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□ 我輩は猫探偵(ねこたん)である。 □

猫探偵、悪漢との対決を決める

 気分を切り替えるため、大家さんが、ぱん、と両手を打ち合わせた。
「さてと。フロックハートの目的もわかったし……それでどうしましょうか、トラヴァーズさん、助手さん」
 わざとらしく笑いながら、僕たちに問いかける。
「やっぱり危ないし、このまま放っておきましょうか?」
 聞くまでも無いことだが、確認のためだ。
 先生が芝居がかった仕草で肩をすくめて、答える。
「そうだな、いい案かもしれない。だが、やはりハクスリーさんには恩義がある。犬を助けなければ恩をあだで返したことになるから、寝付きが悪くなるな。ついでに言えば」
 そこでちょっと言葉を切り、あくまでオマケだという風に付け加える。
「人類対人造人間の『世界大戦』が始まってしまっても、やはりちょっと気分が悪い」
 そこで僕の方を見る。
「ワット君の意見も聞こう。これ以上首を突っ込むのはやめておいた方がいいかな?」
 僕は間髪入れずに答えた。
「いえ、突っ込みましょう。犬が可哀想ですからね」
 その言葉に、先生が笑った。僕も笑った。大家さんも笑った。
 先生が真顔に戻ると、あごに手をやって考え始める。
「さて、じゃあ急いでフロックハートを探さないと。それに、化け物と戦う方法も考えなくてはな。とりあえず、さっきのエネルギー不足の問題から」
 ジリリリリン! ジリリリリン!
 だがその言葉は、急に鳴りだしたベルのような音で中断されてしまった。
 ディクソンさんが、あわててポケットから小箱を取り出す。
 見たことあると思ったら、一ヶ月前に魚の雨を降らせたときも使っていたヤツだ。
 小箱の表面を親指で押すと、ベル音は止んだ。
 突然、ディクソンさんが小箱を耳に押しつけ、こちらに背中を向ける。
「あ、すみません。そちらで進めててください」
 自然に僕たち三人の奇異の目が集まる。いったい何をやっているんだ、この人は?
「あー、もしもし!」
「うわ!?」
 ディクソンさんが思いがけず大声を出したので、驚いてしまった。
「うん、そうなんだ。ちょっと思ったより長引いてて、うん、だから夕食には遅れると思うから、先に食べてていいよ……時間? そうだな、三十分から一時間かな」
 それだけでは終わらず、そのままのトーンで独り言が続く。まるで見えない誰かと話しているとでも言わんばかりだ。
「ワット君、何をしてるんだ彼は?」
「わ、わかりません」
「わたし怖いわ……」
 僕たちの視線がだんだんと恐怖を帯びたものに変わっていく。
 そんな中、ようやくディクソンさんの独り言が終わった。
「うん、じゃあねー、愛してるよー。ふう終わりました、って! なんて顔で見られてるんですか僕は。どうかしました?」
 僕たちはちょっともめたが、代表として先生が恐る恐る話しかける。
「いえその、突然大声で独り言を始められたので……なにが起きたのかと心配になって」
 ディクソンさんは一瞬ぽかんとしたが、弾けるように笑い出した。
「ああ、あははは! すみませんご心配おかけして。これはいわば電話なんです。家内から電話がかかってきたので、それに出たまでなんですよ」
 大家さんが不信感を剥きだしにして、謎の小箱を眺める。
「電話ー? だって線が無いわよ? それに小さいし」
「電磁波で通信しているんです。あれ、電磁波は地球でも発見されてましたよね?」
 ああ、なんか聞いたことがあるな、と僕は思った。
「ええ、でもそれを使った通信は発明されて間も無いんです」
 結構最近の新聞記事だ。電磁波による通信実験が成功したとかなんとか。
 僕の賛同を得て、ディクソンさんがほっと息をついた。また余計な知識を持ち込んでしまったのではないかと思って、不安だったのだろう。
 そうかあ、確かに考えてみれば、それを応用すれば電話にだって出来るわけだ。
 僕が感心している横で先生がずっと考え込んでいたが、ややあって口を開いた。
「あの、もしかしてなんですが、それで電力は送れますか?」
「電力?」
 ディクソンさんがちょっと小箱をもてあそんで考えてみてから、答える。
「いやー、ちょっとこれでは電波が弱いので、電力までは送れないと思います」
 はああ、とガックリ肩を落とす僕たち三人。
「あの、どうかしましたか?」
 先生が力なく手を振る。
「いえ、忘れてください。化け物のエネルギー不足の問題を解消できると思ったんですが」「化け物? ……ちょっと、聞かせてもらっていいですか」
 ちょっと迷ったが、僕が説明することにする。
「昨夜のことなんですが、謎の顔色の悪い子供に襲われて、犬を奪われたんです……」


