明日から書く。

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□ ゾンビ同居中。 □

【#6】悪魔の棲む布団

 夜の西田井家。
「さーて、寝ますかね」
 うーん、と伸びをしながら西田井は言った。
 明日は休日だとはいえ、特に深夜まで起きている用事もない。
 加えて、板石がロメ子の存在を秘密にすると(若干馬鹿馬鹿しそうに)誓って帰ったいま、今日一日の疲れがどっと出てきているのだ。
「そうですねえ。あっ」
 テレビゲームを終了させていたロメ子が何かに気付き、西田井を振り向いた。
「あの、どこで寝ましょう?」
「え? あー……」
 西田井は頭を抱えた。西田井家は六畳一間。
 布団は一枚しか敷けないのだ。
 昨夜はロメ子が起きて座っていたため(部屋の端っこに寄ってもらって)布団を敷けたが、今日は二人とも寝るとなると、うーむ。
 ロメ子がなぜか赤い(?)ほっぺたに両手を添えながら、目を閉じて言った。
「あの、添い寝、ですかね……?」
「いやー、それ以外の方法を探しましょう」
 ひらひらと手を振りながら、あっけらかんと言う西田井。
 ちなみに高校時代のあだ名は「朴念仁(ぼくねんじん)」。決して格闘ゲームの木で出来たキャラクターでは無い。
 両手を床に付いてガックリとうなだれるロメ子の様子を不思議に思いつつ、西田井は考え始める。
 とりあえず布団を二つ敷く余裕は、床には無い。約一枚半といったところか。
 一応予備の布団があるにはあるが、これでは何のために押し入れにしまってあるのかわからない。
「ん?」
 西田井は押し入れを見た。
 
 
 
第六話【悪魔の棲む布団】
 
 
 
「うーん……うーん……」
 西田井庄二はまぶたを開けた。
 六畳一間の部屋に、ロメ子のうなされる声が響いている。
 どうやら、押し入れのふすまの向こうから聞こえてくるようだ。
「た、たす……助けて……ううーん」
 よほど怖い夢を見ているらしい。
「や、ヤツが来る……来るう……やめ、て……やめ……」
 ちょっと泣きが入ってきた。
 やはり、ドラ○もんよろしく押し入れで寝るというアイデアは無理があったか。
 相当寝苦しいに違いない。
(こりゃ、ちょっと起こした方がいいかな)
 西田井は身体を起こし、ロメ子の寝ている押し入れを開ける。
 ロメ子と目が合った。
「ひいっ!?」
 が、パジャマを着たロメ子は西田井に気づかない。
 まぶたを閉じるどころか、逆に全開にして寝ているらしい。
「う、うー、ううー……ヤツが来るううー」
 そのまま、うわごとをつぶやく。
 西田井は戦慄した。
 やだ、これすごい怖い。
 ギョロッ!
 ロメ子の黒目(灰色)が、突然右方向にめいっぱい移動した。
 思わずびくっ、と後ずさる西田井。
 ギョロッ!
 今度は左。
 ギョロギョロッ!
 素早く右、左。
 そして、黒目が水平方向に激しく往復し始めた。
 ギョロギョロギョロギョロギョロギョロギョロギョロギョロギョロギョロギョロ!
 合わせて、うわごとも聞こえる。
「ううううううううあああああああああああ」
 西田井は腰を抜かした。人生初の出来事であった。
 
