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アパートへの潜入作戦

 その後すぐ、三人は半ば追い出されるようにしてアパートを後にした。
「なんてことじゃ、ここまで、ほんのすぐそこまで近づいて立ち往生とは!」
 冒険家はビルの谷間を歩きながら、腕を組んでぶつぶつと独り言を言っている。
「しかしですねえ、あの様子じゃ聞きだせそうにないですよ」
 その後ろを歩くリテミスは、頭の上で指を組んで思案顔。
「困りましたねえ」
 さらにその後ろを、フェスエがきょろきょろしながらついていく。
「何か場所のヒントだけでもくれんものかの」
 冒険家はため息をついた。
「難しいでしょうねえ、ウルトラ・ゲートボールのチケットでもあれば別なんですが」
 リテミスは頭を掻いた。準備不足だったか。
 ちなみに“ウルトラ・ゲートボール”とは、本来のものよりも更に過激なルールを採用したゲートボールであり、敵選手のボールどころか敵選手の急所をスパークしたり、更に敵チームオーナーの家族を人質に取ることも正式に認められている。
 この都市きっての人気スポーツであり、長老もこれには目がないのだ。チケットは即完売で、一年待ちもザラだとか。
「他の方法でヒントがもらえればいいんですがねえ……」
 行くあてもなく、とぼとぼと歩く二人。
 困った困った。
 それにしても、さっきから後ろが静かだな。
 角を曲がると、フェスエが大人二人に身長を伸ばされていた。
 
 
 十分後、フェスエは半泣きで正座していた。
 歩道にもかかわらず正座していた。
 その周りには、目を吊り上げた大人たち。
 ひとりずつ順番に少女を怒ったあと、リテミスがまとめの説教を始めるところだ。
「つまりだな、この本は全部他人のものなの。他人のものは勝手に取っちゃいけないの。わかる? ん?」
 つまり、フェスエの持った本を取り戻そうと引っ張っている銀行員と、フェスエの足を引っ張って引き剥がそうとしているタクシー運転手が居たわけである。
「で、でも、置いてあったから」
「これは壁になるんだ!」
 工事の作業員が怒鳴った。
「これは預金だ!」
 銀行員が憤慨した。
「これはハンドルの一部だ!」
 タクシー運転手が激昂した。
「す、すみませんでした……」
 フェスエは深々と土下座した。
 大人たちも気が晴れたのか、めいめい自分の使っていた本を持って帰っていく。
 まだ諦めきれないらしく、頭を上げて名残惜しそうな視線を送るフェスエ。
「あ、『グーテンターク聖書』が……ああ、『ツンデレ・カルタ手稿本』が……ああ~」
 大人たちは去っていった。
 路上にはリテミスと冒険家、フェスエ、それに一冊の本だけが残った。
 冷たい風がその上を吹き抜ける。
「珍しい本を見るとつい持ってっちゃうってクセ、いい加減直しなさい?」
 リテミスはじとーっとフェスエを見つめながら言った。
 この娘と書庫に行くといつもこうだ。最近慣れてしまっている自分が怖い。
「うう、すみませんすみません」
 よろよろと立ち上がりながらも、フェスエはひたすら頭を下げる。
「だいたい、欲しい本があるなら検索して出せばいいじゃないの」
「いえ、検索せずに見つけなければ意味がありません」
 中指でメガネを押し上げながら答えるフェスエ。
 なんてまっすぐな瞳だ……とリテミスは思いながら、そのメガネのブリッジをつまむ。
「メガネぽーん!」
 そのままメガネをフェスエの顔から引っこ抜いて、遠くにぶん投げた。
「ああっ、メガネメガネー!」
 フェスエはまるでボールを投げられた犬のように、それを取りに行くハメになる。
 その様子を呆れて見守っていた冒険家だが、ふと路上に置かれたままの本に目を止めた。
「む、まだ本が残っとるぞ?」
 リテミスが本を取り上げ、表紙を開く。
「なんでしょう、遊び紙にびっしり何か書き付けてありますね……ああ、わかった」
 説明しようとした瞬間、フェスエが戻ってきた。
「ふう、青森まで行ってきましたよ~」
「どこだよそれ……まあそれはさておき、お手柄だぜ穣ちゃん」
 フェスエに向けて本を振って見せるリテミス。
「え、す、すみません?」
 まさか褒められるとは思っていなかったので、対応を間違えてしまった。
 
 
「『リブロシティ・タイムズ』?」
 フェスエは怪訝な顔でつぶやいた。
 リテミスに手渡された本の遊び紙の上に、整った文字でそう書いてあった。
 その下はごちゃごちゃとした、針の先で刻印したような小さい文字でびっしりとうまっている。
「そう、新聞だ。この都市の地方紙。で、下の方を見てみ」
「えーと。
 国立航空空洞局、ついに大型有人探査船を完成させる。
 三人のクルーを乗せ、空洞探査へ大きな一歩……」
 目と新聞の間に、ぬっとリテミスの指が伸びた。
「違う、もっと下。もっとちっちゃい記事……これこれ」
 フェスエはその記事を読むために、鼻先が紙面にくっつくぐらい顔を近づけた。
「ええーと。
 昨日未明、
『長老』シェフ・ジマーマンのレシピ百選氏の自宅が荒らされているのが見つかる。
 ジマーマン氏は外出していて無事。
 盗難事件とみて警察が捜査しているが、持ち出された本はなく動機不明。
『ブツを渡せ』との脅迫メモ見つかる……なんですかコレ」
 新聞から顔を上げると、リテミスのニヤケ顔が目に入った。
「つまり、爺さまは大事な何かを隠してるってことさ。本人が持ってるとは盲点だな」
 言うなり、さっさと二人を置いて歩き始める。
「あれ? リテミスさん! 長老のお家はこっちですよ?」
 フェスエがもと来た方を指差すが、リテミスは止まらない。
「こっちでいいんだ! 俺にいい考えがある!」
 なんかそのセリフ不安だなあ、と思いながら、フェスエと冒険家はリテミスに追いつくべく走りだした。
 
 
 長老のアパート、非常階段横。
 壁からひょこっと、国王のいかつい顔が横向きに生えた。
 ひょこひょこっと、もう二つの同じ顔がその下に飛び出る。
「で、これがいい考えですか」
 国王(フェスエ)がじろりと国王(リテミス)をにらむと、顔をそむけられた。
「いやそのな、もっといいマスクがあるかなーと思ったンだけどな?」
「なんだね、これから仮装パーティーが始まるのかね、ん?」
 国王(冒険家)の視線が痛い。
「とりあえず正体が隠せればいいじゃないですか……」
 一時間前の自信はどこへやら、語尾も消え入るようだ。
 さんざん土産物屋をめぐったものの、顔を隠すマスクなどそうそう売っているものではなかった。
 デカいわりに無表情で、三人が同じ顔。正直不気味である。
 壁から三人の国王が生えている光景に、サラリーマンの一人が腰を抜かすほど驚いたが、三人にはそれが見えていなかった。視界はあまり広くない。
「よし、誰も居ないみたいだ。行くぞ」
 そそくさと階段に向かうリテミス。
 あとの二人もそれを追う。
 非常階段を登る大中小三人の国王に、買い物帰りの主婦が転びそうになるほど驚いたが、やはり三人にはそれが見えていなかった。
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Date:2014/04/29
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Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

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