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□ 我輩は猫探偵(ねこたん)である。 □

終幕

 事件から一ヶ月後。
 僕と先生は事務所の応接室で、今か今かとお客さんを待っている。
「あ、そうだ」
 僕は新聞から顔を上げて言った。
「そういえばあれから一月経つんですね。警察に捕まらなくて本当によかったですよ」
 先生は机で何かを書きながら、顔も上げずに答えた。
「そうだな。ロンドン大火記念塔は老朽化で片付けられたし、タワーブリッジはガス爆発ということになったしな」
「まあガス爆発はちょっと無理があるような気もしますけどね……さっきから何を書いてるんです?」
 僕が聞いたとたん、ばっ、と素早く机に腹ばいになる先生。
「何でもない。何でもないから気にしなくて良いぞ」
 いや、余計気になりますよそれ。
 
 コンコン。
 
 突然のノックに、僕たちはビクッ! と一瞬宙に浮いた。
 その後、小声で相談を始める。
「まさか、フロックハートが戻ってきたのか?」
「いえ、まさか……でも前も郵便屋さんに変装してましたし」

 コンコン!
 
 さっきよりも強い音。
 先生が覚悟を決めて、室内から呼びかけることにした。
「は、はーい! どなたでしょう!」
「わたしよわたし! 開けてよ!」
 大家さんでした。
 ふうう、と安堵の息を吐く僕たち。我ながら心臓が小さい。
 僕がドアに歩みより、ドアノブに手をかけ、開ける。
「はーい、どうぞ」
「やほー」
 片手を挙げて入ってくる大家さん。あれ、もう片方の手に何か持っているぞ。
「大家さん、その持ってるのって、なんですか?」
「ああ、この封筒? さっき郵便屋さんに会ってね、ついでに預かってきちゃった」
 ひらひらと振って見せる大家さん。
「へえ、何でしょうね?」
「よし、さっそく開けてみよう。頼んだ、ワット君」
「あー、はい」
 先生は猫なので、封筒を開けるのも一苦労なのである。
 
 
 ペーパーナイフで封筒を開け、先生の机で広げる。
「お、手紙だな。なになに? あ! ハクスリーさんからお礼の手紙だぞ!」
「え、ホントですか?」
「見せて見せて!」
 先生の後ろに駆け寄る僕たち。
「どうもありがとう、と書いてあるな。やはり、クリスタルもそうだが、犬のほうが心配だったようだ。あと、金銭的なお礼に関して……」
 ぱっ、と音がすると、机から手紙が消えていた。
「あれ? 手紙は? ……あ! 大家さん!」
「こら返さんか!」
 僕たちが伸ばした手を避けながら、器用にも手紙を読み進める大家さん。
「えーと、金銭的なお礼に関しては、同封の小切手で……」
 そこで、大家さんの目がまだ机の上に置いてあった封筒に注がれる。
 ガタガタッ!
 僕と先生が、机に乗っかるようにして腹ばいになった。
 うう、大家さんの視線が痛い。
「助手さん、トラヴァーズさん? なんで急に机にうつぶせになったのかしら?」
「そ、その、だな。えー」
 先生が出来るだけ大家さんと視線を合わせないようにしながら、苦し紛れの言い訳をでっち上げる。
「そう、これは訓練なんだ」
「訓練ん?」
 もう不信感しか配合されていない、大家さんの声。
「そうとも。突然誰かが窓から銃弾を撃ち込んできても大丈夫なように、常日頃から瞬間的に腹ばいになれるよう、訓練しているわけなのさ。な、ワット君?」
「え、ええ。本当、ロンドンも物騒になりましたよね」
「一ヶ月でそんなに物騒になんてなれるものかしら? まあ、いいわ。よい、しょ」
「あいたた」
 大家さんがごく自然に、僕を転がして封筒を取ってしまった。
「あ、ちょっと、ダメッ!」
「しまった、騙されなかったか!」
「騙されるかい!」
 残っていた封筒の中身を素早く抜き取る。もちろん小切手である。
「おー、結構もらってるわね」
 先生が突然、ゆらりと立ち上がった。片手に何かを構え、大家さんに向ける。
「よーし大家、そいつを机に置け。置いたらゆっくりと床に伏せろ。ゆっくりとだ!」
「いや、そんな見えない拳銃を突きつけられても困るわよ」
 若干戸惑い気味の突っ込みを入れると、大家さんは小切手をひらひらさせ、当然のように言い放った。
「では、これは没収します」
「ええええええ!?」
 僕と先生が同時に叫んだ。
 いや、こうなることがわかってたから机に腹ばいになったんですけどね。
「だって、もう三ヶ月分も家賃が払われてないんだもの。これでトントンなのよ」
「そんなー……」
 がっくりと肩を落とす先生。
 その様子に若干胸が痛んだのか、大家さんが仕方なさそうに口を開く。
「はあ、じゃあ条件があるわ。それを呑んでくれたら、これは返してあげてもいいわよ?」
「おお、なんだ、その条件とは?」
 先生が顔を上げる。
 異様に近い場所に大家さんの顔、そしてワキワキと指のよく動く両手があった。
「もちろん、トラヴァーズさんのフッカフカの身体を好きなだけ……」
「こ、断る!」
 先生が机を離脱するのと、大家さんが飛びかかるのは、ほぼ同時だった。
「こらー、待ちなさーい! フッカフカさせなさーい!」
「助けてくれー!」
 事務所内を所狭しと、ドタバタドタバタ走り回る大家さんと先生。
 ああ、すっかり普段通りに戻ったなあ、と僕は苦笑する。
 かさ。
「あれ、何か踏んだ。……これ、さっき先生が書いてた手紙だ。ん、お礼状?」
 それを読んだとたん、
「ぷ! ぷはははは!」
 僕は思わず笑ってしまった。
 手紙を持って、先生のところに走って行く。
「先生、先生! いつホームズさんにサインなんてもらったんですか!?」
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Date:2014/04/27
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Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

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