明日から書く。

□ 涼宮ハルヒの憂鬱VSドクター・フー □

えすおーえすだん

第2章「長門変身!(Charming Girl Turns Dirty Lady)」




「おお、文芸部か! いい趣味だ」
 部室の表札を見ながら、ドクターは嬉しそうに話を続けた。
「僕もよく本を読むんだ。例えばそう、イギリスの文豪チャールズ・ディケンズ。クリスマス・キャロルは知ってるだろう? 普段は冷静な僕だけど、この前本人に会ったときはさすがに興奮して、自制を失ってしゃべりまくってしまった……」
 どうも長くなりそうだ。仕方なく、悪いと思いつつ口を挟むことにした。
「今はSOS団です」
 俺の発言から一呼吸置いて、ドクターがぐりっとこちらを振り向く。
「はっ?」
「つまり文芸部じゃなくなってるってことです」
「いや、その後だ。その後、エス……何て言った? ごめん、耳の調子が悪いのかな」
 言いながら、耳を人差し指でぐりぐりいじり始める。
 ああ、しまった。やっちまった。
 自分の所属してるクラブとか日常の奇妙奇天烈さ加減をすっかり忘れていた。
「……SOS団、です」
「聞き間違いじゃなかったのか。それはどういう意味なんだ?」
 もうやめてくれ、そんな深海魚の標本を見るような目で俺を見ないでくれ。ネーミングに関しては、俺に責任は無いんだからな。
「もういいじゃないですか」
「いや気になる。教えてくれ」
「確か、『世界を大いに盛り上げるための涼宮ハルヒの団』とか」
「……何をするクラブなんだ?」
 そんなことは俺が一番知りたい。
「あー、主にこの部室で駄弁ったり、あとは休日に市内を散策したり」
「んん? それと世界をどうこうと一体どういう関係があるんだ?」
 ドクターの表情がだんだんと惑乱の様相を呈してきたので、俺はこれ以上無駄な時間を費やすまい、と断固たる態度を取ることにした。
「説明すると長くなりますんで、勘弁してください」
 ドクターは頭をガリガリと掻いてから、目をギョロっと回した。
「まあなんにせよ、クラブ活動をするのはいいことだ。頑張ってくれ」
 諦められたな、と思いながら、俺たちは部室に入った。
 
