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□ 涼宮ハルヒの憂鬱VSドクター・フー □

情報演習室にて

 俺と長門は暗い廊下を抜け、階段を上った。パソコン室、教員含め誰も使わない正式名称で言えば「情報演習室」のある階だ。
 階段を上りきる手前で、長門がぴたっと止まった。俺も驚いて止まる。
 なんだなんだ、誰か居たのか?
「ここからはゆっくり歩く。すでにあれがパソコン室に到達した可能性もある」
 わかった。よし。オーケー。ゆっくりだな。ゆっくり歩くのは自信があるんだ。
 よし行くぞ、ゆっくり、ゆっくり……。
「あと、静かに歩く」
 すまん。
 
 
 パソコン室には明かりが灯っていた。
 だが変だ。薄暗い緑色の光だ。しかも少しちらついている。
 なにか前衛芸術的な映画でも上映してるのか?
 そろそろとドロボウのような足つきで、パソコン室を目指して歩く。
 もちろん、横目で教室の窓の向こうを確認することも怠らない。
 一歩、また一歩と、さながら亀というより年老いたカタツムリくらいのスピードで、距離を縮めていく。
 にしても、パソコン室の中に怪物が本当に居た場合、俺はどうすりゃいいんだろう。
 武器になりそうなものの心当たりもないし、格闘技を習ったことも、ましてや宇宙生物と闘った経験なんてあるはずがない。朝倉? あれは一方的だったから除外だ。
 せめて通信教育の空手くらいは習っておくべきだったか。いやまてよ? それなら道場に通ったほうがいいよな、友達も出来そうだしな。にしても、空手やってる俺ってどんな放課後の過ごし方をするのか想像できんな。押忍! とか言うのかやっぱり。俺が?
 そんな感じでほどよく現実逃避をしながら歩いていると。
 俺は突然、教室に引っ張り込まれた。
 
 
 しまった! パソコン室はおとりか!
 なんてこった、後悔しても遅すぎるというものだ。
 俺の口はしっかりふさがれ、おまけに身体は腕でロックされて動かしようがない。
 勘弁してくれ、俺は食べても絶対おいしくないからな。こんなこともあろうかと、日々合成着色料や保存料のたんまり入った菓子やジュースは欠かさなかったのさ、ざまあみろ!
「きみ! 静かにしなさい!」
 耳元でおっさんの声がした。
 言われた通り黙ると、身体が開放される。
 薄暗い中でよく見ると、俺を押さえつけていたのは隣のクラスの担任だった。
「なにをしてるんだ? こんなところで」
 ちっちゃい声で叱りつけてくる先生。すっかり怯えきった様子で、これじゃ威厳も何もないな。
「彼はわたしが連れてきた」
 わっ! 気がつくと、隣に長門が居た。お前には気配ってもんが無いのか?
「なんだなんだきみたちは。こんな夜の校舎で逢引とは呆れたもんだ」
 いや違います。そりゃしてみたいのは否定しないが。
「あなたは逃げて。わたしたちがダーレクを止める」
 目をコンパスで引いたようなマルに開いて長門を見つめるおっさん、いや先生。
 まさか自分たち以外にも宇宙人が混じってるなんて知らなかったんだろうな。
 だがすぐに、教師の顔に戻った。
「いや、危険すぎる。きみたちは帰りなさい。あれは私たちが呼んでしまったんだ、責任がある」
 言いながら、床に置いてあったマシンガンを手に取る。
 おいおい、銃刀法はどうなってんだ? あんた公民の教師じゃなかったか。
「時と場合によって、市民が銃を取らねばならんこともあるさ」
 いやいや、どうやって輸入したんだよ。
 そんなどうでもいい俺の疑問はさえぎって、長門が先生の銃に手を置く。
「銃器は効かない。先の実戦でも証明済み」
 先生は虚ろな笑いを浮かべながら、かぶりを振る。
「知ってるさ。仲間は全員殺された。相棒はひどい死に様だったよ」
 教室の奧を指し示す。
 教員が一人、横たわっていた。顔を向こうに向けている。
 いや、ちょっと待て。
 髪にしては、頭が塗りつぶしたみたいに黒いな。それにごつごつしてるし。
 それにさらに良く見ると、なんか二つの穴が並んで……。
 うわっ!
 思わず声を出しかけ、俺は踏まれそうになったバッタみたいに飛びのいてしまった。
「おい、顔が焼かれてる! 黒焦げだぞ!」
 小声で長門に伝える。
 だが長門は、俺をまるで雷におびえる子犬でも見るような目つきで見て、
「ダーレクに脳をスキャンされた。戦術的情報も向こうに渡ってしまっている」
 と言っただけだった。
「ひどいと言っただろう。だが、何もせんというわけにも」
 先生がそこまで言ったところで、俺たちは凍りついた。
 パソコン室から、声が聞こえる。
 まるで壊れかけのスピーカーから流れているような、ひび割れた声だ。
 なんて言ってる?
「ソ、」
 そ?
「コ、デ」
 こ、で……そこで。
「ミ、テ、イ、」
 そこでみてい。
「ル、ノハ誰ダ」
 その瞬間、俺は後ろ向きにぶっとんでいた。首がしまって、息ができない。
 俺のえり首をつかんで長門が走っていたとわかったのは、少し後になってからだ。
 教室を出て、階段に戻る。
 俺には一瞬、遠ざかるパソコン室が見えていた。
 そしてそこから出てくる、馬鹿でかい……コショウ瓶のようなものが。
 
