明日から書く。

□ 涼宮ハルヒの憂鬱VSドクター・フー □

まるでバーゲンセール

 さて、俺達はまたしても昇降口付近に戻ってきていた。
 俺が学校に入り、最初に教員の死体を発見した場所。
 当たり前だが、死体は動かずにそこにあった。馴染みの場所が死体安置所になった感じで気分が悪い。
「よーしきみ達! どれでもいいから使ってくれ! いいやつは早いもの勝ちだ!」
 だがドクターの号令で、亡霊たちが死体にバーゲンセールよろしく一斉に群がり。
 教員の身体がぞくぞくと立ち上がり始めた。
 ざっと三十人は居るだろう。
 その多くはろくに目の焦点も合わず、歩くのもままならない様子。
 うげえ。
 断っておくが、俺はあらかじめ、このプランに反対はした。
 宇宙人になっているとはいえ、慣れ親しんだ学校の教員たちだ。その遺体を無断で使うなんて死者への冒涜ではないかと。
 だがドクターは一言、こう言っただけだった。
「いいじゃないか。リサイクルだよ」
 それきり俺も反論する気を無くし、長門に至っては最初からその予定で打ち合わせがしてあったため、事はスムーズに運んだ。
「よーし諸君! これで諸君は単なるガスから百戦練磨の戦士に生まれ変わった!」
 どこかの軍曹よろしく、死体の群れを鼓舞するドクター。
 いつこいつらが海兵隊の訓練を受けたんだよ。
 教員たちはもともと持っていた銃器をゆっくりと天井に突き刺すように持ち上げ、
「おおー」
「うあー」
 なんともしまりのない雄たけびを上げた。
「いようし! それでは」
 ドクターが歩く死体の群れからくるりと向き直ると、
「全体、進めえ!」
 拳を振り上げ、意気揚々と先導して歩き始めた。
 死骸たちも足をひきずりながら、なんとかついて歩く。
 うげげえ。
 
 
 我々ゾンビ部隊は、さながら行進というよりもおじいちゃんの散歩くらいのゆったりとしたスピードで、パソコン室がある階の廊下までやって来た。
 いや、本人たちは必死に身体動かしてるんだけどな。
 手前側の入り口には、まだ長門の造ったレールガンと、大量の黒いコンデンサが転がっていた。
 ドクターがパソコン室側の壁に背中をつけ、ダーレクの様子を見に行く。
 中を覗き込むと、腕を下から上に回して俺達を呼ぶ。おお、軍隊っぽい。
 その合図で、パソコン室への死者の行進が始まった。
 俺は邪魔にならないよう階段まで戻って待つ。ドクターも走って引き返し、隣に並ぶ。
 騒乱は死者の群れが到着してすぐに始まった。
 なんといっても、こちらから仕掛けているのだ。
 死んだ教員たちはまず廊下側の窓にびったりとはりつき、窓をばんばん叩き始めた。
 もちろん気味の悪いうめき声と恨めしそうな表情も忘れない。
 中から短い、歪んだ悲鳴のような声が聞こえたかと思うと、例の光線が窓を突き破って伸び、教員たちを襲う。
 だがそこはすでに死んでるだけあって、いったん倒れるもののすぐに起き上がり、またばんばんうーあーの列に戻る。
「抹殺セヨ! 抹殺セヨ!」
 例のセリフとともに頑張るダーレクだが、いかんせん今回は相手が悪い。
 教員たちは死んでも死んでも起き上がり、死んだまま窓を叩き続ける。
 しばらくこう着状態が続いた後、死者の群れはパソコン室の前を離れ、階段と反対側に歩いて去っていった。
 ダーレクが後を追って出てくる。コンデンサを避けて、向こう側の入り口から。
 もちろん本能に従って、死者の群れを完全に殺し、おとなしく死んだままでいてもらうためだ。
 歩く最中も何度となく光線に当たって倒れる教員達だが、辛抱強く起き上がっては行進を続ける。
 死体とダーレクは見えなくなった。
「やっこさん、ずいぶんと慌ててたな」
 ドクターが口元を押さえ、笑いをこらえている。
 そんなに面白いですかね。
「もちろん。あんなに怖がってるダーレクなんて滅多に見れるもんじゃないし、それに」
 それに?
「エイリアンVSゾンビ! 夢の対決だろ?」
 そう言ってにやけるドクターの横で、俺は腕を組んでうなった。
 もーちょっとふさわしい対戦相手が居るんじゃなかろうか、エイリアン。
 
