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□ 図書館グーゴルプレックス □

自由な展開

 少年は、どうしよう土下座したほうがいいかな、とちらっと思ったが、頭からガブリは確実なのでやめておいた。
 かわりに、後ずさりして本棚に背中を預けた。
 あーあ、ここで俺の人生は終わりか。
 奇妙な諦めに似た感情が少年を支配しはじめた。この状況では諦めざるをえないだろう。
 なぜなら、ドラゴンはもう鼻先を一メートルまで近づけており、少年には逃げきる体力も無いからだ。走ったところで追いつかれてしまうのは火を見るより明らかだった。
 まあ、俺にしてはよくやったよ。
 観念して目をつむる。そして、待つ。
 最後の瞬間を。
 だが、その代わりにやって来たものがあった。
 ひゅー、と小さく何かが飛んでくる音が聞こえ、次の瞬間。
 ズドオン!! 
 突然の突風に、少年は横向きに吹っ飛ばされたのだ。
 数メートル離れたところにある本棚が爆発したのである。
『だーいじょーぶでーすかー!!』
 体に積もった紙やら本棚やらの破片をぱらぱらと落としながら上半身を起こす。
 謎の物体は手すりの向こう、床の真ん中あたりの本棚の上に立った人間から飛んで来たらしい。ドラゴンもそちらを向いてグルル……とうなっていた。
 思ったより小さい人影だった。どうやらサイズの合わない安全ヘルメットをかぶり、右手にスピーカーを持ち、左肩にロケットランチャーを担いでいるようだ。
 そして、その人影に少年は見覚えがあった。
 ここまで案内してくれた少女じゃないか! 
『すいませーん、少し外れちゃいましたー!』
「全然大丈夫ですよー、助かりましたー!」
 両手を振りながら、少年は心から少女に感謝していた。彼女が居なければそろそろ食道を抜けていたところなのだ。
 しかし、そのときドラゴンが雄たけびをあげ、少女に向けて空を突っ切って行った。
「危ない!」
 しかし少女は落ち着いてロケットランチャーを捨て。
 左手を天空に突き上げ。
 こう叫んだ。
「ブックマーーーン!! 来ーーーいっ!!」
 はっ? 
 少年がなんだそれと思った瞬間。
 本当にそれは来た。
 天井の破片と共に、人影がドラゴンの目の前に降ってきたのだった。
 
 
 どうやらバカでかいロボットのようだった。ドラゴンの倍にせまる大きさだ。
 ドラゴンは鉄の巨人に踏み潰されそうになり、危うく空中で急停止した。
 うわあ。
 なんていうか、助けてもらってアレだけども、と少年は考えた。
 さすがにこの展開は自由すぎやしませんか。
『さあこいバケモノ!』
 グイインガコオン!
 ロボットが駆動音を響かせながら両の拳を構え、ファイティングポーズを取る。
 いつの間にか少女が乗り込んだらしい。
『わ・た・し・が・造った正義のロボ[ブックマン]が相手になるぞ!』
 グポーン!
 鋳鉄製巨人の一つ目が赤く光る。
 あの子、なんか自分が造ったことを押すよな。
『どりゃああああ!』
 叫ぶなり、右ストレートを繰り出すロボット。ジェネレーターが膨大な電流を生み出し、腰や肩の間接にしこまれた超伝導モーターがうなりをあげ、構造材がきしんだ。
 大質量の右腕が空気の壁をぶちやぶり、ドラゴンに直撃する。
 ずがああん!!
 直撃。
 ドラゴンは頭から床に落ち、本棚をなぎたおしながら滑走し、止まった。
 見た目ほどダメージが無かったのか、本棚の破片を落としながらすぐに立ち上がり、一声鳴くなりロボットに飛びかかる。今度は左フックがドラゴンをとらえた。
 どがああん!!
 今度も頭から落ちたが、転がりながらも足でなんとか着地。今度は安易に飛びかかることなく、間合をとりつつしばらく様子を見る。
 しばらくけん制しあうドラゴンとロボット。
 グアアアアア! チェストオオオオオ!
 本棚を踏み潰しながら、うろうろとお互いの周りを回る。
 今度は先にしかけたのはロボットだった。
 ドラゴンに向けて走り出し、そのままの勢いで右の蹴りを当てようとする。
 全体重のかかった左足の骨格材料が悲鳴をあげ、右足が突き出される。
 しかし右足は空を切った。ドラゴンが意外と素早い動きで右にサイドステップし、それを避けたのだ。
 スキが出来たロボットの上半身に、ドラゴンが飛びつく。ロボットの頭にかぶりつき、噛みちぎろうとする。
 残念ながらロボットの頭は噛みちぎるには頑丈すぎたが、それは思わぬ効果をロボットにもたらした。ロボットの操縦席にはメインカメラの映像が写っており、そしてメインカメラはドラゴンの口にすっぽり飲み込まれていたからだ。
 つまり、少女はいきなり視界いっぱいに動くドラゴンの口内を見ることになったのだ。
『ひっ、うひゃああああああ!?』
 ロボットは先ほどまでの威勢はどこへやら、両腕を振り回しておたおたし始めた。
 ドラゴンの頭を両手でつかんでぐいぐい引きはがそうとするも、取れる気配が無い。
 パニックに陥り、後ろ向きに走り出した。
 とととと……と走り、なぜか急カーブ。
 それは少年の座っている方向を向いていた。
 少年は足の痛みも忘れ、全力で走りはじめた。
 一瞬後、カタマリとなったロボットとドラゴンが少年の居た場所に着弾した。
 
 
 少年は飛んだ。なんとか直撃は免れたが、もろもろの破片が彼よりも遠くへ飛んでいたことを考えると、ギリギリの距離だったのだろう。
 振り向くと、カタマリは壁にめりこみながら、まだもぞもぞと動いていた。
 まずはともかく、自分の無事を確かめる。
 身体をくまなく叩いてみる。
 よかった、怪我なし。とりあえず休憩しよう。
 その場に座りこむ。がんばれロボ。
 ポケットからタバコを取り出し、ライターで火をつける。
 ふうー。
 へんてこな一日だったなあ。
 と、そのとき。
 視界いっぱいにもぞもぞ動くドラゴンの表面に、文字がびっしり書き込まれている事にあらためて気づいた。
 つまり、おそらく紙。
 そして、自分の手にはライター。
 これは火。
 ためしに、手近の本に火をつけてみる。おお、思ったよりよく燃えますぞ。
 て、ことは、だ。
 少年はまたカタマリを見つめた。うん、このままほっといても事態がよくなるとは思えないし。仕方ないだろうな。
「すみませーん! すみませーん!」
 大声で少女を呼ぶ。まず、しなくてはならないことがある。
『な、な、な、なんでしょー!?』
 まだパニック中ながらも、少女は答えた。律儀な人でよかった。
「脱出できますかー?」
『え、ええ、なんとかー!』
「じゃあ脱出してくださーい!」
『な、なんでですかー?』
「ライター、使いますからー!!」
『え!?』
 少女は少しの間、とまどっているようだった。この図書館内で火が使われることなど、考えもしなかったに違いない。ロケット弾からも火は出なかったし。
 しかし間もなく、少年の方に鉄で出来たカプセルが飛び出してきた。
 ずしんと音を立てて着地すると、ハッチを開けて中から少女が出てくる。
「だ、脱出しましたー……」
「了解でーす」
 少年はこころおきなく、火のついた本をカタマリに投げた。
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Date:2014/04/29
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Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

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