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【#4】六畳間の中心でメーンと叫ぶ

 舞台の説明をしていなかったので、ここでまとめて解説を加えておくことにする。
 読むのが面倒だという方は、あと十七行程度読み飛ばして頂きたく思います。
 
 桑潟県(くわがたけん)、加尾長市(かおながし)。
 本州日本海側に位置する加尾長市は合併を繰り返した結果広大な面積を持ち、県内第二位の人口を擁する。国内有数の豪雪地帯であり、毎年大規模な花火大会が行われることでも有名である。
 さらに言えば、全国にたった二校しかない「技術科学大学」が設置されていることでも(一部の人間には)良く知られている。
 
 市の郊外にある、木造一戸建ての学生専用下宿「知苑荘(ちえんそう)」。
 ここには「加尾長技術科学大学」に通う学生が一階と二階に別れて、総勢八名ほど住んでいる。
 本編の主人公である「西田井庄二(にしたい しょうじ)」も、その二階の一部屋を借りて日々暮らしている。
 ちなみに、間取りは六畳一間で設備はキッチンのみ。風呂とトイレ、洗濯機は全室共同である。
 多少不便だが、文句はない。大学に近いし、エアコンも付いているし、大家さんが毎朝雪かきをして道を作ってくれるし、何より家賃がとても安い。
 東京近辺に住んでいる方には信じられないだろうが、上記の条件ならば、一ヶ月の家賃は二万円を切る。本当である。
 
 西田井の部屋は長方形をしていて、片側にはキッチン、反対側には押し入れがある。
 その間には畳が敷かれ、出入り口のドア(木製)が設置され、冷蔵庫・本棚・勉強机・こたつ・テレビデオ(ビデオ部分はあまり使わない)・ゲーム機・ノートパソコンなどが置かれている。キッチンと机のそばには大きな窓がある。
 そして、こたつには「蛆沸ロメ子(うじわき ろめこ)」なる謎の少女が入り、ゲームに熱中している。
 
 説明は以上である。おつかれさまでした。
 
 
 
 
「うわ、俺もう支度しないと!」
 徹夜でゲームを続けていたロメ子を呆れながら眺めていた西田井が、携帯電話の表示を見るなり叫んだ。
「え、出かけちゃうんですか?」
 油断なくゲームをポーズ画面にしつつ、ロメ子が西田井を振り返る。
「ええ、大学があるので」
 いかに昨晩身元不明、人間であるかどうかもよく分からない同居人が出来たといえども、平日には学校に行かなければならない。
「どのくらいの間ですか……?」
 子犬のような震える眼差し(ただし死んでいる)で西田井を見つめるロメ子。
「たぶん夕方までかかりますけど……あー、たぶん七時は過ぎますね」
 研究を終えたあと、研究室のメンバーでご飯を食べる事になっていたのだ。
「そ、そんな」
 ふらふらとロメ子が畳に崩れ落ちる。
 西田井はその様子を見て、ちょっと後ろめたさを覚えた。
 自分の居ない間、ロメ子は部屋にたったひとりで取り残されるわけだ。
「ロメ子さん、ちょっと寂しいかもしれませんけど……」
「いえ、というよりヒマです! ゲームだけでは間が持ちません!」
 即答だった。
 そうだね確かにね、と西田井はため息をもらす。
 ていうか何しに来たんだアンタは。
 ちょっと考えて、机の上に置いてあるCDプレイヤーをロメ子に渡した。
「これで、音楽が聴けますから。あとは漫画もありますし」
 本棚を指し示す。だがロメ子は、渡されたCDプレイヤーをさっそくひっくり返してしまっていた。
 西田井は本棚から適当にCDを抜き取り、プレイヤーにセットし、再生する。
 ロメ子にヘッドフォンを渡し、耳に着けてもらう。
 じわじわと驚愕の表情を浮かべるロメ子。
「い、今の、もしかしてレコードですか?」
「レ……」
 絶句する西田井だが、もうあまり時間が無い。
「ええ、針の要らないレコードなんですよ」
 詳しい説明は帰ってからしよう、と西田井は思った。
「すごーい! さすが東京は進んでますね!」
「いえ、ここ東京じゃないです」
 頭が痛くなってきたが、もう時間が無い。
 とりあえず一通りの説明をして、(ロメ子には外に出てもらい)着替えを済ませて、布団を畳んで押し入れにしまって、西田井は下宿を飛び出した。
 ぽつんと部屋に取り残されるロメ子。
「演歌……は無いみたい。困ったなあ」
 CDのジャケットを眺めながら、こんな新しい音楽は分からんわい、とロメ子は頭をかいた。



