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□ 涼宮ハルヒの憂鬱VSドクター・フー □

もうウンザリ

第3章「最終決戦(The Last War)」




 と、いうわけで。
 俺はまた学校の廊下を引き返していた。くそっ、自分の人の良さがうらめしい。
 ただ、ドクターの譲歩で後ろには長サンドラが付いてきている。
 ターディスの外に居るにもかかわらず、ホログラムのままだ。
「ほんと便利よねー、『モバイルホロエミッター』って」
 長サンドラが髪飾りをさわりながらつぶやく。
 どうやら、あの髪飾りの中にカサンドラの魂が格納されていて、ホログラムも投影しているらしい。
 しかも実体を保ったまま、物を動かすことまで出来る。なんでもアリなんだな。
「ねえねえ、いまダーレクが来たら守ってくれる?」
 ひょいっと横に並んだ長サンドラが、意地悪な笑顔で不吉な言葉を吐いた。
 やめろ、その前フリやめろ。
「言っとくが、俺はまっさきにお前を置いて逃げ出す」
「あらゲンメツー」
「なんとでも言え。お前は頼りになる光線銃を持ってるだろ、俺はなにもナシだ」
 長サンドラは、ドクターからヘンテコな武器を預かっていた。
 電動ドリルを細くして、ドリル部分を取って、さらにレトロなデザインにしたような。
「そりゃフェイザー銃は持たされてますけど。『二十三世紀の最新式だ』とか言って」
 眉をひそめて、まじまじと光線銃の表面を眺める。
「でもこれさあ、『MADE IN VIETNAM』って書いてあるんだけど」
 いや、わかんないぞ。二十三世紀のベトナムはものづくり大国かも知れんじゃないか。
「ていうかそもそも俺は要らないんじゃないのか? お前一人で行けば」
「あらあら、女の子を一人きりで戦地に送り込むワケー? ますますガッカリだわ」
 光線銃の先端でこりこりと頭を掻く長サンドラ。気をつけろよ、頭が消滅するぞ。
 そのまま黙って、真っ暗な廊下を歩く。足音がやけに反響する。
 突然、廊下の先に紅い輝きが出現した。
 あれはまさか。
 全身に一瞬、ぴりっとした何かが駆け抜ける。
 が。
「……なんだ、火災報知器じゃねえか」
 やれやれ、俺まで驚いてちゃ世話ないな。
「おや、知らないんですか? あれ火災報知器っていって、光ってるだけなんですよ?」
 ここぞとばかりにバカにしてきやがった。返答する気も起きん。
「まっさつせよー、まっさつせよー」
「おいやめろ」
 そんな感じでバカやってる間に、俺たちは部室にたどり着いていた。
 
 
 電気はつけっぱなしだった。慌しい出発だったからな。
 実際には一時間弱しか経ってないのに、なんかしばらく旅行で開けてたような気分だ。
 ドアの陰を確認と……よし、OK。
「慎重なのね」
「うっさい」
 さて、早いとこお茶を淹れないとな。
 難なく缶入り茶葉を発見し、急須に投入完了。
 あとはポットのお湯を注ぐだけ。簡単だな。
 ぶすすうぅぅぅぅ。
 ぶすしゅうぅぅぅぅ。
 ポットのボタンを押しこんでも、口からは空気が漏れるのみだった。
「なにそれ? 楽器?」
 俺の後ろに突っ立っていた未来人が真顔で問いかける。
「ちょっと水入れてくるな」
 部室の外に出て、一番近い水道までポットを持って歩いていく。
 正直しんどい。これを毎回やっていたのか、朝比奈さん。今度改めて礼を言おう。
 しかるのち水を入れて、ポットを持って戻る。だいぶ重いな。足にも当たるし。
 というか、何でポット丸ごと持って歩かなきゃならんのか。一体この不便なシステムはなんなんだ、いま地球がピンチだってのに。
 ポットの改良案を二つ三つ練りながらドアを開け、部室に入る。
 長サンドラが本棚の本を、しこたま長机に積んでいた。
「なにやってんだ」
「あ、これすごいのよ! 紙なのよ! 紙の本!」
 そうかそうか。
 ポットを冷蔵庫の上に置き、コンセントを接続。さて、ちょっと待たないとな。
 その間も、長サンドラは本をいじり回していた。普段の長門とは正反対の、無駄のカタマリといった動きだ。
「それ、逆向きだぞ」
「え? ……なにこれ象形文字ってやつ?」
 キリがなさそうなのでそれには答えず、机にひじをついて沸くのを待つ。
 本を覗き込んだり、匂いをかいでみたりしている長サンドラ。
 長門とは見た目だけじゃなくて、本好きなのも一緒だったんだな。
 ちょっとベクトルは違うが。
 長サンドラと突然目が合った。好奇心に輝く瞳。
「ねえ、お願いがあるんだけど」
「なんだよ、子供みたいに」
「これ一個だけくれない? 家に持って帰りたいの!」
 家にねえ。
「地球の家にか?」
「そう!」
「どうやって帰るんだ」
 室内の空気が、ぴたりと静止した。
 長サンドラの顔から喜びが消えた。空いたスペースを、すぐに寂しさが埋めはじめる。
 しまった、俺はなんてことを。
「すまん、その」
「いいの」
 ぶっきらぼうに立ち上がり、長机の本をさっさと本棚に戻し始める。
「事実だものね」
 ああくそ。さっきまであんなに楽しそうだったじゃないか。
 こいつの自宅は地球と一緒に太陽に飲み込まれてるんだった。でも何か手は……。
「そうだ、ターディスはタイムマシンだ。それなら」
「ダメよ。どの時代のわたしの家にも、もうわたしが居るの。二人は暮らせない」
 そして、俺を振り返って言った。
「死人のためのベッドは無いわ」
 顔には笑みが張り付いていた。皮肉な笑みが。
 