 
 階段を降りている……というか落ちている間中、鼓膜が痛くなるマシンガンの発砲音、そしてかすかに先生の雄たけびが聞こえていた。
 だが、階段を降りて下の階に着いたころには、何も聞こえなくなっていた。
 廊下には静寂が戻った。
 俺は階段から一番近い教室にぶん投げられ、長門も中に入って隠れた。
 廊下側の壁際に背中をつける格好で並んで座る。無駄かもしれんが、こうしないと落ち着かない。動物の本能なんだろうな。
 普段慣れてないと、息を殺すってのはなかなかうまくいかないものだと分かる。
 しばらくゆっくりと呼吸することに努めると、だいぶ落ち着いてきた。
 それにしても、自分の肺に空気が出入りする音以外、本当に何も聞こえない。
 前を向いたまま、わかりきったことを念のため聞いてみることにする。
「なあ、先生はどうなったんだ」
「死んだ」
 そうか、そうだろうな。
 予想は出来たが、あらためて確認するとなんというか、ショックだな。
「いったいあのコショウ瓶はなんだったんだ? ダーレクとやらのボディーガードか」
「あれが、ダーレク」
 なんだって? 俺は多少ならず拍子抜けしていた。
「もちっと凶悪な見た目を想像してたんだけどな」
 あれじゃオーディションを受けても、帝国製巨大宇宙ステーションのトイレ清掃用ドロイド役くらいしか出来ないだろう。
「姿は問題ではない。あれは間違いなくとても危険な存在」
 と言われても、どうもピンとこないな。
 大体なんでそんな危険なやつ相手に、こっちは二人だけなんだ。理不尽極まりない。
 そこでふと俺の頭に疑問がかすめた。
「なんであのとき、他のやつらも呼ばなかったんだ? まあ朝比奈さんはしょうがないにしても、古泉ならなんかの役にたつだろ」
「通信回線がふさがっていた」
「でも俺には電話できたじゃないか」
「あれが限界。ダーレクに気づかれることなく回線を使用することは著しく困難」
 長門からの電話の状態が、ひどく悪かったことを思い出した。
 おいおい、お前が言うところの「著しく困難」は、常識的観点からは「絶対ムリ」ってことなんだぞ。わかって言ってるのか?
「あいつが電話回線を見張ってるのか?」
「そう。電話回線だけではなく、あらゆる通信チャンネルを見張っている」
「まさか町中の?」
「違う」
 そりゃそうだよな。そんなことが出来るわきゃない。念のため聞いてみただけさ。
「学校周辺のか」
「地球全土」
 はっ?
 長門の顔は、当たり前だが笑ってなどいなかった。どっちなんだ? ジョークかどうかで俺も対応が変わるぞ。
「現在、地球全土の通信ライン、インターネット等は全てダーレクの手に落ちている」
「待て待て、そんなこと出来るわけないだろ」
「あれには可能。先ほどのパソコン室において、十五秒間でネットワーク上の全ファイルをスキャンしている」
「不可能だ」
「可能。あれは天才。どんな暗号もセキュリティも最初から無いものと同じ」
 おれは観念して脱力し、壁に背中を預けた。
 マジでとんでもないバケモノなんだな、あのコショウ瓶ロボは。
「危険なのはそれだけではない。すでに空間封鎖を破りつつある。早急に対策が必要」
 と言ってもだな、やっぱり外に出しちまいたい気持ちが強いんだが。
「この市の人口は」
 ナイフの鋭さで放たれた言葉、それが質問だとわかるまでに若干の時間を要した。
「確か、五十万人いかないくらいだったと思うが」
 長門が素早く、身体ごとこちらを向いた。
「全員死ぬ。あれを外に出してしまった場合。一晩もかからない。この市だけではなく、地球全体で殺戮を続ける。防衛手段は存在しない」
 一息で言い終えると、俺の目をしっかりと見据えて付け足す。
「人類は全滅する」
 笑おうと思っても口の端がぴくりとも動きゃしない。
 もともとこいつから冗談や軽口の類なんざ聞いたことが無いが、いつもよりさらに真剣みを帯びた言葉と、そしてその瞳。
「なんなんだあいつの行動原理は? 地球を征服したいんなら、とりあえず国連事務総長か誰かに脅迫の電話でもしてみればいいだろうに」
「征服が目的ではない。ダーレクは他のあらゆる生命を全滅させるために行動する」
「なんでだよ」
 他のやつらは身体にラバーカップが刺さってないから劣っている、とでも言うのか?
「なぜなら」
 長門は俺から目を逸らして身体の向きを戻すと、ささやくように答えた。
「それらは、ダーレクではないから」
 俺は言葉を返せなかった。教室がまた静かになった。
 そうか、よくわかった。決してわかりゃしないってことがな。
 もしそれが理解できた時には、俺を社会から隔離しといてくれ。
 あいつは正真正銘、生まれついての殺人狂だってことか。
「わかったよ。あいつはここで仕留めないとな。しかし勝算はあるのか? そんなとんでもないバケモノ相手に」
「ある。まず、わたしの処理能力を全て空間封鎖の修復維持に回す」
「おいおい、宇宙的パワー無しにどう闘えっていうんだ」
「次に、物理的攻撃によるダーレク無効化を試みる。ただ武器の組み立てに時間が必要」
「時間稼ぎだな。どうするんだ」
「あなたの出番」
 そうか。そういえば最後の手段がどうとかって言ってたな。
 ああ長門よ。それ聞かなかったことにしていいか。あとこっちを見ないでくれ。
 いつかのん気にも「仕事があって嬉しい」とかほざいてたヤツが居たような気がするが、その時のそいつを思い切りぶん殴れるならそうしたい。
 ああ、帰りてえ。
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Date:2014/05/14
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