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発見、そして横取り

「無いですねー」
「無いなあ」
「無いのお」
 三人はマスクを被ったまま、長老宅を荒らし……もとい捜索していた。
 部屋はあまり広くはなく、隠せる場所もそうあるとは思えない。
 だがしかし、〈神の本〉は陰も形もなかった。
「無いですねリテミスさん?」
「そうだな穣ちゃん」
 もくもくと探す。
「無いのおリテミスさん」
「そうですねお客さん」
 もくもくと探す。
 なぜかセリフがとげとげしい気がする。いや、気のせいだろう。
 本を取り出す。仕分ける。めくってみる。もくもくと探す。
 取り出す本が無くなった。仕方なく、取り出した本を元に戻してみる。
「無いじゃないですか!」
「無いじゃないかね!」
「ひ、ヒイイッ!」
 フェスエと冒険家が同時に怒鳴ったので、リテミスは情けない声を出してしまった。
 そのまま小さい声で弁明に入る。
「いやその、なんとなくなんですけど、新聞記事からもここかなって……思って……」
 そう言ったきり、黙り込むリテミス。
 まあ自分達もそう思ってたけども、と残りの二人が顔を合わせた。
 一瞬のち、責任はこの凹んでる人に負ってもらおう、とアイコンタクトで決議する。
 リテミスの左右に分かれて、立つ。
 フェスエが、リテミスの肩をつかんで揺らしながら言った。
「どうするんですか、どうやって探すんですかー」
 同じく、冒険家も反対側から肩を揺らして文句を垂れる。
「どうするんだね、探しようがないぞー」
 沈痛な面持ちで、されるがままのリテミス。身体が振り子のようにゆらゆら揺れる。
「どうやって見つけるんですかー」
「どこを探せばいいんだねー」
「ねー次どこ行くんですかー」
「ねーなんでここにしたんだねー」
「ねーねー」
「ねーねーねーってばねーねー」
「うっ、さあああい!!」
 どーん、と音を立て、盛大にリテミスの堪忍袋の緒が切れた。
 呆気にとられて見守る、横の二人。
「はいはいよくわかりましたよ、全部俺が悪いんだろ! うわあああん!!」
「あ、リテミスさん待って!」
 リテミスが出口のドアに向かって駆け出す。
 が、不意にドアが開いた。長老が帰ってきたのだ。
 どしーん!
 結果として、入ってくる長老を廊下側に突き飛ばして、リテミスも部屋側にしりもちをつく格好になった。
「いってて……。すみません、大丈夫ですか」
「ああ大丈夫」
 と言いかけて、長老は息をのんだ。
 自分を見つめる三人の不気味な国王マスク。荒らされた部屋。
「……な、なんじゃあお前らはあ! き、兄弟か!? その顔は」
 リテミスが釈明するより早く、長老は状況を理解した。
「そうか、やつらの手先じゃな! あのアホタレの帝国の!」
 フェスエと冒険家はマスクを脱ごうとしていたが、思いとどまって戻す。
「え、帝国?」
 長老は気が動転して、マスク越しの声がリテミスだということもわからないようだ。
「ハン、知らばっくれても遅いわ! お前らこの前も来たようじゃが、本はそこには無い! 探しても無駄じゃ、世界で一番安全な場所に隠しとるからの!」
 言いながら、長老はなんだか不自然に盛り上がったカーディガンを無意識になでていた。
 さっぱり意味がわからない。しかし、リテミスはこの状況を利用することにした。
 立ち上がり、長老のカーディガンをおもむろにめくる。
「な、何をするんじゃ! へ、変態さんめ、あー……」
 やはり本はそこにあった。見破られた驚きに目を見張る長老。
「何故わかったんじゃ、こんな巧妙な……まあいい、それは七冊無いと効果が無いんじゃ! 残りの場所はわしも知らぬでな!」
 フェスエと冒険家はまたも顔を見合わせた。どこかで聞いたような話だなあ。
 リテミスは本を持って思った。どうやって逃げよう。
「えーと……さ、さらばだジジイ! 帝国に繁栄あれー!」
 適当に思いついた捨てゼリフを残し、リテミスは走り去っていった。
 慌てて、後の二人も部屋を後にした。
 