 
 とにかく、今のうちだ。ダーレクが居なくなった隙に、パソコン室の中に入る。
 デスクトップは未だに、緑色の暗号解読画面をくるくると動かし続けている。
 そのうち一台の画面にはりつき、内容に目をこらすドクター。
 数秒で顔を離し、小さく安堵のため息をつく。
「うん、よし。まだ最後までは行ってない。でもギリギリだな」
「ギリギリってどういうことです?」
 ドクターがちょっと肩をすくめて、答えた。
「いや、別に全然大したことじゃない。もう一分ほど遅かったらあいつは封鎖を破って、人類が全滅してたってだけさ」
 そうかい、確かにそりゃ、緊迫感がいまひとつ足りないってところだな。
「さて、鬼の居ぬ間にパソコンを始末しようか」
 ドクターが胸ポケットからソニックドライバーを取り出し、パソコンに向ける。
 スイッチを入れる……が、光は弱まって、すぐに消えてしまった。
「あれ?」
 ちょっと叩いてみたり、スイッチを何度か入れてみたりするが、ジジジ……と切れかけの蛍光灯のような音を最後に、ついに動かなくなった。
「やれやれ故障か、こんなときに。しかたない、これを使おう」
 ドクターが言いながら、床に落ちていたマシンガンを拾い上げた。長門がダーレクに向けて使ったやつだ。おっと、じゃあ耳栓をしないと。
「はい、じゃあ頑張って」
 突然、俺の両腕にずしりとのっかる金属の重み。
「……いや、あなたがやってくださいよ」
 言われるなり、ドクターがカメムシでも噛み潰したような顔になった。
「僕は武器は使いたくないんだ。しかもそんな野蛮で物騒なのは特にね。倫理に反する」
 死体をリサイクルして使うのは一体どこの道徳規範に従ってるんだよ。
「ていうかこんなもん使い方わかりませんよ」
「大丈夫、狙って撃つだけ」
「わかってるんならあなたが撃てばいいじゃないですか」
「いやいや、いい機会だから経験しといたほうがいい」
「いらないですそんな経験」
「まあまあそんあこと言わずに」
「いやいや要らないですから」
「まあまあ」
「いやいや」
「じゃあわたしが撃つわね」
 突然聞きなれない声がしたと思うと、俺に押し付けられていたマシンガンがひょい、と取り上げられた。
「それにしても、これってずいぶん古いわねえ。骨董品もいいところじゃない」
 覚えの無い声の主は、ずいぶんと見覚えのある格好をしていた。
 今日はやたらと目を疑うことが多いが、またそれに分類される状況だ。
 横でマシンガンを両手に掲げてためつすがめつしているのは、長門だ。
 だが、声が……というより、正確にはしゃべり方があまりに違う。
 ついでに言えば、その表情と仕草もなんとなく、なんというか。
「あら、わたしのセクシーさに見とれちゃった?」
 はい。ああいや、そうじゃなくて。ウインクとかするな。
「そこでなにやってるんだ、長門?」
「そこでなにしてるんだ、有希?」
 俺とドクターが同時に疑問を投げかける。
「なにって、ちょっといい身体が手に入ったから散歩してたのよ。そしたら懐かしい顔が居たもんだから寄ってみたの」
 言いながら、ドクターをじっと見つめる。
 どうでもいいが、腰に片手を置いたレースクイーンみたいなポーズなのはなぜだ?
「まさかきみは、カサンドラ?」
「ハアイ」
 ドクターのか細い声に答えて、長門(?)はひらひらと手を振った。
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Date:2014/05/14
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