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□ 涼宮ハルヒの憂鬱VSドクター・フー □

時間の貴族と宇宙の皇帝

「まあとにかく、これで全て終了か。なあ、長門、ドクター?」
 俺の言葉に、長門とドクターがうなづいた。
「あとは部室等を復元するだけ。ほぼ終了」
 もう金色のもやは無くなり、髪の色も戻っている。よかったぜ、いつ権利関係の文句を言われるかヒヤヒヤしてたんだ。
「冷蔵庫を使うまでもなかったな。楽勝だ」
 ペットボトル入りのホット緑茶を放り上げ、キャッチしながら言うドクター。
 そういえば、コンソール横にあった冷蔵庫がずいぶんと大幅に改造されていた。
 前面パネルにボタンがやたらくっ付いているわ後ろからコードがにょきにょき伸びて床に消えているわ、大変にサイバーな感じだ。
 おまけに、冷蔵庫には絶対付属していない制御パネルらしきものが、少し離れたところに置かれていた。傍らには穴を開けてコードをつなげられた電気ポットが転がっている。
「あれは、なにを造ってたんです?」
 ドクターが肩をすくめて、冷蔵庫を見やる。
「いや、それは今となってはもう必要ない。ただの用心さ」
 小さくため息を吐いて、うつむいた。
「これで、ようやく戦争も終わりかな……だといいけど。ヤツらは大分しつこい」
 苦笑いしながら首を振る。
「戦争って、なんです?」
 俺の質問に答えるまで、しばらく間があった。
「タイムウォーだ」
「タイムウォー?」
「そう。全時空間を巻き込んだ、宇宙最大の戦争のことだ」
 その言葉に、長サンドラがぞくっと身を震わせた。
「それ……伝説だと思ってたわ」
「いや、事実だ。なにしろ、僕も闘っていたんだからね」
 戦争の様子を思い出すためか、ドクターは同じところをうろうろ歩き出した。
「タイムロード、つまり僕の種族と、ダーレク族の一騎打ち。ひどい戦争だった。十億の戦艦が燃え上がり、百万の種族が死に絶え、千を越える世界が丸ごと蒸発し、全ての時空間からタイムロードもダーレクも滅び去って……最後に、僕だけが生き残った。つまり」
 ドクターが顔を上げる。まるで墓石に向けるみたいな笑み。
「僕が勝った。すごいだろ?」
 俺たちはみんな、黙ってしまった。どう言葉をかけるべきかわからなかった。
 この大いなる空虚、癒されない孤独を抱えた、おしゃべりな神に対して。
「おっと、そうだった」
 重たい雰囲気を打ち破るように、ドクターが陽気な声でしゃべりながら、コンソールに向けて歩き出す。
「時空の裂け目を閉じないと。誰か吸い込まれでもしたら、この地方だとカミカクシとか呼ばれる現象に……」
 突然、ターディス内部に警報がけたたましく鳴り響いた。
 ドクターが驚いて立ち止まる。しばらく警報を聞いていたが、頭をくしゃくしゃとかきむしった。
「おいおい、今度はなんだっていうんだ?」
 コンソールにドクターと長門がかじりついた。
 その顔が(主にドクターの顔が)みるみる険しいものに変わっていく。
 モニターにかじりつき、ボタンを叩きまくる。
 その横で長門もキーボードを乱打する。
 そして、俺の横に立っていた長サンドラが俺の袖をくいくいと引っ張る。
「ねえ、なんかあったの?」
 ああもう、俺が聞きたいよ。お前は仕事が無いのか?