第四話【六畳間の中心でメーンと叫ぶ】



 お昼休み。
 西田井は学食で大学名物「油そば」をすすりながら、ひとり考えていた。
(いったい、あの少女は何者なんだ? なんで俺の部屋に来たんだ?)
 そういえば、「ロメ子」という名前以外は完全に正体不明、動機不明である。
 なんだか聞くタイミングを逃し続けてきたら、今に至ってしまった。
「くそう、俺が生物系だったらなあ。卒研の研究対象にして、全世界を震撼させてくれるのに」
「生物系だったら何だって?」
「うわっと」
 背後にうどんを載せたトレーを持って立っていたのは、同じ研究室の板石(いたいし)であった。
「いやー、別に、ははは」
「まあ、気持ちはわかるけどなー」
 どっこいしょ、と西田井の隣に座りながら、板石は言った。
「白衣ってカッコいいよなあ。俺たちじゃ着る機会がねえもん」
 よかった適当に勘違いしてくれた、と西田井は気づかれないように息をつく。
「まあ、本人達に言わせるとアレ、思ったより汚いって話だけどね」
 実験のときに羽織るものなのだから、考えてみれば当たり前だが。
 大学の廊下を白衣姿でさっそうと歩く――というのは、実際にその立場になった人間以外が共通して一度は憧れる姿なのだ。
「そうだ、今日お前ん家行っていい?」
「ぶっ!」
 突然板石が話題を変えたので、西田井はちょっとそばを吹いてしまった。
「え、な、なんで?」
「ほらゲーム貸してたじゃん、バイオハザード系の。あれ返してくんないかなーって」
 そう、今日の朝もロメ子がやり込んでいた、あのゲームである。
「いや、その、あのー」
「んん? 家に何かマズいものでもあんの?」
 ぐい、と西田井に怪訝な顔を近づけ、何かを読み取ろうとする板石。
「いや、ない。ないけど」
 西田井は思わずそう言っていた。押しに弱いタイプなのだ。
「じゃあ決まりね! 帰りに寄るから」
 板石が笑ってそう言うなり、その話題は終わりとなった。
 西田井は頭を抱え、風邪気味で頭が痛いのだと嘘をついた。
 
 
 さて、放課後。午後七時前。
 西田井と板石は「知苑荘」に戻ってきていた。
 玄関先で靴を脱ぎ、二階に上がる。
 階段を踏みしめながら、西田井は頭をフル回転させていた。
 なんとか誤魔化さなくてはならない。
(そうだ! 俺が先に部屋に入って、ロメ子さんには押し入れに隠れてもらおう!)
 我ながらなんという名案、と思った矢先。
「うおっ!?」
 西田井が急に腹を抱えた。
「どうした?」
 板石が聞くと、
「ごめん、俺ちょっとトイレ! ドアの前で待ってて!」
 と言うなり、西田井は階段をUターンして一階に降りていく。
「ああ、じゃあ待ってるわ」
 そして、板石はにやりと口角を上げた。
 階段を登り、西田井の部屋の前に立つ。
(油断しおって……馬鹿が! このチャンスを逃す手はあるまい……ゆっくりじっくり、マズいブツとやらを捜索させていただくぜ!)
 ドアノブをひねると、カギはかかっていなかった。予想通り。
(さあて、どんなお宝が見つかることやら。ドア、オープンッ!)
 板石はドアを開け放った。
 
