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□ 涼宮ハルヒの憂鬱VSドクター・フー □

ハンサムヒーロー

 月並みだが、いよいよ俺も年貢の納め時、ってわけだ。
 心の底から諦めて両手を挙げながら、俺は思ったね。
 二度と、絶対に、金輪際、ハルヒの奴にはDVDなんて貸さねえぞ。
 そのときだった。
 グオーン! グオーン!
 みょうちきりんな、あえて例えるならバカでかい歯車が風を切って回っている、とでも言えそうな音が廊下にこだました。
 その音に、目の前のダーレクがびくりと反応する。
 頭を回し、見えない危険を見つけようとカメラをさかんに振る。
 怯えている?
 まさか。
 しかし、仮説を裏付けるように。
「きみたち大丈夫か!」
 なんと知らない欧米人がパソコン室に怒鳴り込んできた。
 

 上下茶色の縦じまスーツを着てなぜかコンバースのスニーカーを履いている欧米人は、その人種特有の背の高さで入り口の天井に頭をぶつけそうになりながら、息を切らせて走ってきて俺たちの横に並ぶ。
 うわ、鼻高いな。ハリウッドスター?
「は、ハロー?」
 とりあえず、あいさつは必要だよな。
「ハロー。怪我は無いか?」
「い、イエスイエス」
「ならよかった。そちらのお嬢さんは?」
「大丈夫」
「うわっ!」
 いま驚いたのは俺だ。長門が何事も無かったように俺の横で立ち上がったからだ。
「死んだんじゃなかったのか!?」
「処理能力を全て、別のことに使っていた」
「おいそこのブリキ人形!」
 欧米人は俺たちに怪我が無いことを確認するやいなや、すごい剣幕でダーレクに指を突きつけた。
「今すぐこの二人を解放しろ!」
「ホ、本物ノ、どくたーカ」
「ああもちろんだ」
「ソンナ、ハズハ、ナイ。二度ハ、騙サレ、ナイ」
「そうか。信じてもらえなくて残念だ。きみたちと僕の仲なのにな」
 欧米人は心底心外だという素振りで首を振るなり、素早い手つきで胸ポケットから銀色のペンライトみたいなものを取り出すと、天井に向けてスイッチを入れた。
 あれ、なんで俺と同じおもちゃを持ってるんだ。海外じゃ流行ってるのか?
 ビビーッ!
 ペンライトが光ったとたん、パソコン室の蛍光灯が全て破裂する。
 一気に室内が暗闇に包まれた。
「いまだ! こっちに!」
 部屋から駆け出る欧米人と長門。長門に首根っこつかまれてそれに従う俺。
「本物ノ、どくたーダ! 抹殺セヨ! 抹殺セヨ!」
 例の殺人光線が、部屋の壁に当たって火花を散らした。
 

