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□ 我輩は猫探偵(ねこたん)である。 □

猫探偵に贈り物が届く

「きっかけは、ある人物から手紙が来たことだ。なんと……驚くなよ。その出身が」
 
 コンコン!
 
 先生が説明を始めようとしたとたん、応接間のドアがノックされた。
 勢いを削がれてしまった先生が、恨めしそうにそちらを見やる。
「おいおい、誰だ? タイミングの悪い」
「まさか、化け物がここに!」
 思わず身構える僕。
「え、そうなの!?」
 いたたたた。すみません大家さん、僕の腕をつかまないで下さい。
 だが先生は、迷うことなくトコトコとドアに向かう。
「もしヤツなら、ノックの代わりにドアをぶち破ってるだろうよ。はい、トラヴァーズです」
 ドアの向こうからくぐもった声が聞こえた。
「お届け物です。チャールズ・アレックス・トラヴァーズ様に小包が届いています」
 なんだ、昨日と同じ郵便屋さんだ。僕たちはホッと胸をなで下ろした。
 おっと、なで下ろしてる場合じゃない。ドアを開けなくちゃ。


「ありがとうございましたー」
 去っていく郵便屋さんに頭を下げ、小包を手に取って眺めてみる。
「女性ですよね? これの差出人のひと。先生のお知り合いですか?」
「いや、全然知らん。でもまあ、とにかく開けてみよう。まさか開けたとたんにドカン! というわけでもあるまい」
 先生の言うとおり、とにかく中を見なければ始まらない。
 包装紙をはぎとり、中身を露出させる。
 すると出てきたのは……おや?
「先生、中から変な箱が出てきましたけど」
 怪しい。この箱はなんか怪しい。
「その箱、大きなリボンなんかかけちゃって、まるでプレゼントみたいね?」
 大家さんの言うとおり、箱には赤いリボンがかけてあった。しかも不必要なまでに大きい。やはり怪しい。怪しすぎる。
「おや、手紙も入ってたぞ。どれどれ」
 包装紙の中に残っていた手紙を先生が取り上げ、広げて読み始める。
「えー、『猫探偵さまへ』……ブツブツ……なっ!?」
 数行読んだところで、先生が突然、カチコチに固まった。
「あれ? どうしたんですか先生! 先生!」
「猫ちゃん! トラヴァーズさん!」
 僕と大家さんが呼びかけても揺さぶっても、全く反応が無い。
 こちらの声が聞こえていないようだ。立ったまま気絶だなんて、ただ事じゃないぞ。
 だが、僕が気付けのアンモニアを用意しようと立ち上がりかけたとき。
「く、くく、くっくっく」
 今度は突然押し殺した声で笑い始める。
 なんだなんだ、先生の様子がおかしいぞ。変な物でも食べさせちゃったかな?
 そして笑っていた先生は取り澄ました表情になり、僕にこう言った。
「どうやら、プレゼントらしい。俺の熱烈なファンだそうだ」
「ファンー!?」
 僕は失礼ながら、思い切り驚いてしまう。
「ファンー!?」
 大家さんも同様。やっぱり驚きますよね。
 だが先生は怒るどころか、こみ上げる笑いを押し殺しながら首を振る。
「ときに困ったものだな、ファンという存在も。これから大事な話をしようという時にな」
 いや、その様子だと、話の事なんて頭から吹っ飛んじゃってるでしょう。
「猫ちゃんって、実はモテるの?」
 怪訝な顔の大家さんが、小声で僕に聞いてくる。
「いえ、モテません」
 僕は即答した。


「女性からプレゼントが届くなんて、『猫探偵事務所』設立以来一度たりとも無かったことです。しかも先生は子供には大人気なんですが、大人の女性には相手にもされません」
 その理由はまあ、言わずもがなだ。せめて外見が人間なら可能性はあるのだが。
「でも猫ちゃんはさっきから、『またプレゼントか、弱ったな』って顔をしてるわよ?」
「そう装ってますが、内心はドキドキワクワクですよ」
 二人して、先生を見やる。箱に耳を押しつけて、中身を推し量っているようだ。
「ふむ、この音……時計か! さすがだな、俺のファンというだけあって、俺の趣味を良く理解しているようだ」
「ねえねえ、猫ちゃんって時計好きなの?」
「いえ、特には」
 僕はまたも即答した。
「ワット君!」
「あ、はい!?」
 突然呼びかけられたので、心臓がどきんと跳ねる。やばい、怒られるのかな。
「この箱を開けてくれないか。残念ながら、猫の身では開けられないのだ」
「あー、はい」
 僕は箱を手に取り、リボンを解いた。
「それにしても、この箱ずいぶん重いですよ?」
「良い時計が入っているのだろう。凝った機構なら重くもなるさ」
 そういうものかな、と思いながら、箱を開ける。
 出てきたのは……なんだかよくわからない、ヘンテコな物体だった。
「時計ですか? コレ」
「時計だろう。ほら、文字盤があるじゃないか」
「でも、文字盤の下に謎の茶色い管が四本も並んでくっついてますよ」
「床に置いたときに時計を安定させるためじゃないか?」
「いえ、それにしては管が大きすぎます。この管がメインなんじゃないですか?」
「この管が? 言われてみれば確かに……ふーむ、なんだコレは。芸術作品か?」
 腕を組んで考え込む先生。
 それにしても、なんかこの茶色い管、どこかで見たような……。
 さっきから時計がコチコチとうるさくて、なかなか思い出せない。
 そこで大家さんが、誰にともなくポツリと漏らした。
「あれ、なんか火薬の匂いしない? どこからかしら」
 すんすん、と部屋の空気を嗅いでみる大家さん。
 僕の背筋が、さーっと寒くなっていった。