「……というのが、大体今までに起こったことです」
 説明終了。
「なるほど。膨大な電力がどこから来ているか、という話なんですね」
 考え込むディクソンさんに、先生が意外そうな声を上げる。
「知恵を貸してくださるんですか、ディクソンさん!? 協定違反では?」
 ディクソンさんが顔を上げて、笑う。
「あはは、元はといえば、クリスタルを落としたりした僕の落ち度ですから。その分を取り戻すくらいなら、構わないでしょう」
 さっきもぽろっと電磁波通信の応用例を出してしまっていたが、言いますまい。
「確かにバッテリーでも可能かもしれませんが、そこまで莫大な容量でしかも小さいものとなると、造るには微細加工技術が絶対に必要なんです」
 大家さんの持つクリスタルを指差す。
「リーヴィスさんの持っている、そのクリスタルを造れるような技術です」
「そんなもんあるわけない」
 先生が首を振る。
「ええ。例えその原理を知っていたとしても、微細加工用の施設というものは、一朝一夕に造る事は出来ません。まず加工機械を造らなければならないのですが、その加工機械を造るための道具を造れる段階にすら、地球の科学技術は及んでいないのです。新しい産業分野が生まれるのを待たないとダメですね」
 ふうう。再び、ガックリと肩を落とす僕たち三人。
「ああ、落ち込まないでください……なので思ったんですが、おそらく『無線送電』を使っているんじゃないかなーって」
 予想外の好感触に、ぱっと顔を上げる僕たち。
「それなら可能なんですか? ディクソンさん」
 先生がディクソンさんに期待の眼差しを向ける。
「ええ、火星には電波ではないのですが、『磁界共鳴』という現象を用いて電力を送る技術があります。もし大型発電機と送電用の装置が準備出来れば、化け物さんには受電用の装置をとりつけるだけでいい」
「その『送電用の装置』とか『受電用の装置』を造るのが難しいのでは?」
「いえ、基本的には輪っかにして巻いた銅線ですから、まあそこまでは……開けたところで近い場所なら、そこそこ受電できると……天才なんですよね、そのフロックハートさん? だったら造れる……かも、と、思います、が」
 なんだか最後のほうが心許ないが、先生の表情は満足げだ。
 ふーむ、とうなる先生。満足のため息のようにも聞こえる。
「確かに『無線送電』を使っていると考えれば、エネルギーの説明はつく。遠く離れた地球と火星で、偶然同じ装置が、偶然同じ時期に発明される確率は極めて低い。ということは、フロックハートが『賢者の石』……ホロメモリー・クリスタルを手に入れ、そこから火星の技術を入手したと考える方が自然だな」
「ということは、先生」
「ああ。あの化け物は火星の高度な技術で造られている。もはや疑問の余地は無い」
 ディクソンさんが、びく、と身体を震わせた。
「ぼ、僕が落としたのは一個だけですよ!?」
 いえ、聞いてません。先生がフォローを入れた。
「大丈夫、疑ってませんよ。大体、フロックハートがクリスタルを手に入れた時期はかなり前ですから。火星人が以前からたくさん地球に来ているなら、クリスタルの一、二個は落としていて不思議はありません」
 ディクソンさんが安堵のため息をもらす。でも今度から気をつけてくださいね。
 
 
「さて、じゃあどうしましょうか先生?」
「もちろん、決まっているだろう。こちらから仕掛ける!」
「ええ!?」
 僕はびっくりしてちょっとのけぞってしまった。
「ど、どうするつもりなんですか」
 なんだかさっきから、すごく危ない橋を渡っているような感覚がある。
「簡単だよ。向こうから来てもらってばかりで悪いから、今度はこちらから出向いてやろうじゃないか」
「ええー!?」
 予感的中、危ない橋ど真ん中だ。
「なんでわざわざ!」
「先制攻撃で事を有利に運ぶためさ。この事務所に脅し以上の何も来ていないということは、クリスタルがここにあるとフロックハートは知らないってことだ。おそらく今頃、どこで落としたのか必死で探し回っているに違いない。もし大家が盗んだのだとバレてしまえば」
 そこで大家さんが素早く口をはさむ。
「盗んでないってば」
 先生はちょっと考えて、スルーすることに決め、話を続けた。
「図らずも偶然に、自然のイタズラで大家の手にあるのだとバレてしまえば、この事務所は襲撃されるぞ。今度こそ間違いなく皆殺しにされる。こちらから出向いた方がむしろ安全だ」
 本当にそうかなあ、と僕は腕を組んで考えてみる。
「大体、どこにフロックハートが居るのかわかるんですか?」
「ああ、見当はついてる」
「えっ」
 失礼ながらも、僕は驚きの声を漏らしてしまった。
「どこなんですか?」
 先生はイタズラっぽく笑うと、指を一本立て、こう言った。
「もう一度、一昨日作成した地図を見てみたまえ。あとはさっきディクソンさんが言った事を思い出せばわかる」
 僕は頭をひねったが、これはそこまで難しい話ではなかったことが後にわかる。
「さてそうと決まれば、まずは準備だ。手始めに……ベーコンが要る。大家、買ってくれ」
「ええ!? なんでわたしが!」
 突然話を振られて驚く大家さん。
「金が無いんだよ!」
 大声で情けない事実を暴露する先生。
 とにかく、僕たちはフロックハートに対して反撃をしかけることになったのだった。
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Date:2014/04/27
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Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

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