 なぜかセーラー服の少女が居て、ホウキをギターのように激しくかき鳴らしていた。
 
 板石はドアを閉めた。
 ドアの上の部屋番号を確認する。間違いなく、ここは西田井の部屋だ。
(じゃあなんだ? 誰なんだ? 何やってるんだ?)
 もう一度、そっとドアを開ける。
 やはり少女は部屋に居て、エアギターのパフォーマンスも続いていた。
 ヘッドフォンを着けているので、聴いている曲に合わせて動いているらしい。
 正確には「ホウキギター」とでも言うべきなのかもしれないが、とにかく左手にホウキの柄を持ち、右手で叩きつけるような激しいピッキング。さらに狭いスペースで飛び跳ねるわ、コタツに片足を乗っけるわ、しゃがみ込むわの大騒ぎである。
 しかもサビの部分では、ヘッドフォンがズレて取れそうになるくらい、頭を力強く縦に振りまくる。
 ノリノリである。
「エイアームザ、デス・アンリミテッ!」
 歌詞を口ずさんでしまった。どうやら聴いているのはデスメタルのようだ。
 これだけでも見てはいけない光景のような気がしたが、板石には気になる点があった。 あの少女、まるで雪のように肌が白い。皮膚の下に走る青白い血管が透けて見えるほど、色素が抜けてしまっているようだ。
 そしてあの、濁った生気の無い……灰色の瞳。
(あの子まさか、ゾ……)
 曲が終わったらしく、少女がCDプレイヤーを止めた。
 板石は素早くドアを閉める。
「ふいー、スッキリした」
 ちょうどその時、手を拭きながら西田井が戻ってきた。
 
 
 なんだか板石の顔色が若干悪い気がしたが、西田井は気にしないことにした。
 それよりも、なんとかロメ子を隠れさせる事が重要である。
「あー、板石くん。ちょっと向こうを向いていてくれたまえ」
「あ、ああ」
 素直に指示に従う板石。
 西田井は首をかしげた。てっきり何か勘ぐられると思っていたのだが。
 ともかくドアをちょっと開けて、中を見る。
「チェッチェ、チェッチェッチェッ、チェケラ! ワッツ、ワ、ワ、ワッツオルアバウ!」
 ロメ子がなぜかラッパー風の動きをしていた。
 猫背気味でリズムに乗って身体を揺らしつつ、握った左手を口元に当て、親指から中指までを立てた右手をさかんに振っている。
 ノリノリじゃねーか、と西田井は思った。
 とにかく時間が無いため、素早く部屋に入り、ロメ子の肩を叩く。
「ひぎゃあ!?」
 完全にふいをつかれたロメ子が叫び、ヘッドフォンを外しながら西田井の方を向いた。
「ちち、違うんです、これはその」
 あわあわと両手を振り、赤面(?)するロメ子。元々の血色が悪いので分かりづらい。
「しーっ!」
 相手が最後まで言う前に、西田井が自分の唇に人差し指を当てて黙らせる。
 続けて、「隠れて!」と口を大きく動かす。
 意味がくみ取れず、小首をかしげるロメ子。
 西田井は押し入れの方を指差し、「あっちに隠れて」とまたも口の動きで伝える。
 困った顔をしていたロメ子だったが、やがてうなずき、押し入れに向かった。
 よし、これで大丈夫だろう。
 西田井が素早く部屋を出て、ドアをしっかり閉める。
 板石は忠実に言いつけを守り、廊下の反対側を向いていた。
「あー、もういいよ」
「そ、そうか」
 恐る恐るこちらを振り返る板石。
「じゃ、入ろうか」
 西田井がドアノブをひねり、再びドアを開けた。
 
 
「お布団がどうかしましメーン?」
 ロメ子がすぐそばに立っていた。
「メーン!?」
 なんだそれ、と驚く西田井。
「いや、驚くとこはそこじゃない」
 西田井の肩に手を置き、板石がふるふると首を振った。
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Date:2014/05/20
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