 
(間違いない、憑かれている! ロメ子さんは悪魔に憑かれている!)
 西田井は床に座り込みながらも、自分にエクソシストの資格が無いことを悔やんだ。
 そもそもそんな資格があるのかも不明だが。
 ちなみに、ロメ子の黒目が素早く移動する現象は極めて正常な、誰にでも起きるものである。
 これは「急速眼球運動」と呼ばれ、身体が眠っているが脳は起きている状態、「レム睡眠」中に観察される。夢もこのときに見ることが多い。
 逆に脳は眠っているが身体が起きている状態を「ノンレム睡眠」と呼び、睡眠中はレム睡眠とノンレム睡眠が交互に現れる。
 ただし、大体の人間(というか大体の陸生哺乳類)はまぶたを閉じて眠る。
 西田井は部屋を見回して聖書を探し、そんなもの始めから無かったと思い出して買っておけば良かったと後悔し、続いて冷蔵庫の上にニンニクが置いてあるのに目を留めた。
 おぼつかない足取りでなんとか立ち上がり、冷蔵庫に向かう。
 いつもより何十倍も遠いように思える道のりを、一歩一歩着実に進んでいく。
(ロメ子さんを助けなければ……!)
 スーパーで買った時のネットに入ったままのニンニクを掴み、押し入れに引き返す。
(そうだ、まだ必要な物がある)
 引き返す途中で机の上のペン立てをひっつかみ、さらに引き出しを開け、必要な道具を物色し始める。
 全ては同居人のロメ子を救う、ただそれだけのために。
 
 
「ブツブツブツ。ブツブツブツ」
 ロメ子は目を覚ました(目はずっと開いているが)。
 なんだか、耳元で変な声がずっと聞こえている。
 男の声のようだ。
 ぼんやりしていた視界のピントが合ってくるにつれて、それが西田井の声であるとわかった。
「あれえ、西田井さ……!?」
 ロメ子は戦慄した。
 西田井がなぜかロメ子に覆い被さるように立っている。表情は暗くて良く見えない。
 そして、ニンニクの束を右手に持ち、十字架の形にゴムで固定したペンを左手に持ち、さらに頭にろうそくを縛って止めていて、炎が赤々と燃えていた。
 口元からは、お経のような抑揚の無い文句がまるで川のように流れ続けている。
「……はんにゃはらみったじ しょうけんごうんかいくう どいっさいくやく しゃりし しきふいくう くうふいしき しきそくぜくう くうそくぜしき じゅそうぎょうしきやくぶにょぜ しゃりし ぜしょうほう……」
 怯えるロメ子に構わず、お経はさらにヒートアップしていく。
「えはんにゃはらみったこ しんむけいげ むけいげこ むうくふ おんりいっさいてんどうむそう くうぎょうねはん……」
 音程が上がっていき、西田井のひたいに汗が光っているのが見えた。
(に、西田井さんが悪霊に取り憑かれている!)
 ロメ子は恐怖で金縛りのようになりながらも、自分に神主の資格が無いことを悔やんだ。
 ああ、神道系の大学に入学していればよかった。
 その間に、お経はラストスパートに入っていた。
「ぎゃてい ぎゃてい はらぎゃてい はらそうぎゃてい ぼじそわか はんにゃしんぎょう……かーっ!!」
「ひいいっ!?」
 西田井が突然大声を出したので、ロメ子の金縛りが解けた。
 反射的に、西田井の腹に右ストレートを撃ち込む。
 ズドン!
「おぶうっ!」
 床に崩れ落ちる西田井。
 ロメ子は押し入れから飛び出るとファイティングポーズを取り、西田井に向けてこう言った。
「かかってこい、悪霊めえっ!」
 西田井がゆらりと立ち上がり、くくく、と笑う。
「いいだろう、この悪魔め。思い知らせてくれる……!」
 こうして二人は血みどろの殴り合いを始めた。
 全ては相手を治すために、悪魔と悪霊から救い出すために。
 
 
 
 
 一時間後。
「いやー、わたし何故か豆腐になっちゃってて、そこにタイラントが急に襲ってきたので、ナイフを振った回数を数えてラリアットを避けて……さらにナイフで滅多斬りにして倒したところまでは覚えてるんですけど」
 てへへ、と頭に手を置いて笑うロメ子。
「圧勝じゃないですか」
 どこにうなされる要素があったんだろう、と鼻血を拭きながら西田井は思った。
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Date:2014/05/20
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