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□ 涼宮ハルヒの憂鬱VSドクター・フー □

白衣でスキップ

 俺は再び、ひとりでパソコン室の前の廊下に戻ってきた。
 今度は忍び足じゃなく、わざと足音を立てて歩く。それも出来るだけ楽しげに朗らかに、スキップするように。少なくとも、ダーレクにそう思わせる程度には。
 ちなみに(知りたくないかもしれないが)俺の格好はというと、ここまで着てきた若干トロピカルな模様のシャツの上に、保健室から拝借した白衣を着ている。下はそのまま青のジーパン。限られた時間の中で精一杯の変装をした結果だ。
 まあセンスを疑うのは自由だが、本気で考えた部分は評価してもらいたい。
 さっきから白衣がひざに当たってバサバサ言う音と感触が気になって仕方ないし、胃がどんどん痛くなってきやがる。やれやれ、仕方ない。
 なんつってもこれから、重ーいひと仕事が待ってるんだからな。
 憂鬱な景色だ。薄暗く前衛的で気の滅入る緑色の光が壁中に反射している。ああくそ、もうパソコン室の前まで来ちまった。
 距離とか時間が人の主観で変わるってのは本当なんだな。
 入り口の前で足を止め、戸のガラス越しに中を覗く。
 パソコン室に並べられたデスクトップは、全て同じ緑色の画面を表示していた。
 見たことも無い文字で書かれたプログラムかデータが高速でスクロールし、その横にはこれまた意味不明のサイコロぽいオブジェがくるくると踊っている。
 これがスケイサス・パラダイムを解いている現場なのだ。たぶん。
 そして、その真ん中に……やっぱり居たか。
 ダーレクだ。
 金属製コショウ瓶型ロボットとでもいうべき姿の奇妙なエイリアン。
 デスクトップの一台の前に陣取り、腕代わりのラバーカップを画面に接触させている。
 これは単なる推測だが、十中八九、あれで全てのパソコンを操っているに違いない。
 トイレ掃除の道具を画面にくっつけただけでどうやって操作するんだ、なんてツッコミは野暮ってもんだ。
 たぶん宇宙的なシステムでどーにかなってるんだろう。大体俺はパソコンの動く仕組みだって未だにこれっぽっちも理解できてないしな。CPUがなんの略かも知らん。
 それでもとにかく、ヤツがパラダイムを解こうとしていることは確実だ。
 おっと、ダーレクがラバーカップを引っ込めた。
「オマエハ、誰ダ」
 金属的に歪んだ声が聞こえる。俺のこと、だよな。
 小さく息を吐き、覚悟を決める。
 しゃあねえ、始めるか。
 間に合ってくれよ、長門!
 
 
 勢いよく入り口のドアを開け、ずかずかと中に押し入る。
 顔は笑顔。なんだお前卒業式以来じゃないか、今どこで働いてんの? って表情だ。
 ダーレクが身体を回転させ、完全にこちらを向いた。
「誰ダト、聞イテイル!」
「まあまあそういきり立つなって。クイズと行こう、僕は誰だと思う?」
 驚くなかれ、今この大量殺人犯に笑顔でクイズを出したのは俺だ。
 案の定、相手は食いついてきた。
「オマエニ、質問スル権利ハ、ナイ!」
 ラバーカップの反対側についている金属管が勢いよくこちらを向いた。
 うおっと、たぶん武器だな。じゃなけりゃ汚れを洗い流すためのホースだろう。
「おっとっと、じゃあヒントを出すよ」
 あくまでも落ち着いて笑顔のまま片手を上げ、相手を制する。
 白衣の胸ポケットに刺さっていた物体をつまんで、ゆっくりゆっくり引き上げる。
「それ」を視認した瞬間、ヤツが凍りついた。
 とりあえず生きのびた事を心の中で神様仏様と八百万の神様全員に感謝しつつ、「それ」をしっかりとダーレクに見せつけ、軽く振ってみせる。
 ダーレクの頭部から飛び出たカメラが、不安げに揺れる。
「オ……オマエハ、誰ダ」
 金属的に歪んでいてもわかるくらい、声が不安に満ち満ちたものになる。
 やった、効果てきめんだぜ。
「わかってるくせに。僕の口から言わなくとも、きみが答えればいいんじゃないか?」
 相手の動揺を楽しむように、にやりと唇の端を上げる。あくまでも演技だ。実際、長門の許可が降りしだい、俺はここから脱兎のごとく逃げ出す気まんまんなのだ。
「答エヨ! 答エヨ!」
 おびえた子供のように、叫びながら金属管を振り回す。
 俺はそれを見て取り、両手を肩のところまで上げてやれやれとため息をつく。
「わーかった。わかったよ。言うから落ち着いたらどうだ」
 息を吸い込み、続ける。
「お察しのとおり、『ドクター』だ」
 わざとらしく笑ってみせる。
 あいつの驚いた顔をぜひ写真に撮っておけばよかった。といっても、顔なんざどこにもないんだけどな。
 殺人鬼らしからぬ臆病さで後退すると、パソコンデスクに身体をぶつけやがった。デスクは倒れそうになったが、なんとか持ちこたえた。
 ラバーカップと金属管とカメラを同時にぶんぶん動かしながら、叫び始める。
「どくたーダ! 警戒セヨ! 警戒セヨ!」
「そんなに叫んで誰に知らせるつもりだ。ここには僕ときみしかいないぜ?」
 ずいっと前にでて、カメラに顔を近づけてみせる。
「シカシ、オマエハどくたーノ姿ヲ、シテイナイ!」
「ああ。前会ったときはどんな姿だったかな。白髪かもじゃもじゃ頭か、老人か青年か。そうそう、服にセロリを貼り付けてたこともあったし、赤くてクエスチョンマーク付きのオシャレな傘を持ち歩いてたこともあった」
「マタ再生ヲ、オコナッタノカ」
「そうその通り。ちょっとした事故でね。残念だよ、あの姿は結構気に入ってたのに。髪は赤毛じゃなかったけどね」
 頭をかきながらまくしたてる。我ながらよくここまで覚えこんだもんだ。知能の向上とやらに感謝しないとな。
「そうだ、世間話はまたの機会にしなきゃ。きみに提案があってここまで来たんだ」
 いたずらを思いついた小悪魔の笑みで、ダーレクはまたも動かなくなった。
 よし、ここまでは長門の台本通りだな。
 こっからが本番だぜ。
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Date:2014/05/14
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