 ひと通り状況が確認できたようで、ドクターがコンソールから戻ってきた。
「キョン。あー、いいニュースと悪いニュースがある」
 またかよ。
「じゃあ、今度はいい方からお願いします」
 ふー、と大きいため息をつくドクター。目の付け根をもむ。
「ダーレクの大群に勝てる可能性はかなり低いが、ゼロじゃない」
 ターディスの中がしんと静まった。
「……ダーレクの、大群?」
「ドクター、通信が入っている」
 俺の疑問は長門に遮られた。
「よし、スクリーンに出してくれ。……いよいよ黒幕とご対面か」
 ドクターはコンソールのそばに仁王立ちになる。
 やけに緊張してるな? らしくもない。
 
 
 突然、ターディスの天井と床の間に大きな四角い幕が現われた。
 まもなく幕に色がつき、どこかの景色を映し出す。
 なるほど、ホログラムでスクリーンを作ったわけか。
 で、問題の映った景色だが。
 ダーレクのお化けみたいなものが、どこかの広大なホールの中で立っている。
 頭はダーレクそのままのデザインだが、下半身が三本の脚になっている。
 それぞれの脚は分厚く広い板で出来ていて、おそらく盾代わりにもなるのだろう。
 頭の下には、何かが入った透明なシリンダーが垂れている。
 にしても、すごいデカさだ。
 後ろを飛び回るダーレク共と比べても、十倍以上の背丈があるだろう。
 ……そう、後ろにはひっきりなしにダーレクが隊列をなして飛んでいる。一体だけでもうんざりだってのに。
『ひさしぶりだなドクター』
 デカブツがしゃべった。ダーレクの金切り声とは違い、こっちは短気な神を思わせる、堂々たる低音だ。
「これはこれは皇帝陛下。お目に預かり恐悦至極」
 胸に手を当て、優雅にお辞儀をするドクター。ちょい演出過剰じゃないかね。
『ハッハッハ! 姿は変わっても、貴様は相変わらずのようだな』
「偉大なるダーレク族は残念ながら絶滅したものと、小生は愚考しておりましたが」
『あのとき、余の細胞は生きておったのだ。緊急時空移動によって生き延びた。絶滅しかけているのは事実だが、心配にはおよばぬよ、ドクター』
 ドクターは短くため息をはいた。
 一匹出てきたら百匹居ると思え。もはや、そんな害虫を相手にしているような気分なんだろう。何度巣をつぶしたと思っても、ありとあらゆる場所から信じられない方法で何度でも復活し、そして増える。
 細胞ひとつ生き残れば、それはひとつの軍団が生き残ったことを意味するのだ。
『ところで、そちらに余の預かる兵士が一人、お邪魔しておらんか。急に連絡が取れなくなっておってな』
 ドクターが頭をかきかき弁明する。
「いやー、さっきまで仲良く世間話をしてたんですがね、突然吹っ飛んでしまって。具合でも悪かったのかな?」
 もちろん、相手を挑発するニヤケ顔は忘れない。
『そうか、確かヤツは頭痛持ちだったと聞いておる』
「ああ、じゃあそれが原因でしょう。で、本題はなんです?」
 少し間を置いて、「皇帝」が重々しく話し出した。
『その兵士がさきごろ、面白い報告をしおった。〈新世界を発見した〉と言うのだ』
 ふー、とドクターが今度は長めに息を吐きだし、つぶやく。
「なるほど、あれはコロンブス先生だったというわけだ」
『どういう意味だ』
「いいえ、それで?」
 皇帝の声がふいに大きくなる。
『貴様にはわかっておるだろう。報告が正しければ、我々は絶滅を免れることができる。新しい宇宙で、永遠に繁栄を続けるのだ』
 ドクターは、こいつらには心底うんざりだという顔と口調になる。
「だから僕が開けた時空間の裂け目を、いま無理やり押し広げてるんだな」
『そういうことだ』
「でも、うまくいくことはない。決して」
 皇帝をにらみつける。
『なぜだ、ドクター。その時代の人類など問題にはならん。赤子の手をひねるように全滅させることが出来よう。一晩あれば十分に事足りる』
「いいや、そうじゃないさ。人類がまだ赤ん坊の段階なのは同意しよう、だからお前達は滅ぶ!」
 ふいに、ドクターが敵意をむき出しにした。今まで胸の中に閉じ込めていた憎しみが、宿敵に向けてぶちまけられる。
『はっきり要点を言え。余は長々としたおしゃべりなど好かん』
「じゃあこれでお終いだ。人類にはまだ保護者が必要だ。これから何にでもなれる可能性を持ってるのに、早々に滅んでしまってはもったいない。だから」
 皇帝の目をひたと見据え、つけたした。
「僕が守る」
 つまり、宣戦布告ってわけか。
 ドクター、いつもいつも人類が迷惑をかけちまってすまないな。
『……クク、わかった。では貴様ごと滅ぼすまでよ。一万のダーレク軍の手で今度こそ、タイムロードを完璧に絶滅させてくれるわ』
 そこまで言い切ったところで、スクリーンが黒一色に戻った。
「通信途絶」
 淡々と報告する長門の声。
 ドクターは腹の底から息を吐き、おでこに手を置く。
「やれやれ、ちょっとばかり難しい状況だ」
 ちょっとばかり?