 いや、まさか。まさかとは思うけど。
「せ、先生。離れましょう」
「ん? どこからだね?」
 先生は相変わらず、呑気にも茶色い管を触ったり叩いたりしている。
「先生それ触らないで! 離れましょう!」
「うわっ?」
 僕は先生の脇の辺りを持って、一緒に部屋の隅へ避難した。
「なんだ急に持ち上げたりして。あのプレゼントがどうしたというんだ?」
「えーとー、いや、たぶんなんですが」
 出来れば、この先は言いたくない。予想が当たっていて欲しくない。
「ああ! これから匂ってたんだわ」
「げっ!」
 僕は思わず声を上げていた。大家さんがプレゼントを持ってしまっている!
「大家さん! それ離して! 捨ててください!」
「え? なんで?」
「捨てるだと!?」
 聞き捨てならん、と僕の足下から先生の説教が聞こえ始めた。
「なんだねワット君! さっきから俺を突然持ち上げたり、プレゼントを捨てろと言ったり! 女性からの心のこもったプレゼントを捨てるだなどと、きみは」
「先生! あれ爆弾ですよ!」
 目をまん丸くして、先生は黙り込んだ。
 爆弾を抱えたまま、大家さんも固まってしまった。
 
 
「なんで、そう思うんだね、ワット君」
 先生が一言一言を区切りながら、ゆっくりと僕に質問した。
 僕もゆっくりと答える。
「どう見ても、あの茶色い管はダイナマイトですよ。で、そこからワイヤーが伸びて、時計につながってます。時計が所定の時刻になると電気が通るようになって、ワイヤーを通じてダイナマイトを着火させる仕組みです」
「時限爆弾か」
「そうです」
 大家さんが半泣きになりながら、こちらを見た。
「こ、これどうすればいいのよ? どうやったら止まるの?」
「時計を見てください! あとどのくらいで時計の針が重なりそうですか?」
「え、えーと、さ、三十秒くらい!」
 がたがたっ。
 僕たちは一瞬で、さらに遠くへ移動する。無意識だから仕方ない。
「ちょ。ちょっと、逃げないでよー!」
 げげ、爆弾を抱えたまま、大家さんがこっちに走ってくる!
「わー! 来るな大家ッ!」
「こ、こっち来ないでください!」
 失礼ながら、やっぱり逃げてしまう。
「逃げないでってばー!」
「来ないでください!」
「帰れ! もう帰れ大家!」
 ドタバタドタバタと、室内を走り回る僕たち。
「わーん! これパス!」
 なんと、爆弾が飛んできて、僕の手元にスポッと収まった。
「い、いいい要らないですよこんなの! パス!」
 大家さんに投げ返す。
「わたしだって要らないわよ! パス!」
「わー! なんで戻すんですか! パス!」
「パス!」
「パース!」
「いいかげんにせんかお前ら!」
 先生の一喝で、僕たちはパスの応酬を止めた。
「大家! それを投げろ! 真上だ!」
「真上!?」
「早く!」
 大家さんは言われたとおりに、爆弾を投げ上げた。
 ゴガアン!
 結果、天井に多少ヒビが入った。うわ、すごい力。
「違う! 室内じゃない、外に身体を出して投げろ! 早く!」
「わかったわよ、もう!」
 部屋の窓から、ごそごそと上半身を外に出す大家さん。
「馬鹿力を全開にしろ、大家!」
「がんばってください! いつも通りやれば大丈夫です!」
「あなたたち覚えてなさいよ……どおおりゃああああ!!」
 ブンッ!
 爆弾はロンドンの空に高く、高く飛んだ。そして、
 ズドオオオオン!!
 空に満開の炎の花を咲かせた。
 
 
「助かったー……」
 思わず床にへたりこんでしまう、僕と大家さん。
「おい、ワット君。手紙がもうひとつ入っていたぞ」
「え、本当ですか?」
 先生が小さな紙切れを振って見せる。注意しなければ見落としそうな大きさだ。
「『そちらが邪魔をしなければ、こちらも邪魔をする気はない』だそうだ」
「警告、というわけですね」
「誰からなの?」
「決まってるだろう」
 手紙を持ちながら、その黒幕に静かな怒りを燃やす先生。
「どうします、先生?」
「ふん、それも決まってる」
 言いながら、手紙を床に投げ捨てる。
「そういうわけにいくか。よし、ちょっと出かけてくる」
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Date:2014/04/27
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Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

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