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帝国の侵略

 リテミスはなぜか長老から目をそらした。
「い、いやー、見てないですねえー」
「そうか、こっちのほうに来たと聞いたんじゃが」
 きょろきょろと辺りを見回す長老。
「な、なにかあったのかの?」
 フォローしなければと、冒険家が続きをうながす。
「そうじゃ! ほらこれ! ウチにまたヤツらが来たんじゃ! 顔を隠して!」
 リテミスの顔前に突き出される国王マスク。なんとか見ないようにする。
「卑怯なヤツらじゃ、わしを脅して情報を吐かせたうえ、去り際にセクハラまでかましていきおった! むうう、なんというテクニシャンズ!」
 興奮を抑えきれない長老。三人組は若干引きながら「へ、へえー」などと言った。
「あ! そうだ!」
 フェスエが何を思いついたか、突然手を打った。
「その人たち見ましたよ!」
「なに!?」
 長老がフェスエのほうに走りより、肩をがっちりつかんで揺さぶり始める。
「は、早く言わんかっ! どこで見たんじゃ!」
「あ、あっち、あっちに行きましたあああああ」
 フェスエが空を指差す。
「どこじゃい?」
 目を細める長老に、フェスエがメガネを渡す。
 長老はメガネをかけて再び空を見上げ、目がまん丸に見開かれた。
「あれは、帝国軍の機動揚陸艇か……? 遮蔽機能がもう実用化されとるのか!」
 顔をしかめながらも、若干の懐かしさと誇りがその瞳に宿る。
「詳しいですね長老さん?」
 思い出の中に浸っていたので、フェスエの声に気づくのにも数秒かかった。
「ああ、わしは昔、帝国……いや、大学におってな。理工学部航空空洞工学科所属の捜索者(サーチャー)じゃった」
「さーちゃー?」
「部品を探してくる仕事じゃよ。造りたい船に適した本を。わしは腕利きでの」
 また遠くのほうを見る長老。若い頃を思い出しているのだろう。
「しかしその仕事も、あのバカ理事長がクーデターなんぞ起こしたおかげでパアじゃい。なーにが『大学帝国』じゃ、まったくバカげとる……」
 そこまで言って、はっと気がついた。
「そうか、帝国のヤツらめ、あの本を集めとるのか! こうしちゃおれん!」
 言うが早いか、来たのと反対方向に走り出す。
「ちょっと、どこに行くんですか!」
「ヤツらをおっかけるんじゃ!」
 ばたばた走る長老の頭上には、街を離れつつある機動揚陸艇の姿が。
「足じゃ無理っすよ長老!」
 リテミスの声は聞こえているのだろうが、それでも長老は走り続ける。
「め、メガネ返してくださいー!」
 フェスエを先頭にして、三人組も長老を追いかけることになった。
 もうご老体なのになかなか速い。
 だが起動揚陸邸が高度を上げ始めると、長老は立ち止まり、もどかしげに空をあおいだ。
 しばらくゼイゼイと呼吸を整える三人、地団駄を踏む長老。
「しかし、なんとかせにゃ! ヤツらにあの本をそろえさせるわけにはいかんのじゃ! そろっちまったら最後、それこそ世界の終わりが来てしまう」
 長老に返されたメガネで、フェスエは空を仰ぎ見てみた。
 言っているそばから、機動揚陸艇はぐんぐん上昇して小さくなっていく。
「どうして世界が終わるんですか?」
 フェスエの質問に、長老が(劇的効果を狙って)めいっぱい溜めてから答えた。
「太陽を壊す気じゃよ」
「ええっ!?」
 思わず叫んでしまうフェスエ。リテミスが話に割り込んできた。
「ちょ、ちょっと待てよ。どうやってだよ! だってあれは本じゃ……」
 そこで大声だったことに気づいて、声のトーンを内緒話レベルまで落とした。
「本じゃないんですよ。それになんで壊すんです? いったい何の得があるんですか?」
 長老は観念したように両手を広げ、目を丸くしてみせた。
「知るもんかね。どうやって壊すのかも、なんで壊すのかも。しかし、太陽がもし吹き飛んじまうようなことがあれば、それは世界の終わり、この空洞全体の終焉じゃ。あの太陽からの水の供給がストップしてしまえば……」
「なぬ?」
 冒険家が思わずさえぎってしまった。
「水? 水と言ったか?」
「……言ったが」
 長老がうなずいた。
「太陽から水、と言ったのかね?」
「ああ、そう言ったが」
 二人はちょっとの間見つめ合っていたが、やがて冒険家が観念して目線を外した。
 この場所は本当にヘンテコな場所らしい。
 とにかく、太陽が壊されればヤバい。当面はそれだけわかっていればいいだろう。
「あ……」
 フェスエが小さくつぶやく。
 起動揚陸邸が、空の黒にまぎれて見えなくなってしまったのだ。
「終わりじゃ、もう……」
 頭を抱える長老。
 腕組みをして考えてみる三人組。
 なんか腕を組むと当たるなあ、とリテミスが内ポケットから本を抜き取った。
 遊び紙に『リブロシティ・タイムズ』と書いてある。
 ちょっと前にフェスエがかっぱらった、この都市の地方紙だ。
 ふいに、そこに載っていた小さな記事を思い出した。
 突然、リテミスがフェスエに質問を投げかける。
「なあ嬢ちゃん! 今回の件、館長への連絡ナシでもすぐに『管理者権限』を無制限使用できるよな?」
「え? え、ええ。『太陽を破壊する』という行為は、『大量虐殺』でかつ『書庫内環境の破壊行為』であると考えられます。なので、現地スタッフに一時的に全権限が委譲され、状況の収束に向けて」
「よっしゃ!」
 フェスエが言い終わる前に、リテミスは長老に小走りで近寄っていた。
 そして悲観にくれる長老の目の前に、ぐいっ、と本を突き出す。
「あのー、これ、借りれます?」
 そして、例の「いい考えがある」スマイルでそう言った。
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Date:2014/04/29
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Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

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