明日から書く。

□ スポンサー広告 □

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

*    *    *

Information

□ 我輩は猫探偵(ねこたん)である。 □

猫探偵とその助手、おおいに後悔する

 僕たちはアパートに戻ってきていた。
 大家さんの部屋は開かなかったので、僕のベッドに大家さんを寝かせることになった。
 寝かせたあと布団をかけて、先生の部屋に戻る。
 先生は机にひじをついて、祈るように何かを考えていた。
「どうだ、大家は」
「ええ、大分うなされてます」
「……そうだろうな。とっくに手なずけたと思っていた日常、この世界が突然牙をむいて、危険で理解不能な怪物に変わってしまったんだ。ロンドンの街中で、まるで悪夢から抜け出てきたような怪物に襲われて」
 悔しそうに歯がみする音が聞こえる。
「一歩間違えば、危ないところだったんだからな」
 先生もだいぶ疲れているように見える。
「紅茶でも淹れましょうか、先生」
「ああ、ありがとう。頼む」
 キッチンに向かう僕を、先生が呼び止めた。
「そうだ、ワット君。大家の分も頼む。まだ飲めないかもしれないが、一応持っていって、枕元にでも置いておいてやってくれ。起きたら飲むかもしれん」
「はい、わかりました」
 僕はキッチンでお湯をわかしている間、こう考えていた。
 もしあそこで大家さんが犬を放さなければ、どうなっていただろうか?
 僕は唇を引き締め、先生にわからないように、そっと拳を壁に打ち付けた。
 
 
 先生用の小さいカップ(計量カップ)にミルクをちょっと入れて、その上から茶こし越しにティーポットからの紅茶を注ぎ、先生に渡す。
「はい、先生」
「ありがとう」
 お盆の上に置いた別のカップ(普通のカップ)にも、同じ方法で紅茶を注ぎ入れる。
「それじゃ、大家さんに持っていきます」
 お盆を持ち上げて、ドアまで歩き出す。
「ああ、頼んだ。すまないな、俺が持って行ければいいんだが」
「いえ、気にしないでください」
 僕は思った。本当に先生が謝りたいのは、僕ではない。
 お盆を片手で持ってドアノブを開け、僕の部屋に向かう。
 部屋のドアを開けると、ベッドに大家さんが眠っているのが見えた。
「よいしょ、と。ここでいいかな? これ、起きたら飲んでくださいね」
 ベッドサイドの机にお盆ごと置いて、立ち去ることにする。
「あら、助手さん……?」
 しまった、起こしてしまったようだ。
「ああ、ダメですよ、寝てないと」
 頭を押さえながら、大家さんがベッドに座り直す。
「あたた……いえ、平気よ」
 自分を元気づけるように、ふう、と強めに息を吐き出すと、言った。
「ちょっと疲れただけ。猫ちゃん起きてる?」
 
 
「おお、大家!」
 先生の部屋に戻ると、先生がぱっと顔を上げた。
「もう、身体の方は大丈夫なのか?」
 大家さんに心配そうな声をかける。
「ええ、ちょっとショックだったのと、疲れが出ただけよ。寝たら治ったわ」
「本当に大丈夫か? 痛いところとか無いのか?」
「本当よ。どこも痛くないわ」
「本当に本当か? 無理しなくていいんだぞ、どこか悪かったら遠慮無く医者に」
「大丈夫だったら! もう」
 くすくすと笑い出す大家さん。
「あなたがそんなに心配してくれるなんて思わなかったわ、トラヴァーズさん」
「う、まあ、な。今回の件は、俺の責任だからな」
 とても顔向けなど出来ないといった様子で、目を伏せる。
「本当にすまなかった」
「いいえ、悪いのはこっちだわ。あなたたちに無理やり付いて行ったんですもの」
 大家さんは頭を振ると、先生をまっすぐに見つめた。
「ねえ、今度こそ……本当のことを話してくれるわよね?」
 先生が目を上げ、大家さんと見つめ合う。
 だがすぐに視線をそらすと、言った。
「知らないほうがいい。これ以上深入りすれば、何かしら別の事件に巻き込まれかねない。そして、また危険な目にあわないとも限らないんだ。今回のように」
「もう十分、深入りしてしまっているわ。とっくに引き返せないところまでね。ほら、この腕のアザ見て」
 大家さんが袖をまくって、手首とひじの間に出来たアザを見せる。
 化け物と犬の取り合いをしたとき、化け物が無理やり大家さんの腕をはがそうとしたので、アザになったのだろう。
「このアザに誓って、もう疑ったりしない。何を言われたって、信じるわ」
 そう言いながら、大家さんが笑う。
 先生が苦しげな長いため息をつき、おでこを両手で支えて、どうするべきか考え始めた。
 でも僕は、もう結論は出ていると思う。
「先生」
 言う前にちょっとだけ、自分の胸の内を確かめる。大丈夫、これでいいはずだ。
「もう話しても、いいと思います。それどころか、知っていたほうが危険に対処しやすいし、逆に安全じゃないでしょうか」
 先生がもう一度長いため息を吐くと、背中を伸ばした。
「そう、だな。話したほうがいいのだろうな。洗いざらい、世界の真実というやつを」
スポンサーサイト

*    *    *

Information

Date:2014/04/27
Trackback:0
Comment:0
Thema:オリジナル小説
Janre:小説・文学

Comment

コメントの投稿








 ブログ管理者以外には秘密にする

Trackback

TrackbackUrl:http://fluxcapacitor121.blog.fc2.com/tb.php/16-590537e5
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。