で見ながら、冒険家はこの世界の異様さに思いをはせた。
 そのとき、天井にとりつけられた本から声が聞こえてきた。
『ハローハロー、聞こえてますカー?』
 フェスエが両手を挙げて答える。
「聞こえてててまーすすす!」
『オーケー、ワタシは空洞工学博士の[ハートのクイーンとは眠らない]と申しマース。ハートと呼んでくだサイ』
 リテミスが口を押さえていた手を離し、本に向かって抗議した。
「ハートさんんん、この揺れはははどうにかならないののの?」
『オー、ソー・ソーリー、その揺れはどうにもなりまセン。微重力地帯に着くまで、我慢してくだサーイ』
 冒険家が揺れながらかぶりを振った。
「なんてことだだだ」
『それにしてモ、まさか[造物主]にお会いできるナンテ夢にも思いませんでしタ。ああ、無線だから会ってはないですネ! ハーッハッハッ! オーフ!』
 ひとしきり笑ったあと、ハートは続けた。
『ご安心ヲ、あなた方の正体はここだけの秘密デス。外の世界の知恵がアレバ、これからの探査も百人力デス!』
「探査っててて、なんだねねね」
『太陽への探査飛行デス。我々は何十年も前から、太陽に無人探査船を何度も送っていたのデス。昼は輝き、夜は暗くなる身近で不可思議な天体デス!』
 冒険家は、この都市に来る直前に見た夜空を思い出した。
 あの暗い天体……あれが太陽?
『しかも探査の結果、驚くべき事実が発覚しまーシタ。なんと、太陽の表面には継ぎ目も文字も無いのデス!』
 そう言うと、ハートは少し黙った。なにかを期待しているような雰囲気だ。
 三人がリアクションをとりあぐねていると、なぜかハートは満足した様子だった。
『そうデス、驚いて声も出ないデショウ! ワタシだって信じられマセンでした、実際にこの目で表面を確認するマデ! オー、太陽は本では出来ていないのデス! では、では一体何で出来ているのか、ワタシはとても知りたいデス! 本ではなく一体ナニで! まったく想像の外の話デース!』
 一息にしゃべりおえると、ハートの荒い息遣いがしばらく聞こえていた。
 なるほど、と冒険家は思った。想像できないのも無理はない。太陽を観測したところ、それが原子でも素粒子でもない全くおかしな何かで出来ていた、と言われたようなものだ。
 外の世界がトップシークレットなのは、こういう理由もあるのだろう。
『おーっと、話しすぎマシタ。発射まであと十秒デース』
「えッ!」
「早ッ!」
「急ッ!」
 突然の展開に、急いで体勢を整える三人。
『ナナ、ロク、ゴ、ヨン、サン、ニイ、イチ、ゼロ! 発射! エンジョーイ!!』
 ハートがいい終わるやいなや、三人はシートに叩きつけられた。
 ロケットは爆音とともに空気を押しのけ、空のかなたに吹っ飛んだ。
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Date:2014/04/29
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Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

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