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□ 涼宮ハルヒの憂鬱VSドクター・フー □

説得というか成り行きというか

 長サンドラは一分ほど黙っていたが、ふいに本棚から身体を離し、俺の肩をつかんだ。
 いたたた、なんだそのゴリラみたいな握力は! ちょっとは加減しろよ。
 しかも肩を前後に引っ張ったり押したりしはじめた。うぷ、酔っちまいそう。
「こんなことしてる場合じゃないわ、逃げなきゃ!」
 わかった、わかったからそんなに揺さぶるな。
「前半部分には同意だが、提案は却下だ」
「なんで!」
「あいつを放っておけば、人類は全滅しちまう」
「だから逃げるんじゃないの!」
 ゆするなって! 人の肩を掴まんと話も出来ないのか?
「あなたはわかってないんだわ。あれが、ダーレクがどんなに恐ろしいか」
「知ってるさ。地球のネットワークを占拠して、銃弾の効かないバリヤーを張ってる上に、情け容赦の無い殺人鬼だ」
 指の力が強まった。万力にはさまれたかのごとく、骨格がぎりぎり音を立てる。
「そこまで知っててなんで学校に残ってるのよ! わたしはあなたのくだらないヒーロー願望に付き合ってるほど馬鹿でも退屈でもないのよ!」
 痛い痛い、俺の肩と首が限界を迎えてるって!
 俺を揺さぶるだけ揺さぶって、長サンドラは肩から手を離した。
 酸素をうまく取り込めなくなったみたいに、浅い呼吸を繰り返す。
 俺を見るその目が、うっすらと涙に覆われていくのがわかる。
「一回死にかけて生き返って、また死んで……そしたら殺人鬼の徘徊する学校に放り込まれて。どんな気持ちだと思う? わたしはこれ以上死にたくないの。もっと生きていたいのよ。あなたもそうでしょう?」
 そうだな。俺も怖いさ。
 長サンドラが、今度は俺の二の腕をつかんできた。
 上目遣いに、こちらを見上げる。
 心臓が跳ね上がった。油断したぜ。
「ね、馬鹿な正義の味方ごっこはやめて逃げましょう? そうね、なるべく遠くがいい。手近の宇宙港に案内してくれれば、あとはわたしがなんとかするから、ね?」
 卑怯だぞ、その表情は。潤んだ瞳は。
 でも、こればかりはどうしようもない。無理なもんは無理だ。
「すまんが、ご期待には添えない」
「気は確かなの!? もういいわ、わたし一人で」
「違う。違うんだ」
 言葉をさえぎり、ゆっくりと頭を振ってみせる。相手が黙ったのを見て、続ける。
「この時代には、まだ『宇宙港』なんてSF小説家の頭の中にしか無い。人間は全員が、このたった一つの惑星の地べたに張り付いて一生を過ごすんだ」
 長サンドラの顔から表情が失われた。
 皮肉にも、身体の持ち主である長門が戻ってきたように見える。
「待ってよ……殖民してる星の一つくらいあるでしょう?」
「無い」
「太陽系内にも?」
「無い」
「宇宙ステーションも?」
「無い」
「誰も、一回も……地球を離れたことがないの?」
「あるにはあるが、国家を挙げたプロジェクトでやっと月まで行けるか行けないかだ」
 長サンドラはもはや言葉に詰まり、まるで外国のデパートに置いてきぼりにされた子供みたいな不安に満ちた顔で、俺を見つめた。
「じゃ……じゃあ」
 かろうじて聞こえる声で、問いかける。
「どうやって逃げるの? わたしは?」
 俺は黙っていた。
 しばらくすると、長サンドラは泣き崩れた。
 
 
「こうなったら、ドクターに賭けるしかないわ」
 落ち着くなり、長サンドラは心の底から憂鬱そうにつぶやいた。
「始めからそうするつもりだったんだが」
「わたしはイヤだったのよ。なんていってもあいつに殺されてるのよ?」
 それは自業自得だろ、と思ったが口に出る前に止めた。
「でも、もう諦めるわ」
 ぐすっ、とすすりあげる。
「おいおい、死ぬことが決定してるような言い方だな」
「そりゃそうよ。たぶん、ダーレクを倒すためなら」
 長サンドラが突然立ち上がった。
「ドクターは地球を壊すことだっていとわないでしょうよ。あの殺人鬼め」
 忌々しそうに歯噛みすると、部室のドアを抜けてさっさと出て行ってしまった。
 まあ、説得は成功なのか。
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Date:2014/05/14
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