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□ ゾンビ同居中。 □

【#2】フォーン・オブ・ザ・デッド

「えーと、お茶どうぞ。パックしか無くて、すみません」
「いえいえ、お構いなくー」
 少年は死体にお茶を出すと、自分も座布団に座った。
 部屋で目覚めてからだいぶ時間が経っているので、もう取り乱すことも無い。
 が。
 コタツをはさんで座っている死体を見やる。
 あちこち破れたセーラー服、サラサラの黒髪、石みたいに白い顔、顔に縦横無尽に走る青い血管、色素が抜けて灰色になっている瞳、両目の周りの真っ黒いクマ。
 ずずー、とお茶をすすり、一言。
「はあー、生き返ります~」
(いや死んでるよ! 死んだままだよ!)
 少年は口から出そうになる本音を、なんとかこらえた。
 自分もお茶をすすり、口を湿らせる。
 そろそろ頃合いかな。
「あの、お名前はなんとおっしゃるんですか?」
「えっ」
 死体がびっくりした顔で少年を凝視したかと思うと、ほほに両手を添えて、こう言った。
「そんな……いきなり名前だなんて……わたしたち出会ったばかりじゃないですか……」
 恥ずかしげに、フラワーロックのごとくクネクネと動く。
(最初って名前聞きませんか!?)
 ノドまで出かかったが、少年はなんとかツッコミをこらえた。
 
 
 
第二話【フォーン・オブ・ザ・デッド】
 
 
 
 少年は考えた。このままでは、名前を聞くことは難しそうだ。
「じゃあ、質問を変えて……あなたはなんで、ここに居るんですか?」
 ゴトン!
 死体が、お茶の入った湯飲みを取り落とした。倒れた湯飲みからお茶があふれだし、コタツの天板の上を広がっていく。
 目をまん丸に見開いたまま、硬直してしまう死体。
(いかん! いよいよ本当に死んだか!?)
 少年が死体に手を伸ばそうとした途端、死体が勢いよく立ち上がる。
「あの、ご、ご迷惑をおかけしました!」
「えっ?」
 勢いよくお辞儀をすると、そのまま部屋を走り出ようとする死体。
「ちちち、ちょーっと待った! 待って下さい!」
 死体のスカートのすそをなんとか掴むと、どうにか止まってくれた。
「ど、どうしたんですか? 僕何かマズいことを……って!」
 泣いていた。目が潤んでいた。死体の。
「あのー、なんでお泣きになっているんでしょうか?」
「すみません、勝手にお部屋に入ったりして、申し訳ありません……」
 うつむき、ぐしぐしと手で目をぬぐいながら、謝り続ける死体。
「わたしなんかがこの部屋に居たら、ご迷惑ですよね、すみません、すみません……」
「い、いや、そんなことないですよ!」
 少年は思わず否定していた。
「その、別にそこまで思い詰めなくても」
 死体が顔を上げる。
「だ、だってさっき、『なぁんでテメーはここに居るんだぁ? 邪魔なんだよ、このファッ○ン死体野郎が!』って言ったじゃないですか」
「言ってねーよ! じゃなかった、言ってません!」
 思わず心の声が出てしまった。危ない危ない。
 少し死体の顔色が明るくなった。よし、もう少しだ。
「え、じゃあ、わたし……このお部屋に泊めて頂いても」
「ええ、大丈夫です、大丈夫です」
 こくこくとうなずく少年。
 死体はすっかり笑顔になり、少年の向かいに座り直した。
 ふいー、と少年は安堵のため息を吐く。
(ここで帰られたら、たぶん一週間は気になってロクに眠れないだろうからな……)
 まだこの死体には、聞きたいことが山ほどあるのだ。
「あ、おかん? 泊めてくれる人が見つかったよ!」
 おや? と少年が死体の方を見ると、
「顔はそこまでようないけど、ええ人なんで! たぶん一週間は大丈夫だっちんさい!」
 なんと、死体が携帯で実家に電話していた。
 遅ればせながら、その内容に気づく少年。
「って、一週間!? ちょっと! えーと、な、名前が……」
「うん、はい、さいなら~」
 少年がなんと呼ぼうか迷っている間に、死体は通話を切ってしまっていた。
「え、どうしました?」
 目の前には、晴れやかに笑う死体。
(ハメられたあああ!)
 妙な約束をしてしまったことに気づき、頭を抱える少年。
 死体の脳天気かつ心配そうな声が耳に届く。
「あの、大丈夫ですか? 頭が痛いんでしたら、お薬ありますけど」
「……いえ、なんでもないです」
(お前のせいだよ!)
 少年は色々と諦めると、元通りに座り直す。
 死体が何かに気づき、声を上げた。
「あ、そうだ! 自己紹介がまだでしたよね」
 こほん、と死体が咳払いをして、先を続ける。
「蛆沸ロメ子(うじわき ろめこ)と申します。よろしくお願いいたします」
 深々とお辞儀をするロメ子に釣られて、少年も頭を下げた。
「えーと、西田井庄二(にしたい しょうじ)です、よろしく」
 なんでさっきは名前教えるの渋ったんだろうなあ、と西田井は内心で首をひねった。
 頭を上げると、ロメ子がびっ、と手を挙げる。
 どうでもいいが、指の先までまっすぐな模範的挙手である。
「あの、さっそくなんですけど、ご飯にしてもよろしいでしょうか? 朝から何も食べてなくて、ちょっとお腹が減ってしまって……」
 お腹をさすりながら、苦笑いするロメ子。
「ええはい、どうぞどうぞ」
 西田井が答えるやいなや、ロメ子はさっそく(部屋に持ってきていた)自分のナップザックから何かを取り出し始めていた。
 その様子を眺めつつ、西田井は考えを巡らせる。
 まあ、結局この少女――ロメ子――について何もわからなかったにせよ、一週間くらいならどうって事ないだろう。害を及ぼすことも無さそうだ。見た目の割に礼儀正しいし。
「よいしょ、っと」
 ロメ子がナップザックから取り出したのは、プラトレーとラップで生の牛肉をパックにしたものだった。よくスーパーで売られているような状態だ。
 おや、ここで料理を始めるつもりなのか。
「あの……蛆沸さん」
「あ、ロメ子で結構ですよ」
 笑顔で答えながらも、てきぱきとラップを剥き、丸めてゴミ箱に捨てるロメ子。
「じゃあ、ロメ子さん。キッチン使います? そこでガスとか使えますけど」
 ロメ子の後ろにあるガスコンロを指差して、西田井は言った。
 家賃格安で風呂トイレ共同だが、一応各部屋で料理は出来るのである。
「あ、火は使いませんので。結構です~」
 ひらひらと手を振り、やんわりと断るロメ子。
 そして。
 ガブリ!
 突然牛肉にかぶりつき。
 ブチブチ、ブチイィッ!
 両手で引っ張って肉を千切り。
 クチャクチャクチャ、ゴキュッ。
 口を開けっ放しで咀嚼して、飲んだ。
「はあ、お腹減ってるとおいしいですねえー。あれ、西田井さん?」
 満面の笑みでほっぺたに手を当てるロメ子と対照的に、西田井はコタツの天板に頭を載せてしまっていた。
(やっぱりコイツ、人間じゃねえッ!)
 一週間経ったら必ず出て行ってもらおうと、西田井は決意を固めるのであった。
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Date:2014/05/20
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