 とりあえず、俺たち三人はパソコン室から遠く離れた廊下で休憩していた。
 走りなれているのか、欧米人は軽く息が切れている程度。長門に至っては普段と全く変わらない。言うまでもなく、一番休憩が必要だったのは俺である。
 なにせ校舎を横断する間中、ずーっと首がしまってる状態だったんだからな。
「えっと、ですね。まず、助けてもらってありがとうございます」
「いえいえ、どういたしまして」
 こちらがぺこりと頭を下げると、向こうは神妙な顔で合掌しながら頭を下げてきた。
 それは日本の標準的な挨拶ではないですよ。
 まあいい。とにかく、この欧米人には聞かなくちゃならんことが山ほどある。
「それで、あなたはどなた?」
「僕はドクター。よろしく」
 握手する俺たち。いや、職業は聞いてないんだが。
「ドクター……なんです?」
「ただのドクターだよ。ドクターって呼んで」
「はあ、そうですか」
 欧米の医者って結構フランクなんだな。まあ医者じゃなくても、博士号さえ持ってればドクターなんだが。
「で、きみの格好なんだが……」
 ドクターが俺の白衣をちょっとつまむ。
「お医者さんか何か?」
「いえ、ただの学生です」
「じゃあなんで白衣なんか」
「彼はあなたのマネをしていた」
 二つの顔が同時に長門の方を向く。突然しゃべるとびっくりするだろ?
「僕のマネ? なんだってそんなことを。ああいやまてまてまて? 考えるから」
 答えようとする俺を手のひらで制止して、反対の手を頭にやって考え始めるドクター。どうでもいいが、いちいち動作がオーバーだな。
 数秒後、ぱっと明るい顔を俺に向け、俺の肩を両手でがっしりとつかむ。
「わかったぞ! 僕のファンか! まさか遠く中国にまで評判が及んでるとは……」
「いや日本です。というか悪いですけどファンでもないし」
 俺が即座に否定すると、さきほどとは一転してドクターの顔が暗く沈む。
 ついでに、つかんだとき出来た白衣の肩のしわを軽くはたいて直す。
 どうも欧米では著名人らしい。きっとテレビのコメンテーターでもしてるんだろう。
 欧米では有名でも日本での知名度がいまひとつなんて、よくある話だしな。
「そうか、それは失礼。でもファンじゃないとすると……」
「ダーレクに対抗するため、わたしが指示した」
 長門の言葉に反応して、ドクターがぐりんとそちらに頭を回す。
 まるで珍しい昆虫か何か見つけたような好奇心丸出しの顔で、長門を注視する。
「もしかして、ターディスに救難信号を送ったのはきみか?」
「そう」
「きみは……ああ、失礼だが、お歳はいくつ?」
 おいおい、レディに出会って五分で聞くことかそれは。
「三歳」
 即答かよ! てか教えちゃ駄目だろ。
「なるほど」
 ドクターはさほど驚くこともなく、拳をあごにやって考え込む。
 さきほどとは打って変わって、真剣そのものの顔だ。
 考えがまとまると、ゆっくりと口を開いた。
「きみは……この星の人間ではないな」
 長門がうなずく。どういう洞察力だよ。少年探偵も真っ青だぜこりゃ。
「人間そっくりにデザインされてはいるが……」
 長門の周りを歩きながら、じっくりと全体を眺める。ついでに、例のペンライトで長門のあちこちを照らし始めた。
「機能が異なる。人間には決して持ち得ない運動能力、そして宇宙の深遠を見通すまなこ、脳には莫大な英知を蓄えてる。そう、人類がいまだ、いや、この先決してたどり着けないような知識が」
 喋りながら長門の顔の前まで来ると、しゃがみこんで、そのほほに両手を添えた。
 ロマンチックに見詰め合う二人。
「素晴らしい。素晴らしい構造だ。とても……」
 ドクターが長門の目を覗き込む。
「美しい」
「んん!」
 俺の咳払いで我に帰ったドクターは、短く非礼を侘びつつペンライトをしまった。
 しかし、驚いた。というか、これはさすがに変だ。
 人間じゃないところまでは、もしかしたらわかるかもしれない。
 だが、何もかも正確に知りすぎだ。それもたった一目見ただけだってのに。
 俺の疑問に気づいたのか、ドクターがこちらを向いて手短に説明した。
「いや、気に病むことはない。人間のきみと僕では脳の出来が違う」
 やれやれ、ここまで自信満々だと腹も立たないな。
 ん? なんて言ったいま。
 おいおいまさか、まさかとは思うが。
「タイムロードのあなたにお願いがある」
 長門が静かに切り出すと、ドクターは声の主を凝視した。
「なんでそれを知ってる」
「私はこの銀河を統括する情報統合思念体によって造られた対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース。名前は長門有希。よろしく」
「あ、ああ、よろしく」
 突然吹き出るように述べられた長口上に驚いたか、それとも妙なタイミングの自己紹介に面食らったか、ドクターはやっとのことでそれだけ言うと、また長考モードに入った。
「情報統合思念体……やはり聞いたことが無いな」
「物理的ハードを持たない情報生命体、あなたの宇宙には存在していない。あなたは涼宮ハルヒという人物が無意識に行った情報操作により、この宇宙に呼び寄せられた」
「なんだって、じゃあ、ここは別の宇宙なのか?」
 床の辺りを指差して、怪訝な顔をする。
「そう。虚空(ヴォイド)の向こう、本来なら決して交わらない世界」
「やれやれ、また虚空越えか。参ったな」
 ドクターはがりがりと頭を掻いた。
「ここでは僕はゲストというわけだ。自慢の知識も役に立たないのか」
「そうとも言えない。ダーレクは、あなたと同じ世界から来ている」
 長門の言葉に、見る見る顔に生気が戻るドクター。
「ふむ、そうか。なるほど。つまり、あのダーレクに対してなら、僕の知識は通用するわけだ。あいつを倒して、僕もこの世界からサヨナラって寸法か」
「そう。協力してほしい」
 その言葉をきっかけに、二人は込み入った打ち合わせを始めた。聞いてても知らない単語ばかりで、なんのこっちゃさっぱりわからない。
 それにしても、驚きだ。
 目の前で討論しているこの欧米人こそ、件のドラマの主人公じゃないか。
 高校生のピンチを救うため、ドラマのヒーローが颯爽と助けにきたってわけだ。
 複雑なSF用語が渦巻く異空間と化した廊下で、俺は居心地悪く座っていることしか出来なかった。いきなり知らない親戚の家に預けられた五歳児の気分だ。
 疲れと退屈からうとうとし始めたころ、二人の異星人は最終的合意に至ったようだった。
「よし、この作戦なら、あのラバーカップ付きブリキ兵士に一泡吹かせられるはずだ」
 あ、やばい聞いてなかった。
 長門がこちらを向き、早口で作戦の概要を説明し始めた。
「これからパソコン室のパソコンを全て破壊し、これ以上空間封鎖を破れないようにする。更に同時進行で校庭上空に時空間の裂け目を開き、ダーレクを元の時空間に追放する」
 おいおい、急に言われても覚えられないぞ。
「大丈夫、あなたには逐一指示する」
 そうか、なら安心だな。
 ドクターが突然、笑顔でこっちに手を差し出した。
「よろしく、キョン」
「……よろしく」
 またもや、固い握手を交わす俺とドクター。でもなんであだ名なんだ?
「彼女に聞いた」
 長門がうなづく。そうですか。
 続いて、長門に手を差し出す。
「よろしく、ええと……」
「有希でいい」
 え、俺も苗字で呼んでるのに?
「よろしく有希」
「よろしく」
 固い握手を交わす二人。まあ欧米のスタイルに合わせたんだろうな。
「さてと行くか……ああ、待った」
 歩き出し始めたとたん、急に欧米人がこちらを向いて立ち止まった。
 こいつはゆっくり動くということが出来ないのか?
「ひとつ教えてほしいんだけど」
「何でしょう、俺に答えられればいいけど」
「簡単なことなんだ。その……」
 しばらく逡巡するドクター。
「僕が主人公のドラマがあるそうなんだけど……主演はどんな男がやってるんだ? その、ハンサムかな?」
 いや、俺もそこは観てないんだけどな。
「たぶん、あなたそっくりなんじゃないですか」
 ドクターは考えこんだ。髪などをちょっとなで付けてみる。
「そうか、うん。なら申し分ない。行こう」
 ドクターに率いられ、俺たちはSOS団の部室に向かった。
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Date:2014/05/14
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