 これが「ちょっとばかり難しい」だって?
「控えめに言って、勝つのは無理だと思うんですが。一体でも相当苦労したのに」
「そうだな、今から有効な兵器を造れる確率も事実上ゼロだ」
「だったら」
「諦めたらそこで試合終了だよ、キョン」
 それ漫画で読んだようなセリフだな。
「さて、いよいよお茶の出番だ。お茶を返して」
 俺の投げたペットボトル入りの緑茶を握りしめると、コンソールに戻った。
「学校から出るぞ! つかまってろ!」
 ターディスはぐらりと揺れ、おそらく空中を疾走した。
 
 
 ターディスのドアを開けると、そこは駅前の広場だった。
 よくSOS団の待ち合わせに使ってる場所だ。なんだか変になつかしい。
 やけに暗い空を見上げると、巨大な雷雲が視界いっぱいにのしかかっていた。
 見守っているうちに、雷雲に裂け目が入る。
 ときおり輝く雲の切れ間から、本来空には無いはずの、金属質の物体が顔を出し始める。
 雷ごと雲を吹き飛ばし、その全容が明らかになった。円盤上の巨大な宇宙船だ。
 ダーレクの身体と同じ素材で出来ているように見える。
 きっとまたしても、無敵のシールドで武装してるに違いない。
 やっかいだな。ちょっとやっかいだ。
「キョン、出れないんだけど」
「すみません」
 ドクターと長門が外に出る。
 長サンドラも出ようとしたが、ドアから外に出た身体の部分が消えたのに驚いて引っ込んだ。モバイルホロエミッターは壊れたしな。
「ちょっとー、なんなのー? どんな戦艦なのー?」
「見ないほうが幸せだ」
 長サンドラの不満げな声をドクターが一蹴した。
 スーツのポケットに手を突っ込んで空を見上げ、ため息まじりにつぶやく。
「これはこれは、なんとも頑丈そうだな……」
 長門も感想を口にした。
「情報封鎖により内部がスキャンできないが、極めて堅牢な構造。それに加えてシールドの存在を検知。十の二十乗ジュールのエネルギー放射に耐えられると推測される」
「世界最大の水爆一千個がまとめて直撃しても大丈夫か。恐れ入った」
 ドクターは頭を振ると、ターディスに引き返す。
 俺も入ろうとする……と、ドクターの手が伸びて止められた。
「きみはここで待っててくれ。あいつらの始末はタイムロードの責任だ」
 もう俺たちを守る余裕は無い、ってことか。
「わかりました。長門と一緒に待ってます。なあ、長……門?」
「ああ、有希なら上に」
 ドクターに指差された方向を見ると、なぜかターディスの天井の上に長門がよじ登り、仁王立ちになっていた。
 おいおい、そんなところに立ってたら見えますよ。
「なにが見えるのー?」
「うっさいカサンドラ」
 見守っているうちに、長門からまた金色の輝きが吹き出した。
 全力全開で迎え撃つってわけか。いよいよクライマックスだな。
 ドクターが笑顔を作り、俺に握手を求める。
「じゃ、ちょっと行ってくるよ」
 しっかりと手を握る。
「地球をお願いします」
「まかせたまえ。いつもの事だ」
 手を離すと、長門に手を振る。
「頼んだぞ、長門」
 長門も小さく手を振り返した。
 ドクターは引っ込み、ドアは閉まった。
 ターディスはランプを点滅させ、エンジン音を響かせながら、天に昇っていった。
 大丈夫、きっと大丈夫だ、彼らに任せておけば。
 ただドアが閉まる直前に、
「お茶を温めろ、カサンドラ」
 とかなんとか聞こえたのが気になる。余裕無いんだかあるんだか。
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Date:2014/05/15
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