明日から書く。

□ WORKING!! □

相馬の異常な情報 または私は如何にして(ry

 ワグナリアの休憩室。休憩時間に入っている相馬は、椅子に座って仮眠を取っていた。
 すると、休憩室の入り口からひょこっと、和人形のような少女が顔を出す。
「相馬さん! 休憩中ですか?」
「ん? 山田さん? なに、キッチン人足りない?」
「いえ、大丈夫です!」
 言いながら、なぜか山田は椅子を引き出し、相馬の向かいに座った。
「山田さん、いま休憩時間だっけ?」
「はい、五分休憩です!」
「いや、そんな制度無いから。早く戻らないと怒られるよ?」
 だが、山田は動かなかった。
「相馬さん、山田、相馬さんにお聞きしたいことがあるんです。相馬さんすぐ帰っちゃうから、今ぐらいしかチャンスが無くて!」
「なに? 改まって」
「なんで相馬さんって、色んな人の色んなことをよく知ってるんですか?」
 まっすぐな瞳で、魂胆が見え見えの質問をぶつけてくる山田。
 こいつは何を考えてるんだ、とため息をつきつつ、いちおう理由をきいてみる。
 もしかしたら、ひょっとすると、思いがけない深ーい理由があるのかもしれない。
「え、なんでそんなことを聞くのかな?」
「はい、山田、職場のみんなの弱みを握って、アゴで使い倒したいんです!」
 キラキラと輝く瞳で、邪悪な願望を大声で叫ぶ山田。
 ははは、と乾いた笑いを漏らす相馬。予想通りでした。
「あのねえ山田さん。そんなこと教えられると思う? もう悪用するってハッキリ宣言されちゃってるのに」
「う、山田、口が滑ってしまいました」
 気まずい表情で、ぷいっと顔をそらした。
「それにね、山田さん。僕が職場の人の色んな事を知ってるのは、脅しをかけて仕事させたいからじゃないんだよ」
「ええーっ!?」
 山田が両目をグワッと開き、絶叫した。
 まるで目の前でガソリンスタンドが大爆発でもしたようなリアクションである。
 相馬は表情こそ変えなかったものの、ちょっと傷ついた。
 
 
「じゃ、じゃあ、なんでなんですか、相馬さん、なんでせっせと皆さんの弱みを握ろうとするんですか」
「声も身体も震えてるよ、山田さん」
 そこまでショックか、と相馬はガックリ肩を落とす。
「はあ……うーん、なんていったらいいのか……例えば、山田さんがハリウッドスターのインタビューをすることになったとしよう」
「ハリウッドスター!? 山田、ジョニー・デップにインタビューしたいです!」
 急に元気になり、パイレーツ、チョコレート、ハサミ男とはしゃぎ始める山田。
「うん、本当にインタビューできるわけじゃないんだよ」
 言ったとたん山田が元気を無くしたので、思わず苦笑いの相馬。
「まあ、ジョニー・デップでいいか。せっかくジョニー・デップに会えるんなら、会う前に色々調べてから行くでしょう? 例えばプロフィールは読んでおくとか、出演している映画を二、三本は観てからにするとか。何も知らない状態では会わないよね?」
「なるほど、それはわかります。何も知らないで会ったら話すことが無いです!」
「そうそう、そうでしょ? 僕が色々調べるのも、そういう意味なんだよ」
 だが、山田は腕組みしてうー、とうなり始めてしまった。
「相馬さん、山田、良くわかりません」
「あー、例えが大げさだったかな。つまり、初めて会った人と一緒に居て、話せることが何も無い、っていう状況が大の苦手なんだ」
 苦笑いで頭をかく。
「あの気まずい空気がどおーしてもイヤでねえ……だからつい、あらかじめ話題作りしちゃって。相手の家庭環境とか、好きなこととか嫌いなこととか、色々調べちゃうんだよね」
 さわやかに笑う相馬を見て、山田が不審そうに問いを発した。
「それはいくらなんでも、準備が大げさすぎませんか」
「あはは、僕もそう思ってるんだけど、やめられなくて。で、その情報で世間話を始めたら、なぜか相手が仕事を代わってくれるようになっちゃってね」
 だったら変な情報は探ったり話さなければいいじゃないか、と山田は思ったが、言うのはやめておいた。
「ちょっと、そんな顔で見ないでよ。本心から言ってるんだよ、今のは。本当に最初は、なんで世間話で仕事代わってくれるのか、わからなかったんだから」
 いつもの笑い顔が、少しだけ寂しげに歪む。
「昔っから、人と話したり、人の感情を読むのが苦手でね。だからまあ……色々とひどいことになっちゃったこともある。人の心って案外もろいもんだよ、ホント」
 そういえば、と山田は思い出した。八千代に佐藤の恋心を伝えた際、知ってることを何でも話していたら人間関係がメチャクチャになる、と注意されたっけ。
「相馬さんでも、失敗するんですね」
「失敗だらけだよ。今はまあ、うまくやれてる方だけど……って」
 相馬がはっ、と口を押さえる。
「なんでこんなに自分のことペラペラ話してるんだろ。ごめんね、僕ばっかり話して」
「いえ、山田、とっても興味深いです!」
 まっすぐに見つめ返してくる山田の瞳を見ながら、相馬は思った。
 なんて綺麗な瞳だ。一点の曇りもなく純粋だ。自分の周りの人間が全員、この子みたく単純でわかりやすければ、あんなことも起きなかっただろうに。
 人間ってなんで、みんな面倒くさい生き方をしているんだろう?
 相手を疑い始めて、際限のない泥沼にはまってしまったり。
 嘘をつきすぎて、本当の自分がどんな人間かわからなくなってしまったり。
 そんな面倒くさいことを一切やらないヤツが、現にここに居るのに。
「なんですか? 相馬さん。じっと山田の瞳を見つめて……はっ!」
 何か勘違いをして、山田がそっと目を閉じた。
 なんだか唇がにゅーと突き出ている気がする。
 相馬は我に返って、ちょっと引く。おいおい、なんで結論がそうなるんだよ!
 肩をつかんで揺さぶり、山田の目を覚まさせようとする。
「ち、違う! 違うよ山田さん! それ勘違いだから!」
 こんなところ、誰かに見られたら……。
「ちょっと! 目を開けて! 山田さん!」
「あっ」
 佐藤が休憩室の入り口に立ったまま、硬直していた。
 おそらく山田を呼び戻しに来たのだろう。
 山田の肩をつかんだ相馬……そして山田の表情。
 まあ、佐藤からどう見えるかは言わずもがなである。
「すまん。じゃ」
「え、ちょっと佐藤くん!? 佐藤くーん!」
 引き留めようと手を伸ばすも空しく、早足で去ってしまう佐藤。
「あれ? 佐藤さんどうしたんですかね?」
 机に両腕を付いてがっくりとうなだれ、相馬は思った。
 やっぱり、ここまで単純すぎるのもやっかいだなあ、と。
 それと、これはどう説明しても信じられそうにないなあ、とも思った。
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Date:2014/05/15
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