 
「よし、まずはパソコンを貸してくれ」
 団長席に案内すると、「団長」と書かれた三角錐を不思議そうに眺めながら、ドクターは席に着き、電源を入れた。
 起動したのを確認すると、ソニックドライバーを画面に向け、スイッチを入れる。
 青い光が放たれると同時に、画面にいくつものDOSウインドウが開き、目まぐるしくスクロールし始めた。
 ドクターの持ってるのは本物らしい。さすがドラマ世界から来てるだけある。
「たぶんここからでも、例の暗号解読プログラムは動かせるはずだ。……よし」
 ウインドウの流れが止まったと思うと、画面一杯に、パソコン室で見たのと同じ緑色のデザインが動き始めた。ソニックドライバーをしまって、長門を手招きする。
 長門がドクターと交代してパソコン前に座り、キーボードに手を添えた。
「それでは、お手並み拝見といこう」
「わかった」
 キーが凄まじい速さで押し込まれていくのを二人で覗き込みながら、喋り続ける。
「見たまえキョン君、まさに芸術的なキータッチだ。ブリリアント!」
「正直に言うと速すぎて見えません。で、何をしてるんですか」
「このプログラムは、ダーレクを召還した際に使われた。僕も利用させてもらう」
「あいつを送り返すってことですか?」
「いいや、そうじゃない。ダーレクはすでに、自分が送り返されるような操作を受け付けないよう、システムを書き換えてる。だから」
 長門が打鍵を止めた。
 エンターキーの上に、ゆっくりと人差し指を置く。
「逆の操作をする」
 指を押し込んだ。
 ドンッ!!
 その瞬間、部室がマグニチュード7クラスの大地震に見舞われたかのごとく、大きく縦に揺れた。床下でガス爆発が起きたのかと一瞬思ったが、そんなわけないな。
「いだだだっ!?」
 なんだなんだ、急に鼓膜が破れそうに痛いぞ!
 長門が席から素早く動き、団長席後ろの窓を開ける。
 空気が部室内に殺到し、痛みはすぐに引いた。
「よーし、うまくいったようだ」
「一体、なにをしたんですか」
「見ればわかる」
 視線に抗議の意味を含ませたのも空しく、ドクターはポケットに手を突っ込んで天井を仰いでいる。
 なんの変哲もない、見慣れた天井だ。老朽化を思わせるひびが数本、ほこりの積もった蛍光灯が灯っている。
 そしてそれらをバックに、燃えるガスの塊のような青い亡霊が大挙して群れ飛んでいた。
 正直、自分の目の調子とか脳の調子とか、いろいろと心配せざるを得ない。
「やあみんな! 会えてうれしいよ!」
 ドクターが天井に向かって叫びながら、嬉しそうに手を振る。なんてこった、亡霊が本当に居るってのかよ。俺の世界観を根本から覆しかねない光景だ。
 呼びかけに気づいたのか、ドクターの居る団長席周辺に亡霊が輪になって集まってきた。
 俺は自分でも驚くほどの瞬発力を発揮し、本棚に背中を強打しつつ長机脇に退避する。触っても大丈夫だよな? 触ってないよな?
「ひい、ふう、みい……うん、ちょうどいい数居るな」
 青い霧の向こうで、ドクターが亡霊の数を数え、うなづく。よく見ると、亡霊って上半身はおおまかに人みたいな形してるんだな。
「なぜ私たちはここに居るのです、ドクター」
 驚くことに、亡霊の代表者が進み出て、ドクターに話しかけた。ドクターの交友関係は霊界にまで及んでいるらしい。死んじまった後は医者の領分じゃないと思ってたが。
 あれ、待てよ? この光景、どこかで見たことある気がする。デジャヴュか?
「デジャヴュではない。あれは宇宙人。ドラマのあなたが見た部分に登場している」
 そうだったっけ? てことは、あれもダーレクと同じ世界から来たんだな。
 言われてみれば、見たことあるような、そんな気がしないでもないでもない。
 遠くで俺たちが見守る中、ドクターが亡霊達に交渉を始めた。
「よし、きみ達に提案がある。うまくいけばきみ達も大助かり、僕も大助かり、おまけに地球は守れてきみ達も僕もみんなから感謝されて言うことなし、っていうすごいプランだ」
 ローストしたように香ばしいインチキ臭が漂う言葉だが、得意満面のドクターが言うと妙な説得力があるから困る。
「きみ達に身体を提供しよう。さらにうまくいった場合は成功報酬として、生存可能な惑星まで連れて行ってあげるつもりだ」
 ドクターの言葉に、亡霊たちがざわめき始めた。
 プランの説明が一通り終わり、亡霊(「ゲルス」という種族らしい)たちからの質問に答えたあと、彼らは合意に達し、ただちに行動開始となった。
「よし、じゃあ出発進行! じゃあ有希、後は頼んだ」
「わかった」
 長門を残し、青いガスのカーテンを引き連れて部室を後にするドクター、それを追って部室を出る俺。
 気を引き締めないとな。なんせ地球の危機なのだ。
 退室の間際にちらっと団長席に目を向けると、パソコン画面に向かい無表情のまま猛烈な速度でタイピングを続けている長門が見えた。
 それと、群れからはぐれたのか、ピンク色をした人魂のようなものがふわふわと長門の頭に乗ったり、じゃれついたりしている。
 頑張っている本人には悪いが、どことなく牧歌的な光景に見えてしまう。
 これで「地球の危機だ」なんて言われても、なんだか実感わかねえなあ。
 
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Date:2014/05/14
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