 
 それきり、室内はしんと静かになってしまった。
 聞こえるものといえば、冷蔵庫のうなりとか、たまに入る蛍光灯のノイズ、それに電気ポットのかすかなシューシュー音だけ。
 向かい合って座った長サンドラも、黙って机に残した本をめくって眺めている。
 ああもう、いつになったらお湯は沸くんだ。早く戻りたい。
「ねえ」
 顔も上げずに、長サンドラが話しかけてきていた。
「なんだ」
「それ、いつ沸くの?」
 奇遇だな、それは俺も考えてたところだよ。
「正直に言うと、わからない。やったことがないんだ」
 家はヤカン派だしな。
 肩をすくめながら言うと、相手が顔を上げた。
「ちょっと、結構時間かかるんじゃないでしょうね? あまり待てないわよ?」
 う。
 確かに、俺も頭の片隅では思っていた。これ数時間かかるんじゃないかって。
「……仕方ないわねえ」
 ため息をつきながら手を突いて立ち上がり、ポットの前まで歩いていく。
「どうするんだ」
「ふた開けて」
「なに?」
「これの、ふたを、開けて」
 わかったわかった、そんなにイライラするなよ。
 駆けつけて、ポットのふたを開く。タンクの中の水面が露出した。
「何度くらいにすればいいの」
「え? ……そうだな、百度近くあれば十分だ」
「オーケー。離れてて」
 長サンドラはいつの間にか光線銃を手に持っていた。
 銃口らしきものをポットに突っ込み、水面を狙う。
「発射!」
 待て待て! まだ離れてない!
 あわてて後ずさる……が、何も起きない。
 長サンドラが光線銃を引き抜いて、振ってみたりしながらぼやいた。
「なにが最新式よ、まったくドクターは……」
「なんだ、不発か」
 心なしかホッとしている自分がそこに居た。
「出力上げてみるわ」
 俺が飛び退いた瞬間。
 ドカアアン!!
 案の定、ポットが爆発した。
 
 
 必死で長机の下に身体を押し込む。
 机の脚で頭を強打したが、全身火傷するよりゃマシだ。
 熱湯(とポットのふた)の雨は止み、部室に静けさが戻ってきた。
 机の下から出ると、おろおろと立ち尽くす長サンドラと目が合った。
「あ、あのね、その、ナディオン放射がね、最初うまく出なくて……」
 うっさい。もうそんなワケわからん単語なんざ聞きたくない。金輪際うんざりだ。
 狼狽する長サンドラの後ろに、ヒビだらけになったポットが見えた。
 朝比奈さん愛用のポットをボロボロのバラバラにしやがって。
 舌打ちしながら、部室を後にする。
「ちょ、ちょっと、お茶はどうするのよ!」
 後ろから長サンドラの呑気な声が聞こえた。お茶?
「お茶だと?」
 この後に及んでお茶だ? 部室中に熱湯をばら撒いてポットを割っておいてか?
 振り返り、長サンドラの胸のあたりに指を突きつけて言い聞かせてやる。
「俺はうんざりだ。もう金輪際うんざりだ! 宇宙人に追い回されるわ死体はよみがえるわマシンガンをつきつけられるわ、今度は未来人と一緒にお茶を淹れててポットが爆発? まったく、こりゃちょっと悪ふざけがすぎるぜ」
 きびすを返し、大股で廊下を歩き出す。
「どこ行くのよ?」
「帰るんだよ。暖かい家に、明るい家に、安心できる日常にな。我慢の限界だ」
「そんな、だって、わたし一人じゃ……」
 いかにも不安そうな声色に、なおさらムカッ腹が立つ。
「お前にはその光線銃があるだろうが。その調子じゃ、まともに引き金をしぼれるのかも怪しいもんだがな。それに」
 振り返る。長サンドラがびくびくと両手で胸のあたりの布をつかんでいる。
 続きを言うかどうか迷ったが、知るか。もうここまで来たんなら言ってやることにする。
「お前はもう二度も死んでるんだぜ? もう一回くらいどうってことないだろ」
 長サンドラはぽかんとしていたが、だんだん顔が茹でられたみたいに紅潮していく。
「いいわよ、わかったわよ! わたし一人でなんとかするわよ!」
 しまいに泣きわめきながら、部室に引っ込んだ。
 やれやれ、これでようやく眠れるってわけだ。地球はお前らだけでなんとかなるだろ。
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Date:2014/05/15
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