 
 アパート近くの路地。
 三人はマスクを捨て、息をついていた。
 リテミスの手もとには、例の本。見た目はごく普通の本だ。
「よっしゃあ、うまくいったぜ!」
「いやいや、窃盗どころか強盗ですよコレ」
 得意満面のリテミスを、フェスエがジト目でにらむ。
「いーのいーの。どうせ爺さんが持ってても意味ないって」
「典型的な犯罪者の思考パターンだの」
 冒険家もツッコミを入れるが実のところ、まあ仕方ないか、と思い始めていた。
 いまこの本を返しても、事態はそれほど好転しないだろう。
 それより、この本が本当に〈神の本〉かどうか確かめたい気持ちのほうが強い。
「よし、その本を貸しなさい。わしが本物かどうか確かめよう」
 そういうわけで、リテミスの持つ本に手を伸ばす冒険家。
 しかし、なぜか横から素早くもう一本の腕が割りこんだ。
「いえ、わたしが見ます! わたしのほうが詳しいですから!」
 そして、リテミスは本を離さない。
「いやいや、一番読んでわかるのは俺だって! 俺が読んだら貸してやるって!」
 三人の間に、バチバチと視線の火花が散った。
 好奇心旺盛な三人組であり、この事態は最初から避けられなかったと言えるだろう。
「しかし、あんたはさっきの失態でペナルティがあるだろう。貸しなさい!」
「そうですよリテミスさん、確かにあります! はい本貸して!」
「そんなんで優先順位変わらねーんだよ! だから引っ張んなっつーの!」
 三方向から一冊の本を引っ張りあう三人の男女。
 知らず知らず路地から歩道に出てしまった。
 路上でも構わず、みにくい本の争奪戦は続く。自然と周りに人だかりが出来ていく。
「ここは客優先で読ませるべきではないのかね!」
「はっ、そんなん知ったこっちゃありませんです!」
「そうだそうだ、人類みな平等……よっしゃゲーットお!」
 ふとした瞬間の力のゆるみを利用して、リテミスが本を取り戻す。
 伊達に数十年も司書を勤めていないのだ。伊達に毎日毎日来る日も来る日もカウンター業務をこなしていないのだ。つまりお前らとは年季が違うのさ。
 本を持ったリテミスは、さっそうと歩道を逃走し始めた。
 まだ歩道には人があふれている。そこに、目を血走らせた大柄の中年男性が突進する。驚いたビジネスマンたちが反射的に道を譲ってくれた。
 だがしかし、リテミスの逃走劇は五十メートルいくかいかないかで幕を閉じた。
 ひょこっと路地から現れた黒服の男に、正面からぶつかってしまったのである。
 ごろごろと歩道に転がるリテミスと、全身黒尽くめの男。そして本。
 追いついたフェスエと冒険家が、すぐにリテミスに覆いかぶさって自由を奪う。
「リテミスさん確保ー! 時間、えー午後、三時くらい!」
「こら、おとなしくせい!」
「くそおっ、違うんだ俺はやってねえ……あれ、本は?」
 腕を後ろにねじり上げられながら、器用にも首を回すリテミス。
 他の二人も辺りを見回す。
 あった。近くに転がっている……が。
「げっ」
 三人とも、思わずそんな声が出てしまっていた。
 なんと、本が水たまり(歩道の本が抜けていた部分)に落ちてしまっていたのだ。
 まあ、この「書庫」内にホコリなどないので汚れてはいないだろうが、ビチャビチャの本というのも気分が悪い。
「ちょっとリテミスさん! どうしてくれるんですか!」
 リテミスに覆い被さりながら、ゆさゆさと身体を揺らすフェスエ。
「うえっ、ちょ、揺らすな重いんだから」
「重い!?」
 ショックを受け、うなだれるフェスエ。
 それを見た冒険家が、リテミスの腕をきつくねじり上げる。
「こりゃ! レディーになんてことを言うのじゃ!」
「いたたたたた! ち、違うんですって! 二人も乗ってて重いって意味で、決して単体で重いという意味では」
「本当ですか!?」
「本当本当」
「じゃあ神の名において誓ってください!」
「重いなずいぶん!」
「重い!?」
 ガックリうなだれるフェスエと、リテミスの腕をねじり上げる冒険家。
「こりゃ! レディーになんてことを(以下略)」
「ち、違、いたたた(以下略)」
 そんな感じで、その後もなお、やいのやいのと口論を続ける三人。
 が、ちらっと本の方を見ると。
 黒服の男に拾い上げられてしまっていた。
 しまった、警察二十四時ごっこをやっている場合ではない。取られたら大変だ。
 すぐに解放されたリテミスが、黒服の男に話しかける。
「あーすみません、拾ってもらっちゃって」
 なぜかうずくまったまま、男は本の表紙をじっと眺めている。
 それにしても、黒いスーツに黒い靴に黒い帽子にサングラスとは、ちょっと黒すぎじゃないかなあ。今はいいけど、昼間は暑いだろうに。
「あの、その本渡してもらえます?」
 しばらくすると男が立ち上がり、本を開き、中身をじっくりと眺め始める。
「あのー、すみませーん?」
 ようやく男は本から目を離し、言った。
「断る」
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Date:2014/04/29
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Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

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